武勇伝が尽きない漢
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(本文: 約8200文字)
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こんにちは。非凡夫婦の「ツマ」です。
今回の記事は、私が「オット」と親しくなる前、彼がまだ知人「Aくん」だった頃の話です。
【旅編①】バスから飛び降り、スマホ盗人を追いつめる(ソロモン/ホニアラ)
ソロモン諸島チョイスル州(島)で働いていたAくん。
長期休暇を利用してニューカレドニアに海外旅行に行くため、首都・ホニアラの市街地からヘンダーソン空港までバスで移動していました。
ソロモン諸島を走るバスは、日本で見られる大型車両ではなく、ハイエース・ワゴンタイプの一般車両です。
日本などからの中古車を動かなくなるまで乗りつぶすため、座席のシート布が剥がれていたり、クーラーが故障していたりというのは日常茶飯事です。
Aくんが乗車したバスも例にもれずクーラーが駆動していなかったため、最後部席の窓際に座ったAくんは手動で窓を開けました。
その日は道路が混雑しており、バスがなかなか動きません。
Aくんは窓枠に肘を乗せた左手でiPhoneをいじっていると、突然、窓の外側からグイッと色黒の手が伸びてきて、手中にあったiPhoneはあっという間に消えてしました。
「盗まれた!!!」
そう自覚した瞬間、Aくんは
”これから海外旅行に行くのにスマホがないと大変だ!”
と頭によぎりました。
そして衝動的に、渋滞につかまって動かないバスの小窓から車外に飛び出し、犯人を追いかけ駆け出します。
走りながら「ヘルプミー!!!」と大声で叫ぶと、現地のソロモン人が10名ほど集まってきて、集団で犯人を追いかけました。
そのまま100m近く走って川の土手まで来たとき、犯人が観念してAくんのiPhoneを投げ捨て逃走。
地面に転がっているiPhoneをAくんが拾い上げたとき、周囲から拍手が沸き起こりました。
しかし、ここでAくんは重要なことを思い出します。
“パスポート、バスの中だ・・・(絶望)”
iPhoneを盗まれ、衝動的にバスを飛び出したAくんは荷物を丸ごとバスに置いてきてしまったのです。
渋滞につかまっていたとはいえ、バスは移動しているはず。
加えて、世界最強と言われる日本人のパスポートは盗まれているに違いない・・・と、絶望的な気持ちでバスを降りた(飛び出した)場所に引き返すと、なんとバスは渋滞の列から外れて路肩に駐車し、Aくんを待っていてくれていました。
Aくんの荷物もそのまま。パスポートも残っていました。
バスに居合わせた乗客は、とんだ巻き添えを食らいましたが、温かい目でAくんを迎えてくれましたとさ。
【旅編②】キャッシュがおろせない?国際空港まで夜通し歩いて出会えた奇跡(ニューカレドニア)
ニューカレドニアを満喫したAくん。
旅の期間中、少し贅沢をしすぎたと反省したAくんは、お金を取り戻すため(?)にカジノへ。
ルーレットで「赤」が続くので「黒」を賭けますが「赤」が出る。
次こそは「黒」だと思いますが、またしても「赤」。
を繰り返し、1日の上限を超えてキャッシュがおろせなくなりました。
市街地にいたAくんは、翌朝出発する空港に行くまでの交通費がなくなってしまい、途方にくれました(自業自得)。
空港までの距離を調べると、現在地からは21kmありました。
時刻は18時を過ぎたばかりで、出国の飛行機は翌朝6:00だったので、”夜通し歩けば間に合うぞ!”と思ったAくんは、高速道路のような一本道を辿って徒歩で空港に向かうことにしました。
スーツケースを引きながら歩みを進めたAくん。
3時間ほど歩き続けたところに1台の車が停車し、乗っていた夫婦が英語でAくんに話しかけてきました。
「空港まで行きます。」
とAくんが言うと、
「危ないから乗っていきなさい。」
と申し出てくれるご夫婦。
Aくんはお言葉に甘えて同乗させてもらいました。
雑談をする中で、その夫婦がバヌアツの出身であることが判明。
バヌアツとは、ソロモン諸島のお隣の国で、共通語である”ピジン語”によく似た”ビスラマ語”を話します。
現地の言葉で会話をして、一気に心の距離が縮まる3人。
「ところであなたはこれからどこに行くの?」
という夫婦の質問に、
「フィジーを経由してソロモンに帰るよ。」と答えるAくん。
ここで、夫婦は驚きます。
なぜなら、今3人が向かっているのは国内線のマジャンタ空港だったからです。
Aくんは夫婦に航空情報が書かれた紙を見せると、トントゥータ国際空港に向かうべきであることが判明。
