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推し活翻訳19冊目。The Last Chance Hotel、勝手に邦題「ラストチャンスホテル」

原題:The Last Chance Hotel(Chicken House)
原作者:Nicki Thornton
勝手に邦題:ラストチャンスホテル
 
概要と感想
 
ラストチャンスホテルへようこそ。
本日のお客さま。
 
一号室:トーパ・タロミウス博士
    VIP、ラズベリーのアレルギーあり
 
二号室:ペネロープ・パパースプーク教授
    朝は、小鳥のさえずりで目ざめたい

 三号室:グロリア・トラウトビーン
    宿題をやるための小さな机、パパースプーク教授の続き部屋
 
四号室:ダリンダー・ダンスター・ダンスタブル
    ふかふかの枕を三個追加
 
五号室:アンジェリク・スクイアー
    全身が映る姿見
 
六号室:グレゴリアン・キングフィッシャー
    スポーツを楽しむ人たちの絵画がある部屋
 
七号室:カウント・ボルド・マード
    特別なリクエストなし
 
セスは、人里離れたラストチャンスホテルで働くキッチンボーイです。さびれたホテルですが、今日は大事なお客さまがたくさん来るので大忙し。ホテルのオーナーで意地悪なバン夫妻と腰の折れ曲がったシェフのアンリにこき使われて、休む間もありません。
 
いえ、ラストチャンスホテルも、セスのお父さんがシェフを務めていたころは、その素晴らしい料理を味わおうと、遠方からはるばるやってくるお客でいっぱいだったのですが…。
 
お母さんはセスが赤んぼうのときに亡くなり、お父さんは(バン氏に言わせれば)、ホテルの貴重な宝を盗んで姿をくらましました。ホテルに住みついている黒猫のナイトシェードのほかには友だちも、家族もいないセスは、小間使いのように使われながら、いつか料理で腕を立てて、このホテルから抜け出したいと夢見るのがせいいっぱいです。
 
だって、バン夫妻の一人娘ティファニーは、セスをいびり、苦しめることを最大の楽しみにしているのです。美しい金髪や、愛らしい笑顔の下に隠された本性に気づく人はいません。
 
お客さまが到着しはじめて大わらわなのに、迷信深いシェフは、キッチンに入りこんだホタルを見て、死の前兆だと大さわぎし、大事な料理作りをすっぽかしてしまいます。しかたなく、いつものようにセスが料理をしていると、遠く離れたお上品な料理学校に通っているはずのティファニーが、もどっているではありませんか。
 
そして、セスが高価なサフランを使ったことや、猫のために魚の頭をくすねたことをばらされたくなければ、料理学校で教わったレシピでパブロヴァを作り、ディナーのデザートに自分が作ったことにして出せと脅します。まあ、いつものことなのです。
 
でも、そのレシピにはタロミウス博士がアレルギーを持つラズベリーが使われていて、博士には別のデザートを用意しなければなりません。博士は、セスがお部屋にお茶を運んでいくと、「会えて光栄だよ」と優しく声をかけてくれました。どうやらセスを他のだれかと間違っているようです。
 
不思議なことがいろいろありますが、博士の好物がアプリコットだとわかり、自分の部屋にもどってレシピを考えていると、ナイトシェードがしきりに壁の小さな穴を引っかきます。そこから出てきたのは、秘密のレシピ本。アプリコットのデザートもあって、セスは最高のデザートを作り上げます。
 
ところがなんと、このデザートを食べた博士が急死を遂げます。場所は、博士と6人の宿泊客が、ある「候補者選抜手続き」のために鍵をかけ、目張りまで施した完全密室なのです…。
 
             ☆   ★   ☆
 
ホテルの客たちは、まず見た目が漫画のキャラクターのようにユニーク。たとえば、タロミウス博士はサンタクロースを小さくしたようなおじいさん、パパースプーク教授は、カラフルで大きなテントのようなドレスに身を包んでいます。その客たちが実はみんな魔法使いで、主人公セスが第一容疑者の密室殺人事件が起こる。
 
ハリーポッターとアガサクリスティーを合わせたようなストーリーが、子どもの心を引きつけないわけはありません。その人気を裏づけるように、カナダ、中国、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ロシア、ポーランド、アメリカ、韓国など多くの国で翻訳出版されています。
 
実はこの作品、セスが主人公のミステリー三部作の1作目。これから読む方のためにネタバレは控えますが、シリーズのタイトルと装画がなかなか良いので、2作目以降も紹介しておきますね。

1作目の装画がいちばん好き💓

このほかにも、黒猫のナイトシェードが活躍するスピンオフ作品が3作出ています。

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佐藤志敦@推し活翻訳家
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