なぜ夢のメッセージに耳を傾けることが大切なのか?
心理療法のオープンマインドです。
現在、心理療法士(サイコセラピスト)をしていますが、もともと大学では心理学専攻ではありませんでした。その大学時代に読んだ数少ない心理学関係の本の一冊が、故・河合隼雄の『無意識の構造』でした。何も知らなかった私にとって、こころの中には意識と無意識という領域があり、その間をエネルギーが循環しているという考え方は目からウロコでした。
しかし、そのときにはまさかその数年後に心理学の世界に足を踏み入れることになるとは、まったく思っていなかったのです。人生とは不思議なものです。
私は現在、ユング派ではないのですが、心理学の中でも関心を持ってきた領域の一つが夢です。それはなぜなのか? ということをずっと疑問に思ったまま、国際夢研究学会(IASD, International Association for the Study of Dream, www.asdreams.org)という学会にまで入って、20年以上、ずっと活動してきたのですが、最近読んでいた本の中にようやく「答え」とも言えるものを発見したのです。
それは、昨年亡くなられた、ポール・リップマン(Paul Lippmann)という、ニューヨークの精神分析家による本です。ホワイト研究所の訓練分析家でもあったリップマンは、夢を専門としておられました。実は学会的な場で、2度ほどお会いしたこともある方でした。
その著書、Nocturnesの中で彼は言います:「ある人たちにとっては、目覚めるということに何かを欠いているという拡散した感覚を伴うことが、重要になるのだ。そのような日常的に起こることが、失われた人生という全般的な感じの、無意識での根源の一つとして働くということを言いたい。失われた、欠けている、取り返しがつかないように「いない」人生での側面というのは、人間の経験に組み込まれているのだということを提唱したい」(翻訳:著者、Lippmann, P. (2000). Nocturnes. Hillsdale, NJ: Analytic Press., p. 214.)
ここを読んで、なぜかなるほど! と腑に落ちたのです。なにか失われた、あるいは欠けているものがあり、それを取り戻したいとか手に入れたいといった感覚から、夢を思い出したり記録したりすることに関心が向いていたのだと思います。
夢が、人の潜在的な可能性を伸ばすものであることは知っていました。前述のIASDにはそのような関心を持ち、活動をし、自身自己実現を遂げてきたような人たちがいっぱいいます。日頃、夢が忘れていたことや大事なことをリマインドしてくれることも知っていました。
が、もっと忘れ去られてしまっていたようなことを思い出したいとずっと思っていたため、夢に関心を払ってきたことが、突然分かったのです。
人によっては、夢など意味がない、ただのランダムなものだという人もい、そういう説を唱えている研究者や専門家もいます。一見、ランダムで意味がないように見えるイメージの連続から、意味を汲み取っていくことはしかし、その気になれば可能なのです。
決まり切った答えがあるというようなアプローチや思い込みでは、夢からのメッセージをくみ取ることはできないと言えるでしょう。夢は重層的・多層的であると言います。一つの意味、仮説のほかにいくつもの角度から見ることもできるのです。夢を見て、何年も経ってからあれはこういうことだったのだと分かることもあります。「予知」的な側面があったとしても、いわゆる当たる予知のようなようには行かないような形で、未来を語っていることもあるのが、夢なのだと思います。
未来予知はともかく、通常は現在起こっていて気になっていること、関心があること、現在の状況についてのコメントであることが多いように思います。また、近く・遠くの過去についての記憶と関連があることもあります。私たちが見過ごしてしまったり、忘れてしまったりしていることに目を向けるよう、やんわりと促すことによって、夢は私たちが自分を取り戻し、より大きく自由になるためのヒントを与えてくれるのだと思います。
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