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アルフレッド大王伝 (中公文庫)


アルフレッド大王伝 (中公文庫)

 アルフレッド大王は、九世紀の後半に生きた、イギリスの王です。
 並みいる英国の王の中で、「大王」と呼ばれるのは、ただひとり、このアルフレッド大王のみです。それだけ、英国民に敬愛されている王なのですね。

 しかし、現時点の日本では、アルフレッド大王は、まったく知られていない人物です。ゲームやアニメなどのおかげで、アーサー王のほうが、ずっと有名ですね。
 アーサー王は、あくまで伝説の王です。アーサーのモデルとなった人物は、「王」ではありませんでした。
 実在した偉大な王という点では、アルフレッド大王に、軍配が上がります。

 本書は、そのアルフレッド大王の伝記です。実際にアルフレッドに仕えた学僧、アッサーの手になる著作です。
 歴史学者の研究によれば、この伝記に書かれていることは、すべて正しいわけではないそうです。
 とはいえ、アルフレッドの生涯と事績を伝えるものとしては、最もよくまとまった資料といえます。

 アルフレッド大王がいなければ、こんにちのイギリスという国は、存在しなかったかも知れません。
 大王が生きていた時代、ブリテン島は、デーン人の激しい襲撃にさらされていました。ブリテン島が、まるごと、デーン人の領地になりかねない勢いでした。
 それに抵抗し、デーン人を退けて、国をまとめたのが、アルフレッド大王です。

 英国史に興味がある方なら、読んで損はないでしょう。

 本書は、伝記の部分より、註の部分のほうが、多いくらいです。註の部分を読むのは、正直、退屈だと思います。
 けれども、註まで読めば、「イングランド王国」の前史について、一通りの知識が身につきます(^^)

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

はじめに

序章 アルフレッド王への道

アルフレッド大王伝
 アッサーの祈願
 第一節 アルフレッドの誕生と系譜
 第二節 アルフレッドの母親の系譜
 第三節 デヴォンとシェピー島における異教徒
 第四節 異教徒軍、カンタベリーを掠奪【りゃくだつ】し、マーシャ国王軍を撃破
 第五節 アクリーの戦い
 第六節 サンドウィッチにおける異教徒軍の敗北
 第七節 エゼルウルフ王、マーシャ国王ブルグレッドを支援
 第八節 アルフレッドの最初のローマ訪問
 第九節 サネット島での戦いとエゼルウルフ王の娘の結婚
 第十節 異教徒の軍団がシェピー島で越冬
 第十一節 エゼルウルフ王、アルフレッドを伴いローマへ行幸
 第十二節 エゼルバルドの反乱
 第十三節 ジュディスの立場
 第十四節 王妃エアドブルフの顛末【てんまつ】
 第十五節 エアドブルフの最期
 第十六節 エゼルウルフ王の遺書
 第十七節 エゼルバルドとジュディスの結婚
 第十八節 エゼルバルド王の死とエゼルベルフト王の即位
 第十九節 エゼルベルフト王の死
 第二十節 異教徒軍、東部ケントを掠奪
 (中略)
 第八十六節 アルフレッド王、ローマに施物を贈る
 第八十七節 ラテン語の翻訳
 第八十八節 アルフレッド王の「ハンドブック」
 第八十九節 「ハンドブック」の成り立ち
 第九十節 アルフレッド王と悔い改めた盗賊
 第九十一節 アルフレッド王の苦悩
 第九十二節 二つの修道院
 第九十三節 修道院生活の再興
 第九十四節 海外からの修道僧
 第九十五節 アスルニー修道院での犯罪
 第九十六節 司祭と助祭の陰謀
 第九十七節 陰謀の失敗
 第九十八節 女子修道院の建設
 第九十九節 神への奉仕
 第百節 三交替制の実施と家臣への報酬
 第百一節 外国人と職人への報酬
 第百二節 資産の分与
 第百三節 身と心の奉仕
 第百四節 時計の発明
 第百五節 貧民の救済
 第百六節 正義の審判

解説
略註解
固有名詞――略解・索引
年表
引用・言及文献



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