見出し画像

アメリカ先住民のすまい


アメリカ先住民のすまい

 アメリカ先住民(アメリカ・インディアン)の解説書としては、古典中の古典です。
 原版は、なんと、十九世紀に出た本です。日本語版は、一九九〇年に出ています。

 これは、優れた解説書です。
 にもかかわらず、無条件にお勧めはできません。以下の二つの理由によります。

 一つは、原版が古いため、時代遅れの学説に基づいていることです。
 もう一つは、淡々と記述されているために、退屈なことです。

 「アメリカ先住民について知りたい」という、強い動機を持たなければ、この本を読み通すのは、難しいでしょう。
 波乱万丈のストーリーがあるわけでもなく、個性的なキャラクターが出てくるわけでもないからです。あくまで、観察記録を羅列した、学術的な解説書です。

 アメリカ先住民について知りたい方でも、まったくの初学者には、この本は、お勧めしかねます。
 この本の、時代遅れの学説を、鵜呑みにされては困るからです。

 「アメリカ先住民について、ほとんど何も知らない」方は、この本を読む前に、他の入門書をお読み下さい。

 できれば、この本を読む前には、文化人類学の入門書も、読んでおくことをお勧めします。

 この本が基づくのは、十九世紀当時の文化人類学の学説です。
 現在から見ると、当時の文化人類学は、偏見に満ちています。野蛮だの、未開だのという言葉が、無神経に使われています。
 現在の文化人類学も、こんな学説を採用していると、思わないで下さい。

 前記のとおり、この本を読むのは、いろいろと敷居が高いです。
 けれども、「かつてのアメリカ先住民の生活について、これほど詳しく書かれた本は、いまだに、そうはない」ことは、確かです。

 題名は、『アメリカ先住民のすまい』ですが、書かれているのは、住まいのことに限りません。さまざまな生活習慣についても、書かれています。

 中でも、「歓待のしきたり」について、強く印象づけられました。
 「歓待のしきたり」は、アメリカ先住民のあいだに、広く見られた慣習です。具体的に、それがどのようなものだったのかは、ぜひ、本書でお読み下さい。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

序文

第一章 アメリカ・インディアンの社会と政治
 氏族
 胞族
 部族
 部族の連合体

第二章 歓待のしきたりとその実践
 歓待のしきたり

第三章 生活共同体
 アメリカ・インディアンの生活共同体

第四章 土地と食物の慣行
 土地の共同体所有
 調理された食事つまり正餐【せいさん】を一日一回、男性が先に、女性と子供たちが後にというように食事時間を別にしてとる習慣

第五章 ニューメキシコ以北のインディアンの住居
 野蛮時代の諸部族の共同体住居
 未開時代前期の諸部族の共同体住居

第六章 ニューメキシコの定住インディアンの住居
 ニューメキシコの村落インディアンの共同体住居

第七章 サン・フアン水系の定住インディアンの住居遺跡

第八章 サン・フアン水系の定住インディアンの住居遺跡(続)

第九章 ユカタン半島と中央アメリカの定住インディアンの住居遺跡

訳注
解説
地図
出典一覧
インディアンの部族などの名称一覧



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集