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【蔵探訪】#7 中村酒造場(本格焼酎)

こんにちは
お酒が大好きで、霧島に赴任してから本格焼酎の面白さにどハマりした星野リゾート社員のはしもとです。

11月頭に日本酒や本格焼酎といった、麹菌をつかった酒づくり”伝統的な酒造り”がユネスコ無形文化遺産へ登録されると勧告がありました!
恐らく近日中に正式な登録があると思いますが、改めて日本国内のお酒が注目されることになると思いますし、本格焼酎の本来の価値が世に認知される熱い出来事ですね!

米麹
日本酒や本格焼酎に用いられる

さて、本格焼酎のシーズンというと、
さつまいもの収穫時期が8月下旬〜のため
9月〜11月にかけてが本格焼酎の仕込みのシーズンです。
この時期は日頃からお世話になっている中村酒造場さんにお手伝いに行かせていただいております。

先日も書かせていただきましたが、第二弾として、伝統的な酒造りを昔からされている中村酒造場さんの歴史や蔵のこだわりを書かせていただきます。


蔵紹介

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#7
酒造:中村酒造場
地域:鹿児島県霧島市
創業:1888年
代表銘柄:なかむら(芋焼酎)
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中村酒造場

中村酒造場は霧島の海側に近いところに位置し、現在では住宅街に囲まれた酒蔵。
昔は田んぼや畑に囲まれた場所。
現代であれば設備があれば焼酎はどこでもつくれますがでも昔は違い
周りの環境やその土地の性質により、その場所でできない事情があった。
そのため、その場所で焼酎造りを今でも続けることに面白みがあり
改めてなぜこの土地なのか、文化や歴史を紐解くことで
伝統産業であることに誇りを持ってものづくりができるとのこと。

昔からつづく赤煉瓦造り蔵
現在使われていないが煙突もシンボル

現在では複数の焼酎を造られている中村酒造場ですが
4代目の祖父の代までは”玉露白”のみをつくっていた。
5代目になり、その後どうにか販路をということで、麹違いの”玉露黒”や”甕仙人”などをつくってきました。
それでも売れない時期がありましたが
平成7年(1997年)に「良いものをつくりたい」という想いで
通常芋焼酎は芋を変えて変化をだすものだが
米麹の米を変えた焼酎の”なかむら”販売。
米50円→450円のものに変えたことで原価がかなり上がり
その時の焼酎の相場が1000円のところ、なかむらは2400円
高すぎたのもあったのか、2年間は売れず。
ですが、3年目に全国の鑑評会で最優秀賞が取れ、翌年に焼酎ブームがあり大人気になった。
それまで本当に売れず、生活も厳しかったよう。このブームで安定した収入を得て、続けてきた先代の想いが報われたとのことでした。

左から”玉露白”、”玉露黒”、”甕仙人”、”なかむら”
amazing series ”Still Life"、"Tear Drop"、"Aqua"、"Flare"

現在6代目の中村慎弥さんですが、昔から焼酎蔵を継ぎたいと思っていたわけではなかった。
親からも「焼酎は儲からん」ということを幼い頃から言われており、商圏は10キロ圏内ととても狭いほど、安くて地元の晩酌酒というものであった。
酒造の名前にも”地域”の名前がつく酒造もあれば、”苗字”がつく酒造もあり、これらの違いというのは、酒造が合併しているかしていないかというのが由来。
合併会社だと設備が大きく効率的に焼酎をつくれる、中村酒造場さんみたいな昔ながらの小さい蔵は1本にかける人件費が高く、実際に数十円上がっただけで地元の人にもなかなか手に取ってもらえなかったほど、厳しい時代が続いていたようです。
そんな苦しい姿を見ていたので、違う道に進もうと思っていた学生時代に焼酎ブームが来て、環境が一変。
売れるようになり、不遇の時代を味わった祖父である4代目が、日々焼酎が出荷される様子を見て涙を流す姿を見て、この蔵を終わらせるわけには行かないと心に思ったそうです。

