cafeプリエールのうさぎ #6 28歳ゆかり①
連載してる小説です😊
お時間のある方はどうぞ!
少しだけどんよりした水曜日。雨になるか、雪になるか微妙な天気だ。
和泉はあたたかくしてcafeプリエールに向かう。
好きな時に来ていい、という謎の出勤形態だから、今週は水曜と金曜に行くことにした。
「自由出勤」
聞こえはいいが、気を遣うのだ。
何日行けば正解なのだろう?
何曜日に行けば正解なのだろう?
行き過ぎても迷惑がかかる気がするし、
少なすぎても「あいつ来ないな」とか言われるかもしれない。
そんな気がしてくるから不思議だ。
自由を望んでいるくせに、
「はいどうぞ」と自由をもらうと、
人は戸惑うらしい。
「おはようございます」
カランと空色の扉を開ける。
「和泉さんでしたか。今日は繁盛しそうなので、準備をお願いしますね」
「はい」
店長の良くわからない予言に戸惑いつつも、準備を始める。
白いシャツ、漆黒のパンツに黒い靴。
ワインレッドのギャルソンには、クロネコの刺繍がしてある。
店長の宇佐は、パンツと同じ色のベストに、首からチェーンをかけていて、胸ポケットに懐中時計を忍ばせていた。
「掃き掃除終わりましたか?」
「……はい! 終わってます」
「そろそろ来ますので、音楽もかけてくださいね」
宇佐の声がすでに音楽のように聞こえるけれども……。
和泉は淡々と仕事をしていった。
「店長、ご予約ですか?」
「……いえ」
「えっ、なんで来るのがわかるんですか!?」
「夢ですね」
「それってどういう……」
カラン
ベストタイミングで、お客さんが来る。
いつ開いているか閉まっているかわからない、caféプリエール。
求めた人に、ちゃんと開かれているのだ。
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