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博士課程を出て、なにをしているの? いろいろなキャリアパスの話

「スキ」がつくことが多いので、ついついキャリアや大学院の話をここでしてしまっています。
アメリカで博士号(PhD)を得た私ですが、博士号をもらってなにができるの? と思う人は多いでしょう。年月や学費をかけるのですから、無理もない話です(究極は人生、損得などよりは情熱や直感、気持ちに従った方がいいと思っていますが、生活していく必要があるというのも現実ではあります)。典型的にみなさん、研究者になって大学教員になるという道を考えるのではないかと思います。
私もそれを考えていなくはなかったのです。が、一つやり損なったことがあり、それは大学院在学中に教える経験をしなかった、ということです。アメリカ大学院だとTA(Teaching Assistant)というシステムがあり、博士課程学生が教授の補講(TA sectionなどと呼ばれる)を担当します。こうして、教えることやクラスルーム・マネジメントを実地で学ぶ訳ですが、自分の大学でなければ外部の大学で講師(lecturer)などをするのも、方法ではあります。
結論から言うと教歴がないと、大学のポジションに応募する際圧倒的に不利になってしまいます。要求されない場合もありますが、教歴があることを前提としている(「望ましい」など)場合が多数だからです。また、応募書類にもその関連の項目が多数あります。
実は、TAのポジションに応募したことも何度かあったのですが、それぞれの教授のラボ(研究室)に優秀な学生がいるためでしょうか、一度もゲットできませんでした。実はラボに属さないまま修了してしまったのも、後から考えればもったいなかったな、と思っています。ちなみに、RA(Research Assistant)というのもありました。
TA をやらなかったことが響いていて(と、自分では信じていますが、業績の問題もあると思います)、いまだに大学のポジションにはご縁がないままです。加えて、私の専攻分野(臨床心理学)では、大学で教える際ほぼ臨床心理士と公認心理師を持っていることが要求され、海外から戻ってきたというイレギュラーなルートで来たため、片方(公認心理師-それも滑り込みでなんとか合格)しか持っていない私には、もし臨床心理学を教えるとすると少なくともあと一つのハードルがあると言えます。
それぞれの分野において、このような「どうやってプレイするか?」という、基本ルールを把握しておいた方がいいかと思います。そんなことを考えなくても、すーっとキャリアパスが開ける人もいますが・・・

さて、ではそんな私が今なにをやっているかと言うと、心理学の個人開業です。心理療法、カウンセリング、企業研修、ワークショップなどをやっています。もともと、アメリカで臨床心理士(Clinical Psychologist)になりたかったため、PhDを目指したので、そのときも個人開業(private practice)を志向していたので、基本ゴールは変わっていなかったとも言えます。
臨床心理学の博士課程から、研究職や教職を目指すこともできますが、もともとコアとしては実践(心理学プラクティス=臨床)を目指していたというのもあります。
もしかしたら単に気が多いだけで、研究や教えることはあまり考えず、臨床に専念してもいいのかもしれません。
博士課程を終えただけでは、(私は最終年のインターンシップをやっていないということもあり)、個人開業には足らないとも言えるのですが、いろいろ補える部分があってなんとかやってきているという感じです。
海外に10年くらいいたために、それと心理学をほぼほぼ英語で学んだことなどもあって、バイリンガルで臨床をしており、顧客(クライアント)にも外国人・移民の方々や、海外在住・海外経験のある日本人の方々が多いです。異文化経験がないとなかなか分かりにくい辺りをカバーしていると言えます。
また、企業研修については、今年になってやっと国内(日本企業や自治体など)の研修先が出てきたのですが、これまで数年は主に外資系の日本支社での日本語による研修(元のマテリアルは英語)が大半を占めていました。最近では外資系に出向く、企業内カウンセリングの仕事も加わっています。

専門分野によりますが、研究者・大学ルートでない場合でも、専門性を活かしてそれ以外のことをしようというような意気込みは必要かな、と思います。言うまでもなく大学はポストが空かないと難しく、公募をしていても後任が決まっている場合もあると聞きます(こうした不公平・不公正なやり方は辞めるべきだと思いますが)。たとえば執筆、著者になるという方法もありますし、自分の分野を活かした起業も大いにあり得ます。大学でなければ、短大、専門学校、高校、などの学校で教えるという手段もあります(免許がいる場合もありますが)。
そのために、キャリアはフレキシブルに、創造的に考える必要がありますし、キャリア構築の基本として、ネットワーキングも欠かせないのではないかと思います。「学者」というと内向的なイメージがありますが、そうとは限らないですし、内向的な人でもコミュニケーションをしたり人と関わっていく方法はあります。
内向性については、最近ホットな話題で本も出ていますから、チェックしてみるといいかと思います。
この話を読んで、「自分には無理だ」と思われる方もいるかもしれません。が、何事もやってみてから分かること、見えてくることがあり、私も修士時代はまさか自分が博士課程に行けるとか、博士号を取れるとかは信じていなかったのです。その意味、やはり旅に似ているというか、動いていけば見えてくる風景が違ってくる、と言えるかと思います(登山にたとえている人もいますね)。

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