伝統的な酒造りと手づくり製法

中村酒造場の1番のこだわりとしては、全量手づくりの麹を使用していること。
現在では安定して工事ができるように機械や熱源を使って造るのが一般的です。もちろんこちらも技術的に高いことではありますが
中村酒造場さんは焼酎蔵としては珍しく、全ての焼酎に使う米麹を機械を使わず人の手で造っていきます。(鹿児島では稀、全国的にも全量この造りは稀)

人の手で丁寧に手入れをされる米麹

手づくり製法の定義が実はあります。
・麹蓋、木の道具を用いる
・木でできた空間でつくる(麹室)
・自然の換気である
・人の手で混ぜる

換気設備ではなく、天窓を開けて換気や温度調節を行う。
木の扉
汚れではなく、長年扱ってきた黒麹菌が住みついている
だから麹がある高さより上しか黒くない
蔵の入り口
芋切り場とその奥が蒸留機
建物も木で作られているから独自の菌が住み着く空間になる

毎日この部屋で、麹蓋と呼ばれる米麹を入れる箱を280枚近く移して、夕方、夜と3回ほど手入れをしています。

手入れされている米麹と麹蓋

6代目:中村慎弥さんの想い

なぜこの造りを続けているかというと、先人たちの想いを途絶えさせたくない、紡いでいきたいというと、地元の魅力である焼酎の価値を上げたい、と強く仰っていました。
熱い方だなと、初めて会った時から尊敬していましたが、いろんな人の想いがあるから当然熱くなる、普通のこと当たり前のことだと責任を口にされており、自分たちのものづくりへの姿勢が伝わって、鹿児島の人たちに誇れるような産業や地域になっていければともおっしゃっていました。
本当にかっこいい…。

6代目杜氏の中村慎弥さんと
”なかむら”の米を作っている今村勉さん

6代目の新しい取り組みとしては、ここでしか表現できない味わいをつくること。冒頭に述べたように、設備さえあればできてしまうのが現代の技術や環境ですが、その中でここでしかできない取り組みとは何か。
手造りだからこそ、木の造り、自然の環境で造られていたからこそ、蔵に住み着いた独自の菌がいるのではないか。これを焼酎にできたらここでしかできない焼酎といえるのではないか!ということで造りを進めてきて、4年前に”amazing”シリーズとして、蔵付き麹菌、蔵付き酵母でつくった、この蔵の歴史を感じられる焼酎をここ数年は造られています。

蔵付きの麹菌でつくった米麹
黄麹が強いが、その中に白や黒の色とスペックがある

終わりに

まだまだ中村さんの熱い想いの1割に満たないレベルですが、毎回足を運ばせていただく度に、真摯にものづくり、焼酎造りをされており、その姿勢に魅了されます。
取り扱う側として、改めて大事に取り扱い、想いを繋いでいこうという気持ちになりますし
焼酎1本が本当に尊いものだなと思うので、飲み手としても大事に楽しみたいと思います。

玉露白:初代から造られている地元で流通している芋焼酎
本物だからこそ手の届きやすい価格で、という想いで造られている

芋焼酎は、安い、アルコールが強い、という世間の認知が強いですが
なぜその認知かというと、元々大衆酒である歴史、鹿児島が暑く蒸留(純度の高いアルコールにする)することで腐敗を防いだ背景がある。
更にいうと、元々自然の食材と菌で造られており、添加物が一切入っていない身体への負担が最も低いお酒といわれております。
更にそれぞれの蔵でこだわりがあるので、是非皆様も味わってみてください。

★手業のひととき

界 霧島のプログラムで蔵見学を伴うプライベートなプランがあります。
もし機会があればこちらの滞在がおすすめです。

手業のひとときとは:

伝統工芸の職人、日本酒の蔵元、芸術作家など、界がこれまで連携してきた地域のプロフェッショナルを招き、手仕事を披露してもらったり、わかりやすい解説でその文化の楽しみ方やルーツ知ることができます。職人技を支える道具や素材を見ることができるのも醍醐味です。
職人や生産者から丁寧なガイドを受けたり、会話ができるよう組数や人数を限定しています。打ち解けた雰囲気の中で体験ができるのでコミュニケーションが取りやすく、職人や生産者のライフスタイルや人となりを知ることができるのも魅力です。

星野リゾート

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