なんとトントゥータ国際空港はマジャンタ空港からさらに30km先・・・
途方に暮れるAくんですが、バヌアツ人の夫婦は乗り掛かった舟だと思ったか、ここで放り出すわけにはいかないと思ったか、なんとトントゥータ国際空港まで車で送ってくれることに。
結果、予定よりも早く空港に到着し、夫婦にお礼を告げて別れたときはまだ深夜でした。
空港は開業前で建物に入れなかったので、敷地内で野宿をすることに。
大量の蚊に刺され、痒さでとても眠ることができませんでしたが、キャッシュの上限を超えるまでカジノにのめり込んでしまった戒めとしてしかと受け止めたAくんだったのでした。
【旅編③】再び盗まれたiPhone。空港の裏側・コントロールセンターで捜索(フィジー)
ニューカレドニアからフィジーのナンディ国際空港に到着したAくん。
空港内の某チェーン店でハンバーガーを食べ、空になったプレートを片付けて席に戻ると、置いていたはずのiPhoneが見当たりません。
カバンの中にもズボンのポケットにもありません。
絶対に座席のイスに置いたと確信していたAくんは、空港の警備員を呼び、経緯を説明。
「絶対に盗まれた。どうにかしてくれ!」
と必死に訴えるAくん。
途方に暮れた警備員はなんと、トンデモない提案をします。
「コントロールセンターに来て、監視カメラの映像を確かめるかい?」
なんと、Aくんは関係者以外立ち入り禁止である国際空港のコントロールセンターに連れられました。
中は壁一面に広がる大きなモニターに、膨大な監視カメラの映像が映されており、職員が常にチェックしていました。
アニメや映画に出てくるような部屋を見て、興奮するAくん。
某バーガーショップに滞在した時間を警備員に伝えると、先ほどAくんが滞在した座席付近を映す映像のうち対象の時間だけを切り取ったデータを警備員のスマートフォンに転送して見せてくれました。
映像にはAくんがバーガーショップにやってきた時から映っていました。
画面の中のAくんが食事を済ませ、空のプレートを片付けるために席を立ちましたが・・・
離席した席のイスにiPhoneはありませんでした。
警備員さんに「絶対にここで無くなった!」「絶対に盗まれた!!」と訴えてコントロールセンターにまで来たAくんでしたが、まさかの記憶違いでした。
警備員さんに謝罪をし、コントロールセンターを後にしました。
結局iPhoneは見つかりませんでしたが、非日常な体験ができて少し満足するAくんでした。
自由を求めて大海原を泳いで渡るもサメと一騎打ち寸前に(ソロモン/タロ)
Aくんが住んでいたチョイスル州(島)は、州都のタロがチョイスル本島になく、その対岸の小さな小島(タロ島)にありました。
空港や役所はもちろん、銀行、日用品を売るショップ、インターネットがつながる環境(Wi-Fiスポットなど)などに用があるときはわざわざタロ島に渡る必要があります。
通常、Aくんが住む村からタロ島に行くには朝(7:00頃)と夕方(16:30頃)に出ているエンジン付きボート(以下、OBM)の渡船に乗らなければなりません。
Aくんが住んでいた村は、電気はおろか、ガス・水道、日用品を購入するショップもないという環境。
そして何より、インターネットがほとんど利用できないので、外部の人と連絡を取り合うことができませんでした。
渡船の時間に縛られずに自由にタロ島に行き来したいと考えたAくんはひらめきます。
”泳いで渡れないだろうか?”
現地のソロモン人いわく、Aくんの住む村からタロ島までは2km程度。
近隣で最も恐れられる生き物”ワニ”がいないことも確認できました。
Aくんは学生時代に水球部に所属しており、練習で1日10km以上泳いでいたことに加え、遠泳の経験もあったので、往復4kmであれば泳いで行き来できると確信しました。
そして初めて泳いでタロ島に渡る日。
出発地の桟橋で遊んでいた子どもたちに、
「もしもボクが見えなくなったら誰か大人を呼んでくれ。」
と言い伝え、海に飛び込みました。
順調にタロ島に近づくAくん。
無事に泳ぎ切ることに成功しました。
そして復路も難なくクリア。
これで自信がついたAくんは、財布とiPhoneを二重のジップロックに入れて防水対策をし、それを海パンに挟んだまま泳いでタロ島に渡るようになりました。
週末は、インターネットをつないで外部の人と連絡を取り合ったり、SNSや動画を見たりしてしばしの文明を楽しみました。
そしてある日もいつもと同様に、泳いでタロ島に向かいました。
すると、トンデモないものがAくんの目に飛び込んできました。
”サメだ。”
サメはなんと、Aくんの真下の深い所を泳いでいました。
しかも2匹います。
”ヤバい!!!!!”
