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マンダラの仏たち (東京美術選書 (40))


マンダラの仏たち (東京美術選書 (40))

 仏教で使われるマンダラについて、基礎的なことを解説した本です。
 一九八五年に初版が出た本ですが、内容は古びていません。

 一九八五年当時には、類書がほとんどなかったため、貴重な本でした。
 二〇一一年現在では、類書がたくさんありますね。本書を改訂した『すぐわかる マンダラの仏たち』という本も出ています。そちらのほうが、カラー図版が多く、見やすいです。

 現時点で見れば、カラー図版が少ない点が、もの足りないでしょう。
 繰り返しますと、その点以外は、古びていません。解説には、今でも、見るべきところが多いです。
 仏教や、マンダラに興味がある方なら、入手して損はないでしょう。

 本書で特徴的なのは、明王【みょうおう】について、詳しく解説していることです。
 明王とは、仏教に取り入れられた神々の一グループです。忿怒相【ふんぬそう】=怒った姿をした神々です。不動明王が、最も有名ですね。

 仏教の神々の中で、明王というグループには、謎が多いです。
 そもそも、仏教はインドが起源ですのに、インドや、その近隣のチベットなどの地域には、明王というグループがありません。

 明王と似た神々は、日本以外にもいます。例えば、チベットには、忿怒尊【ふんぬそん】と呼ばれる神々のグループがあります。
 けれども、忿怒尊と明王とは、必ずしも一致しません。明王というグループが完成されたのは、日本のようです。

 明王について、本書ほど詳しく解説した本は、少ないです。
 日本のマンダラを語る場合、明王については、外せません。かつての日本では、明王を主尊としてマンダラを作り、祈祷を行なうことが、珍しくなかったからです。

 明王について知りたいなら、ぜひ、本書をお読み下さい。
 以下に、本書の目次を書いておきますね。

第一部 密教の中心
 一、密教のほとけとは
     はじめに
     密教とは
     密教のほとけたちの全体的特色
     新しい尊格の出現

     など

 二、密教の中心――大日如来と五仏――
     a、大日如来
       大日如来とは
       大日如来という名前
       ビルシャナと西方要素
       大日如来のすがた
     b、五仏
       五仏
       金剛界の五仏
       阿閦【あしゅく】如来
       宝生【ほうしょう】如来
       など

 三、密教の修行者――金剛薩埵【こんごうさった】――
     金剛とは
     金剛薩埵の宗教的意味
     金剛薩埵の図像
     日本の金剛薩埵像

 四、密教の菩薩たち――金剛界三十二尊――
     金剛界三十二尊
     四波羅密【しはらみつ】菩薩
     十六大菩薩
     八供養【はちくよう】菩薩
     四摂【ししょう】菩薩

第二部 愛と怒りのほとけたち
 一、愛と怒りのほとけたち――明王総論――
     明王とは
     金剛から明王へ
     忿怒尊【ふんぬそん】の役割

 二、大日如来のしもべ――不動明王――
     不動明王とは
     不動尊か不動明王か
     不動明王の十九観
     十九種の図像的特徴
     など

 三、力のほとけたち――五大明王――
     五大明王とは
     旧訳『仁王経』と五大力菩薩
     新訳『仁王経』と五大明王
     五大明王の成立
     など

 四、恩愛のほとけ――愛染明王【あいぜんみょうおう】――
     恩愛のほとけ・愛染明王
     愛染明王の姿かたち
     愛染明王のヴァラエティ
     愛染明王の信仰

 五、美しき王者――孔雀明王――
     孔雀明王とは
     孔雀明王の呪【じゅ】を説く経典
     孔雀明王の姿
     孔雀明王の美術
     など

 六、戦いのほとけ――太元帥明王【たいげんすいみょうおう】――
     太元帥明王とは
     起源としてのアータヴァカ
     中国からの請来【しょうらい】
     太元帥明王の日本での信仰
     など

 七、明王の少数派
     烏枢沙摩【うすさま】明王
     無能勝【むのうしょう】明王
     歩擲【ぶちゃく】明王
     大輪【だいりん】明王
     など

 八、明王の変種――日本に伝わらなかった忿怒尊たち――
     インド・チベットの忿怒尊たち
     守護尊と護法尊
     秘密仏
     秘密仏の王ヘールカ
     ヘールカに見られるヒンドゥー教と仏教の関係

あとがき
参考文献



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