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推し活翻訳15冊目。Pablo Neruda Book of Questions Selections、勝手に邦題「ねえ どうして?」

原題:Pablo Neruda Book of Questions Selections/Libro de las Preguntas Selecciones(Enchanted Lion Books)
絵:Paloma Valdivia 英訳:Sara Lissa Paulson
勝手に邦題:ねえ どうして?
 
概要と感想:
 
青が うまれたとき
よろこびに さけんだのはだれ?
 
  きえねす ぐりたろん で あれぐりあ
  くわんど なしお える ころら あずーる?
 
 
のりすてられた じてんしゃは
どうやって じゆうを みつけたの?
 
ねえ どうして ゆきがふるとわかっているのに
木は ふくをぬぐの?
 
木の葉は ふゆのあいだ
ねっこといっしょに そっとかくれているの?
 
秋のまんなかで
黄色がはじける おとがきこえる?
 
もし ぼくらが黄色をつかいはたしたら
どうやって パンをつくればいいの?
 
ちょうちょの こころは たびをして
空とぶさかなに かわるんじゃない?
 
ねえ どうして ヘリコプターに
おひさまの みつのすいかたを おしえてあげないの?
 
一本の木になるオレンジたちは
どうやって おひさまをわけあうの?
 
ゆめのなかで なる すずは
どこでみつけられるの?
 
ゆめの なかみは どこへいくの?
ほかの人のゆめに はいりこむの?
 
             ☆      ★   ☆
 
ガルシア・マルケスが、二十世紀最高の詩人と呼んだパブロ・ネルーダ。ノーベル文学賞受賞者でもあり、この人をテーマにした映画も作られ、邦訳された作品も多いので、ご存じの方もおおぜいいらっしゃいますよね。
 
この絵本は、ネルーダの詩集『Libro de las Preguntas』(質問の本)に収められた詩から39編を選び、その一部を抜き出す形で70の問いにまとめたものです。もとの詩の形のままで紹介されているのは一編のみ。絵は、日本でも絵本が翻訳出版されているパロマ・バルディビアさんです。
 
はじめは、パブロ・ネルーダの詩を分解するなんてありえるの? と思いましたが、読むたびに、この企画の素晴らしさに感動します。なんと、英語とスペイン語の併記なんですよ。詩は、書かれた国の言葉で読まれるのがいちばん美しいと信じているので、併記はとても嬉しい。
 
この絵本のために選ばれた詩は、思考や概念の限界を軽々と飛びこえ、読者を、プリミティブな世界、生命の躍動感、宇宙の深遠さ、心にしみいる温かさの中へと連れだしてくれます。まるで、子どもに返ったような気がする。ネルーダの偉大さをあらためて感じました。
(未熟な試訳で素晴らしさは伝えきれませんが…)
 
ここにこのまま日本語を加えられたらどんなに素敵でしょう!
まあ、絵と詩編はとても注意深く配置されているので、なにかを加えたり、減じたりするのは、作成に携わった人たちがうんと言いそうもない気がしますが…。
 
あとは、日本語訳+スペイン語の「音」の表記とかもいいなぁ(妄想がふくらむ)。冒頭でちょっと試してみました。スペイン語は、わりと日本語で表記しやすくて、音が楽しい。声に出して読んだら、大人も子どもの笑顔になれそうな気がします。

パブロ・ネルーダのことをもう少し知りたい方には、『夢見る人』をおススメ。多感なネルーダが、どのような少年時代を過ごし、世界を代表する詩人へと成長してゆくのか、彼の詩をはさみながら、その一端を垣間見られる素敵な作品です。絵はピーター・シス。翻訳は原田勝さん。
 
文字のインクの色が、この記事で紹介している絵本にもふんだんに使われている青緑色で、ネルーダが好きな色なのだそうです。

パロマ・バルディビアさんの絵本は、noteで翻訳者の星野由美さんが紹介されています。 

みしまえみさんのnoteでも、パロマ・バルディビアさんの絵本が紹介されています。

こちらでパロマ・バルディビアさんのイラストの一部が見られますので、ぜひのぞいてみてください。


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