取り乱したAくんはスピードを上げて泳ぎますが、しばらくして”泳ぎの速さでサメに勝てるわけがない。”と冷静になります。
ならばどうするか、考えを巡らせたAくんは、サメは鼻が弱点であることをどこかで聞いたことを思い出して、
”泳いで逃げられないならここで倒していこう。”
と思い立ちました。
水を掻く手を止め、今度はじっと海に漂って相手(サメ)が近づいてくるのを待ちます。
サメはしばらくAくんの真下を泳いでいましたが、じきに海底に沈んで見えなくなりました。
”・・・勝った。”
と、思ったAくん。
ホッと一安心して、タロ島までの残りの行程を泳ぎ切りました。
サメはヒトとは比べ物にならないほど嗅覚がいいそうです。
特に獲物を狙って血の匂いに引き寄せられるそうで、オリンピック競技用サイズのプールにたった1滴の血を垂らしてもかぎ分けることができるとか。
このときAくんは大きな怪我こそ負ってはいませんでしたが、清潔な状態を保てないソロモン諸島では小さなキズが悪化して皮膚炎になり、少量の出血をしていることが日常的にあり、Aくんも例外ではありませんでした。
その程度の傷は日常茶飯事だったAくんは、気にも留めずに海に入りましたが、サメはその血をかぎつけて近づいてきたのではないかと考えられます。
酸素ボンベが漏れる?!危険すぎるスキューバライセンス取得記(ソロモン/ムンダ)
泳ぎに自信があるAくんは、スキューバダイニングのライセンスを取るべく、ソロモン諸島の地方都市・ムンダに足を運びました。
実習を受ける前に実力をはかるため、海に設置されたマークまで泳いで戻ってくるテストをしました。
難なくクリアをしたAくんは、海洋実習2回と座学を受け、筆記テストを受験するというプログラムになりました。
生徒一名ごとに現地のインストラクターがつき、ウェットスーツを着て練習会場の海へOBMで向かいます。
酸素ボンベなどの器具の状態を点検したのち、海底へ。
海の中はサンゴ礁や魚がいっぱいで、絵本の中の竜宮城のように美しい。
しばし海中ライフを楽しんでいる途中で、インストラクターがAくんの酸素ボンベの数値をチェックしました。
すると海上にいるときは十分にあった酸素量が残りわずかになっているではありませんか?!
Aくんの呼吸が早くて酸素の消費が早かったということではないので、漏れていたのではないかと思われます。
驚いたAくんは「このまま続けるのは嫌だ!!」と告げるも、インストラクターはグーサインをキメる。(正しくは「上昇」の意味だった。)
「グーサインじゃねー!!」
と文句を言いつつ、インストラクターについて泳いでいき、無事に海上に上がることができ、酸欠という事態を免れることができました。
Aくんは当時、日常生活の中で魚をモリで突いたり海で遠泳をしていたので、3分程度は息を止めながら泳ぐことができました。
そのため、酸素ボンベの酸素が無くなりかけるというハプニングが起きても精神的余裕がありましたが、普通はパニックになる状況だったそうです。
その後、無事にライセンス取得が叶い、めでたしめでたし(?)
飲み水を得るためにジャングルを行軍。着いた先で力尽き川にダイブ(ソロモン/チョイスル)
ソロモン諸島の通常の村ではレインタンクに雨水を貯めて飲み水や生活用水として使用します。
乾季は5月~10月。
Aくんが住んでいた村ではこの時期に雨がほとんど降らなくなり、レインタンクの水が日に日に少なくなりました。
節水のため水浴びは禁止、米も焚けず、ビスケットで空腹をつなぐ日々。
飲み水はココナッツを収穫してしのいでいましたが、この状態が続いては命の危険があるということで、村の住民で協力して滝つぼまで水汲みに出かけることになりました。
滝つぼは、OBMで15分ほどのところにあります。
村の成人男性はOBM組、Aくんや若い青年たち10名ほどは徒歩組として水汲み用のタンクを持って水場に向かいました。
Aくんたちは地固めされた土の道路を4kmほど進み、その後は滝つぼに向かってひたすらジャングルを突き進みます。
ジャングルの中には皮膚を刺してくるアリが大量発生していました。
ソロモン人の皮膚は固いので、青年たちは軽く手で払う程度で済みましたが、日本人の柔らかな肌は簡単にアリに突き破られ、Aくんは痛みと戦いながら歩を進めました。
灼熱の中、1時間ほど道なき道を進み、目的地の滝つぼの滝が目前になったところで、Aくんの脚が急に自分のものではないかのように重くなり、踏み込んだ感覚がなくなるのを感じました。
次の瞬間、目の前に見える景色がゆっくり傾いていきました。
「Aクン!!」「Aクン!!」
と自分の名前を呼ぶ声が聞こえて目を開けると、自分が川辺に横たわっており、青年たちに取り囲まれて頬をパチパチ叩かれていました。
どうやらAくんは、滝が見えた瞬間に気を失い、川にダイブしたようです。
倒れた瞬間に青年達がAくんを引き上げてくれたおかげで、滝に流れ落ちずに済んだようでした。
意識をなくした原因は”脱水症状”です。
滝つぼで水を摂取できたとはいえ、倒れた直後に再び1時間以上歩いて村に戻るのは酷でしたが、その他に成す術がないので仕方ありません。
水を汲んだタンクを持った青年たちとともに来た道を戻るAくん一行。
その最中に、なんと・・・
ドシャ降りの雨・・・?!?!
