【蔵探訪】 #3 大山甚七商店 (本格焼酎、ジン)
こんにちは。
お酒が大好きで、霧島に転勤してからというもの、本格焼酎の面白さにどんどんとハマってしまった星野リゾート社員のはしもとです。
今回は【蔵探訪】として”大山甚七商店”を紹介させていただきます。
個人としては、2023年で一番衝撃を受けた焼酎がこの蔵の”宮ヶ浜aroma”という芋焼酎でして、香りの個性や華やかさの衝撃がすごく、一瞬で虜になりました。
(先日ワイン好きのお客様におすすめして飲んでもらったら、同じように衝撃を受けたようでその場で7本オンラインで注文した方もいました。笑)
「大山甚七商店」
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酒造:有限会社大山甚七商店
地域:鹿児島県指宿市
創業:1875年
代表銘柄:薩摩の誉、山大一、JIN7
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大山甚七商店は鹿児島県の左下、薩摩半島の先にある指宿に位置する焼酎蔵です。
創業は1875年(明治8年)。
現在の社長、大山洋平さんが6代目。
名前が”商店”というように、創業当初は焼酎の製造と販売と併せて呉服や綿など販売されていたことに由来します。
実は指宿とその先の枕崎というのは鎖国していた時代から薩摩藩の密貿易を行なっていた港であり、嗜好品を輸入しておりました。
日本にさつまいもが伝来したのが枕崎といわれており、芋焼酎の今はこの薩摩半島の港から始まっています。
海岸のすぐそばにあり、とっっっても良いところです。
芋焼酎造りの工程
・芋きり
蔵の外にある芋切り場。
こちらで1日2.5tの芋を人の手で見極めてトリミングしていきます。
炎天下の中で4人掛かりで2時間かかる大変な作業です。
・米麹造り
通称回転ドラムという機械で米麹をつくっていきます。
自動ではあるが、その中でも厳格な温度管理や知識が必要なため、蔵の中でも行えるのは2名のみ。
焼酎造りを行うのは夏。室内温度は46度…。
・一次仕込み
2階でつくった米麹をホースで1階に下ろしていきます。
和甕に水と米麹と酵母を入れて6日〜8日発酵していきます。
現在では和甕職人がおらず、割れたらもう作れないとても貴重なものです。
・二次仕込み
発酵させた一次醪に蒸したさつまいもいれて二次醪をつくっていきます。
この写真は”みちしずく”という芋。
大山甚七商店では色々な芋で芋焼酎を作っており
例えば
オレンジ色の”玉茜”という品種のさつまいもでつくるとオレンジ色の醪
紫色の”えい紫”という品種のさつまいもでつくると紫色の醪
と変わっていき、もちろん香りも全く異なります。
・蒸留
大山甚七商店では2種の蒸留機を使用しています。
主にステンレスの蒸留機は本格焼酎用、銅釜蒸留機はジン含めた他スピリッツと使い分けられますが、一部焼酎は銅釜蒸留機で蒸留されるものもあります。
銅を使うことで蒸留時に発生する硫黄成分を吸着することができ、より綺麗な香りを蒸留することができます。
蒸留後は油分もあります。
油分がありすぎると劣化につながるため、人の手ですくっていきます。
・熟成
蒸留後は基本的に半年以上寝かしてから出荷されます。
ものによっては数年後に香りのピークが上がってくるものもあり、タンクで寝かして熟成したり、貯蔵庫の樽に寝かすなど。
改めて一つの一つの工程に職人のこだわりや想いが入っており、それぞれの工程の分だけ掛け算式に変化していくのが本格焼酎の面白さ。
その中で鹿児島のハワイとも言われる他地域よりも暑い指宿の地。
改めて造りをされている蔵人の方には頭が上がりませんし、大事に大事に飲みたくなります。
大山甚七商店の銘柄
・薩摩の誉
大山甚七商店の代表銘柄。
1代目〜3代目は”富久泉”という名だったが、4代目〜現在は”薩摩の誉”と名を変えて出されている。
王道な芋焼酎で地元で広く愛されている銘柄。
・山大一
21年から6代目が新しく立ち上げた新ブランド。
蔵の名の”大山”と指宿の水平線の”一”を組み合わせた、蔵のシンボルマークのロゴに因んだブランド。
流通限定の希少酒が多く、紫芋で醸したもの、ブレンドしたものなど、一線を画す焼酎が多くあります。
・JIN7
現在の6代目が蔵に戻り、さまざまなこだわりを持つ蔵がある中で、今のままの焼酎造りでは将来難しい立場になってしまう、そんな中で2018年にスピリッツの免許を取ったのがはじめ。
地元指宿のもので酒造りをしたいと考え、指宿の生産者巡りをしていた時に、指宿に日本最古のハーブ園の開門山麓香料園に出会い、そこで栽培されている”芳楠”というハーブでジンを作ろうとなったのがきっかけ。
自分たちだけでなく、人との繋がりを大事にしたい、人とモノづくりをする、というスタンスでお酒造りをすると決めたきっかけのジンのブランド。
他にも冒頭で紹介した”宮ヶ浜aroma”や”アグリコール・ラム”、”カシス”などのお酒をつくられています。
終わりに
創業から150年ほどになる歴史のある蔵で、現在は焼酎の他にも他スピリッツも出されて、かなり人気の蔵になっていますが、平成6年から10年ほど焼酎の売り行きが伸び悩み焼酎造りを休業されていた歴史があります。
その際はコンビニの営業をされていたようです。
現在もそのコンビニは蔵の隣にあります。(因みに焼酎のラインナップは最高)
焼酎ブームのおかげで製造が再開でき、今日に至りますが、各地の文化や伝統産業がなくなってしまうところでした。
海外のものや、ブランド品、工業的な製品を悪いというわけではありませんが、日本の酒蔵や伝統産業がどんどん少なくなってきている現在、少しでも多くの方が国内の造り手に興味を持ってくれたらよいなと。
大山甚七商店のお酒が飲める宿
指宿の蔵である大山甚七商店のお酒も界 霧島では飲むことができます。
季節によっては会席料理と合わせる焼酎ペアリングのセットの中にもラインナップされていたりと、ご当地の食材とお楽しみいただけます。
界 霧島では、地域の造り手に感化されたスタッフが自信を持って紹介する焼酎を多数用意していますので、是非いらしてみてください!