霊をよぶ人たち (ちくま少年図書館 96 社会の本)
かつて、山形県の一部にあった、死者の霊と交信する文化を紹介した本です。
「死者の霊と交信する」というと、恐山のイタコを思い浮かべる方がいるでしょう。イタコも、死者の霊を呼び出して、交信できるといわれます。日本古来の形を伝える巫女【みこ】ですね。
イタコに相当する者は、昔の日本には、各地にいました。山形県の一部では、それは、オナカマさんと呼ばれていました。
本書は、実在するオナカマさんたちに、直接、取材して、その生活ぶりや、死者との交流ぶりを、紹介しています。
本書が出たのは、一九八五年です。二〇一四年現在からは、三十年近くも前ですね。本書に描かれているのは、約三十年前のオナカマさんたちです。
二〇一四年現在、山形県に、オナカマさんは、残っているのでしょうか?
私の調べた範囲では、実在する確証は、得られませんでした。もし、残っているとしても、おそらく、絶滅寸前でしょう。
本書は、消えゆく日本の文化の一つを記録した、貴重な本です。
シャーマニズムに興味がある方は、ぜひ、本書を読まれるといいでしょう。
少年向け図書ということで、文章はやさしく、読みやすいです(^^)
とはいえ、内容は、かなり高度です。少年向けを装った大人向け図書ではないのかと、私はにらんでいます(笑)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
一 オナカマとよばれる人たち
ふしぎな力をもつばあちゃんたち
先祖の霊をよびだす
迷信だろうか?
二 オナカマのはじまり
超能力――勘【かん】
人生の相談相手
オナカマは消えてゆく
オナカマの記録
探しあてた貴重な記録
「朝日の出 和歌御子【わかみこ】由来」
周辺調査
三 オナカマ道具の発見
「おしん」のふるさと
宝物を発見
例を見ない資料の豊富さ
まぼろしのニホンオオカミ
四 オナカマの本山、お月山【つきやま】霊場
トドサマのゴシンを調べる
オナカマの心に息づく岩谷【いわや】
月山【つきやま】と岩谷の関係
月山【つきやま】権現の由来
歴史と伝承
五 つらくきびしい修行に耐えて
蚕神【かいこがみ】の話
山田さんの生い立ち
遊びと読書
弟子入り
神つけの儀式
二度目の弟子入り
昔ながらの修行の形
他人目【ひとめ】を避けて
過酷な行【ぎょう】の体験
六 庶民のよろこび、かなしみとともに
人間と霊のなかだち
山田さんの神おろし
仏おろし
庄司さんの口寄せ
心身の治療効果
生きるための知恵
七 金の産地と霊地信仰
言い伝えのなかに
採掘地を発見
開田の工夫
原始古代にも
修験者【しゅげんじゃ】の霊場
参詣者でにぎわう
晦日【つごもり】修験【しゅげん】の地
郷土研究に必要なこと
八 庶民文化の宝庫 岩谷【いわや】十八夜観音
研究の途次【とじ】で
奉納物をしらべる
開拓の歴史
九 壮大な十八夜の道、北への道
十八夜塔の分布
十八夜信仰の道
生鮭【なまざけ】の奉納
ソ連の学者の来訪
シベリアのシャーマンたち
オナカマ習俗のルーツ
一〇 迷信から科学へ
はじめのころの恐怖感
危険な作業も
話を聞き出すむずかしさ
滅びゆく山村のすがた
東北地方の特殊性
国指定にむけて
身についた力
一一 もう一つのふしぎなこと
あとがき