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空色勾玉【そらいろまがたま】
もともと、児童書として出た本です。
とはいえ、これを児童書にしておくのは、あまりにもったいないです! 二〇一五年現在では、普通の文庫版も出ていますね。
日本神話を基にした、ファンタジー小説です。
小学校高学年以上なら、楽しく読めると思います。
文章はやさしく、読みやすいです。もともと児童書だからでしょうね。
子供が読んでも、大人が読んでも、それぞれ楽しめるところが、素晴らしいです(^^)
読む側の立場が変わっても楽しめるのは、それだけ、世界観や、キャラクターが深いからですね。とりあえず表面をなぞるだけでも、面白いですし、深読みしようと思えば、深く掘っても、味わいがあります。
日本神話を知っていても、知らなくても、楽しめます。
けれども、日本神話や日本古代史を知っていれば、より味わい深く、楽しむことができるでしょう。
舞台は、神と人とがまだ共存していた、古代の日本です。この世界では、輝【かぐ】の一族と呼ばれるグループと、闇【くら】の一族と呼ばれるグループとが、激しく争っていました。
争いの中にも、平和はあります。主人公の少女、狭也【さや】は、輝【かぐ】の神に仕える人々の村で、平穏な暮らしをしていました。
それが、ある祭りの晩に、一変してしまいます。何と、自分は、恐れられる闇【くら】の一族の巫女だと告げられたのです。
それから、狭也は、運命の激流に翻弄されます。村を離れ、輝【かぐ】の宮へ連れて行かれます。そこで、彼女は、稚羽矢【ちはや】という、奇妙な神に出会います。彼は、輝【かぐ】の神の一族でありながら、なぜか、宮の中に幽閉されていました。
やがて、狭也と稚羽矢とは、惹かれ合うようになります。しかし、この二人のラブラブの恋愛ものかと言えば、そうではありません。
何しろ、稚羽矢がエキセントリックな存在なので、甘い雰囲気にはなりにくいです。確かに、互いに愛情を持ってはいますが、恋愛というより、親愛や友愛に近いです。
私は、エキセントリックな稚羽矢が好きで(笑)、応援しながら読みました。
でも、狭也は、じつはモテモテなんですね。稚羽矢以外の男性に、よく言い寄られます。そこだけ見ると、逆ハーレムの乙女小説みたいです(笑)
本作品は、「児童書」とか、「ファンタジー」とか、「乙女小説」とかいった、一方的な見方に収まるものではありません。
そういった見方をすること「も」、できます。が、それらの要素をすべて含んだ、壮大で、深みのある作品です。
本作によって、和製ファンタジーというジャンルが、切り開かれました。
一つのジャンルを作り出してしまうほど、力のある作品です。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
第一章 水の乙女
第二章 輝【かぐ】の宮
第三章 稚羽矢【ちはや】
第四章 乱
第五章 影
第六章 土の器
あとがき