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推し活翻訳13冊目。The Royal Rabbits of London Escape from the Tower、勝手に邦題「ロンドン・ロイヤル・ラビット隊2 シャイロの大脱出」

原題:The Royal Rabbits of London - Escape from the Tower (Simon and Schuster)
原作者:Santa Montefiore, Simon Sebag Montefiore
勝手に邦題:ロンドン・ロイヤル・ラビット隊2 シャイロの大脱出

この作品は、下記で紹介したシリーズの2作目です。主なキャラクターが確認できますので、気になる方はまずこちらから!

概要と感想
 
「生きることは冒険だ。この世に不可能なことなどない。やる気と運、新鮮なニンジンと、しめった鼻先と、ほんの少しの度胸があればなんでもできる!」
 
ちびウサギのシャイロが、ドブネズミのラッチ一味の企てを阻止し、ウサギの秘密組織「ロンドン・ロイヤル・ラビット隊(以下、LRR隊)」のメンバーに抜擢されてから6週間が過ぎました。
 
世界征服の出鼻をくじかれたパパ・ラッチ親分はかんかんで、超高層ビル、ザ・シャードのてっぺんにあるアジトに集まった部下たちは、耳や爪などをちょん切られる「お仕置き」を受けるのではないかと冷や汗ものです。
 
人間たちは知りませんが、パパ・ラッチ親分は、インターネットの世界を牛耳る謎の大物で、姿はだれも見たことがありません。今夜も、部下たちが見つめるなか、ホログラムの文字が命令を映し出すだけです。
 
パパ・ラッチ親分は、アメリカ大統領のイギリス訪問を狙って騒ぎを起こし、女王陛下に恥をかかせ、大統領の誇りを傷つけ、両国の友好関係に終止符を打とうとしているのです。シャイロには二度とじゃまさせないと、部下のマーヴィスとフリスキンに、シャイロを捕まえ、LRR隊の秘密をはかせ、消してしまえと命じます。
 
ラッチ一味の怪しい動きを知ったLRR隊総司令官ネルソンは、クルーニーとレーザーとシャイロを、ダウニング街10番地の首相官邸地下に向かわせます。そこには「裏通りのしっぽ部隊」を率いるキツネのSTBTがいました。キツネたちは得意の情報収集能力を生かし、首相を(第一代から!)支えているのです。STBTは幼いころ、ホレーショに命を救われたことがあり、シャイロと意気投合します。
 
アメリカ大統領の護衛としてやってきたアメリカウサギたちは、秘密基地のグランド・バロウにまねかれますが、特殊部隊隊長のゼノは内心穏やかではありません。アメリカ野郎(とは言っていませんが)の力を借りずとも、ラッチ一味など自分たちだけで撃退できると自負しているのです。
 
それからまもなく、ラッチ一味が大挙してグランド・バロウへの秘密の入り口を襲います。あっという間に敵を蹴散らしたゼノはいいところを見せられてご満悦ですが、実はこれが、巧妙に仕組まれた陽動作戦。シャイロはまんまと生け捕りにされ、ザ・シャードにとらわれてしまいます。
 
LRR隊いち賢いシャイロがいないなか、アメリカ大統領を招いたバッキンガム宮殿での晩さん会は、無事に行われるのでしょうか…。
 
             ☆   ★   ☆
 
主人公のシャイロがつかまるなんて、いったいこの先どうなるの? と思いましたが、シリーズ2作目は、新しい仲間のキツネ部隊やアメリカウサギの精鋭部隊が登場し、物語の世界が大きく広がります。その分ちょっとドタバタ感がありますが、それがまた楽しい。
 
ザ・シャードに閉じこめられたシャイロの脱出劇、イギリスのエリートウサギとアメリカウサギの確執、それを乗りこえて得た信頼、影のように密かに活躍するキツネたちストーリーが、スリルとユーモアたっぷりのエンディングに向かって収斂していくところが読みどころです。
 
文化の違いや、それを乗りこえることの大切さが描かれ、多様性のメリットも提示されていて、児童書としてよく考えられていると思いますが、なにより作者が楽しんでいる感じが伝わってきて、思わずくすりと笑ってしまう。
 
総司令官ネルソンが、アメリカウサギの隊長がメスであることに驚くとか、グランド・バロウの地下コンピューターは前時代的に古めかしいけれど、アメリカウサギが使うガジェットは最先端だとか、ちょっと自虐ネタっぽさもあるなかに、自国の文化への愛も感じられる語り口がなかなかよいのです。
 
それに、シャイロが身動きできないので、必然的にほかのキャラクターたちの活躍する場面が多くなり、お気に入りキャラに思わず肩入れしたくなるところもミソ。
 
実は、物語の最後の最後で、パパ・ラッチ親分の正体がちらりと描かれていて、挿し絵もちょっとぞくっとする感じ。ラッチ一味に向けてカタカタとノートパソコンを打っているその場所は、イギリスですらありません…。
 
3作目もいつかご紹介しますね。 

セントジェームズパークのヤナギの木の下に秘密基地への出入り口があります。
公園をかけまわるリス。1作目でシャイロをヤナギの木まで案内した子かな?

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佐藤志敦@推し活翻訳家
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