がっくり力が抜けるAくん。
青年達はタンクに汲んだ水を捨て、代わりにトトロが差しているような大きな葉っぱを刈って雨よけにし、みんなで村に戻りましたとさ。
密入国した隣国人とガス欠したボートで大海原を1時間浮遊(ソロモン/ギゾ)
ソロモン諸島屈指の観光地・ギゾにAくんの友人が遊びに来ることになり、チョイスル島からギゾへのダイレクト便に乗ろうと空港に向かったAくん。
しかしその日は乗客がいっぱいで乗ることができませんでした。
(村にはインターネットがないので事前予約ができなかった。)
途方に暮れたAくんはチョイスル島からOBMでギゾに向かう人々に声をかけ、ヒッチハイクをしようと考えます。
海辺で片っ端から声をかけるAくん。
「誰かギゾに行く人はいませんか?」
すると、あるグループの男性がAくんに声をかけてきました。
「○○(ソロモン)ドル支払ってくれれば乗せるぜ。」
提示された金額は割高だと思いましたが、もともと飛行機で行くつもりだったAくんは飛行機代に比べれば安いと思うことにして承諾し、交渉成立。
グループには子どもや女性もいたため安心してOBMに乗り込みました。
ギゾに向かう間はひたすら男性と雑談。
家族の話になり、写真を見てビックリ!!
写っている男性達が”銃”を持っているではありませんか!
ソロモン諸島は銃規制があるため、銃を所持することができません。
なんとこのグループは、パプアニューギニアの人々でした。
Aくんが住んでいるチョイスル島はパプアニューギニアとの国境近くにあります。
そのため、国境付近の島々の住人は、チョイスルのタロ島に頻繁に日用品の調達に来るそうです。
その男性達は、ソロモン諸島のビールが大好きなのだとか。
今回は男性の知人がギゾに住んでおり、訪問しようとしたところにAくんと出会ったということでした。
パプアニューギニア人がチョイスル近辺を出入りしていることについて、ソロモン諸島側が知らないはずはないでしょう。(現大統領はチョイスル州出身だし)
近隣住民どうしは出入国審査が免除されているのか、はたまた放置されているのかは分かりませんが、事実として近隣国の住人が日常的にソロモン諸島に出入りしていることが分かりました。
さて、そのパプアニューギニア人の一行とAくんはギゾに向かってOBMで進行している途中でガソリンを補給するため海上に浮かぶガソリンスタンドに立ち寄りましたが、その日はソロモン諸島の祝日だったためどこも開いていませんでした。
男性がガソリンの残量を確認したところ、なんとかギゾまで行けるだろうと目算し、補充をあきらめて先を急ぎました。
・・・しかし。
プスプスプス・・・速度を落とすOBM。
・・・ガス欠です。
途方に暮れるAくんを前にのんきな乗員たち。
「お前は泳ぎは得意か?」
と尋ねられたAくんが肯定すると、
「では泳いで船を押してくれ・・」
と、頼まれます。
断固拒否するも成すすべなく大海原に漂うOBM。
海洋の流れに従うまま浮遊していると、偶然にも電波が届くところに流れ着きました。
そこで男性が知人に連絡し、事情を説明。
そのまま数十分、海に漂いながら待っていると、ガソリンを積んだOBMがやって来て補充してくれ、再び動き出すことに成功。
無事にギゾに到着できましたとさ。
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こんにちは。
或るアラサー夫婦の非凡な日常の「ツマ」です。
今回の記事をお読み下さりありがとうございました!
私達夫婦はソロモン諸島という南の島で出会いました。
体力をあり余らせている私達は夫婦で冒険旅をしたり、ボディービルダーを目指して筋トレに励んだり【オット】、マラソンにハマったり【ツマ】と非凡な日常を送っています。
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