親指と霊柩車―まじないの民俗 (歴博ブックレット (14))
親指と霊柩車―まじないの民俗 (歴博ブックレット (14))
『親指と霊柩車【れいきゅうしゃ】』とは、不思議な題名ですね。
でも、この題名で、ぴんと来る方もいるでしょう。
子どもの頃、「霊柩車を見かけたら、手を握って親指を隠さなければいけない」と、言われた方はいませんか? あるいは、実際にそうしていた方は?
そういう方は、ぜひ、本書を読んでみて下さい。
「たわいのない子どものおまじない」と思っていたものが、日本文化に根づいたものだったことを、知るでしょう。
「そんなの、聞いたことがない」方も、いるでしょうね。
そういう方でも、子どもの頃、手の指を組み合わせて、「エンガチョ」とか、「かぎ、閉めた」とか、言ったことはありませんか?
これも、日本に古くからある風習です。
少なくとも、平安時代末期の絵巻物に、これに類するしぐさが描かれています。
本書には、それが載っています。
「どちらも知らない」方でも、本書を読む価値はあります。
「二度あることは三度ある」という言葉は、おそらく、日本人なら、誰でも聞いたことがあるでしょう。
また、食卓のマナーとして、「箸から箸へ、食べ物を渡してはいけない」ということも、広く言われますね。
この二つの事柄は、まったく関係ないように見えます。
ところが、関係があるのです。本書を読めば、それがわかります。
日常の何気ないしぐさや、言い伝えも、文化の一種なのですね(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
一、「同時に同じ」は危険な関係
――ハッピーアイスクリームと相孕【あいばら】みの習俗――
同時に同じことを言ったとき
箸わたしの禁忌
相孕みと勝ち負け
双子の命名
同齢者の死と耳ふさぎ
二度ある事は三度ある
二、斜十字と魔よけ
生首を見る人びと
エンガチョと×印
生と死をめぐる斜十字
一つ目小僧と目籠【めかご】の呪力
コレラよけと疱瘡【ほうそう】よけ
三、親指と霊柩車
霊柩車を見たら親指を隠す
霊柩車に出合うと縁起がよい
不安とまじない
狙われる親指―蜘蛛淵【くもぶち】伝説の恐怖―
親指を隠す理由
指と俗信
あとがき