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夜明けのはざま 感想
めちゃくちゃよかった〜!!!
面白くて一気読みした。
葬儀屋で働く女の子がメイン主人公。様々な死を通して故人や自分自身の人生と向き合っていくお話。
【ここからネタバレを含みます。】
葬儀屋で働く主人公佐久間は親にも恋人にも死体を扱うような仕事はやめてほしいと言われているが、仕事にやりがいを持っているのでそれが不満だった。親友の楓子は念願の結婚をするも、田舎のしきたりが強い家に嫁いだため、義両親の言いなりになり、理想の結婚式はできなかった。そんな中、親友のなつめが自殺してしまう。なつめの遺言には主人公に葬儀を取り計らってもらい、楓子と主人公に自分の葬儀に来てほしいと残されていて…、というのが第一章のあらすじだ。
死を通して生を知っていく流れが激熱だった。
また、それぞれの登場人物に見せていなくとも、生きていく上での悩みがあって、どの登場人物も魅力的で没入できる。
第二章では別の主人公になるので、もっとなつめの葬式の深い話を見たかった。
第二章では別の主人公、シングルマザーが主人公となる。この主人公は花屋で、別れた夫の恋人の男性の葬式の花を担当することになる。
この話ではジェンダーや、正しさを押し付けることも相手を苦しめることがあること、一方で正しさを見てくれている人もいることを伝えてくれる。
相手の幸せを考えられるようになりたいと思った。
第三章は学生時代に貧乏でいじめられていた葬儀屋の男性が主人公。死は平等というが、母親が苦労してきても人から馬鹿にされ、搾取され、無惨な死を遂げたことから、死も平等ではなく、貧乏は貧乏な死を迎えると卑屈になっている。そんな時に客としてかつて自分をいじめていた男がやってくる。いじめっ子はただただ嫌なやつで胸糞悪い。しかし、主人公が持っている奴だと思っていた同僚も、昔妻と娘を自殺させてしまった負目から死を忘れないために葬儀屋で働いていることを知り、持っている人ように見える人も抱えているものがあることを知る。テーマが死なので泣きそうになった。
第四章は第一章の主人公佐久間の恋人純也の姉が主人公。姉の大切な友人でもあり元彼でもある人が事故で逝去し、佐久間の働く葬儀場に行くことに。この時、佐久間へ仕事を辞めるように偵察してきてほしいと純也に頼まれる。姉は元彼がすきだったが、家族が元彼の職業を見下していて破局した。葬儀で元彼の仕事に感謝した人から手紙がたくさん届いているのを見て、付き合っていた頃に自分ではなくて仕事を取るのかと言ったことを後悔する。この話も古い習わしや家の価値観を考えさせられる話だった。
最終章は第一章の主人公、佐久間の話に戻る。親友の楓子は自分で笑ってくる義家族や夫が嫌になり、離婚することに決める。恋人の純也は主人公の佐久間に死が苦手な理由を打ち明け、仕事を辞めて結婚してほしいと改めてプロポーズする。主人公は悩むが、母親がガンであることを知り、自分の力で支えたいこと、昔看取ると約束した恩人の死を前にして、プロポーズを断り、仕事を続けることを選ぶ。
という話で、最後は純也が葬儀屋の仕事を認めてくれて、二人に結婚して欲しかったな〜と思いつつも、どちらも譲れない考えなら別れるしかなかったのかな、とも思いました。
お互いのことが大好きなのに、切なかったです。
また、私も葬儀屋さんで働くおじいさんの家の子供と友達だった時、親が「〇〇ちゃんちは葬儀屋だからお金はあるだろうけど…ねぇ〜?」みたいなことを言っていて、子供ながらに葬儀屋はお金は稼げるけどいい仕事じゃないのだという偏見があったことを思い出しました。
凝り固まった、古いけど根強い価値観は田舎ではまだまだ残っているのは私自身感じています。
自分自身のそういう部分にも気付かされて、恥ずかしい気持ちにもなりました。
楓子が話した「先を行けって言える女になる」というセリフが好きです。
「自分たちはこんな苦労をした、だからあなたも我慢しなさい」そういう人にはなりたくない。
「自分たちはこんな苦労をした、だからあなたたちにはもうこんな思いはさせない」“先を行けって言える女”になる、という強くて、正しくて、だけど貫かなきゃ生きていけない生き方です。
この本では様々な死と向き合う中で、死ぬまでに誰よりも生きることと戦ってきた故人の生き様に、見送る人の大切な人を失いながらもこれからも自分で選んで生きていかなければならない戦いに、言いようのないパワーを感じます。
自殺、というとマイナスなイメージで口にするのも忌み嫌う人もいますが、自殺に至るまでどれだけ生きることと向き合って頑張ってきたのかが伝わって、お疲れ様と声をかけてあげたくなります。
この本は生きることの戦いの本に感じました。
失っても繋いで、それぞれの人生で戦って、いつかみんな死んでいく。
私も自分の人生を精一杯戦って、いつか訪れる大切な命には「頑張ったね、ゆっくり休んでね、私もゆっくりいつかそっちにいくから待っててね」って言いたいです。
おしまい。
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![石火矢 歩美](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/140695815/profile_7c2d472266db755fc5c3858c753f4dc1.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)