【中学受験】渋谷教育学園幕張中学校(千葉県)について/中学入試最前線 3 理科・社会
渋谷教育学園幕張中学校(以後、渋谷幕張中学)の入試において、理科と社会は、各々75点ずつの配点があります。算数と国語の各100点ずつを合わせて、350点満点で評価されます。
自分が教えてきた経験から、算数・国語が合計で120点以上、理科・社会は、各50点以上をとらないと受からないように思います。
75点満点の50点ですから、66%の正答率が必要となるわけですが、この点数は、決して不可能な数字ではないです。しかしながら、実際の試験でとるのは、なかなか難しいです。
渋谷幕張中学の入試では、理科も社会も、ほとんどが記述がらみの問題です。
理科は、身の回りの現象を科学的に分析し、論理的に説明する問題が出されます。一般的な塾で行われているように、教材を丸暗記して、あとは計算問題ばかりをやっているのでは、30点をとることも難しいでしょう。
また、社会も、経済性を問う形の出題が多く、これを苦手と感じる生徒が多いのが実情です。
比較的、国語を得意とする生徒は、人間関係を中心とした情緒的な要素を読み取ることに長けている女子の比率が高いのですが、そのような生徒でも、原理原則を前提とし、それらを適用・応用しながら論述する必要のある科学的記述は、未知の分野だけに、対応できない場合が多いです。
社会科学にしても自然科学にしても、科学である以上、原理原則を重んじる精神が根底にあります。そのため、人の感情や想念などの情緒的・主観的要素は、極力排除しなければなりません。人の心や思いで、原理原則がコロコロ変わってしまっては、理論が成り立たないからです。
人は、目の前の現象や出来事などを、自己の偏見や思い込み、先入観で事実をねじまげて解釈してしまいがちです。
このような非科学的ともいえる物の見方は、子供のうちから、しっかりと教育しないと是正することは難しいです。
そのような科学的合理主義を教えるためにも、前述した「岩波新書などの論説文を四年生から読ませる」ことは、非常に有効です。
一般的な進学塾や予備校などでは、このような教育ができない事情があることは、以前もお話しましたが、これは、内容が難解すぎて、生徒たちが塾をやめると言い出さないようにしているからです。四年生の時に出てくる漢字以外が含まれている文章を読ませるようなことをすれば、たちまちのうちに父兄からのクレームがきてしまうのが実情です。
四年生までの漢字だけで構成された文章だけを読んでいたのでは、渋谷幕張中学の入試で要求される「科学的論述力」を養うことはできません。
以前、教えていた四年生の生徒に、齋藤孝先生の「読書力」(岩波新書)を視写することを夏休みの課題として出したことがあります。こちらも、どこまで書いてくるか楽しみにしていたのですが、なんと、400字詰め原稿用紙で70枚以上も書いてきました。さすがに、そこまでの枚数を真面目に書いてくることまでは想定していなかったので、大変に驚いた記憶があります。
そして、その生徒が「先生、『知識』という漢字、覚えちゃったよ」と、満面の笑みを浮かべながら自慢げに言うではないですか。これには本当に驚きました。こういう生徒は、将来が楽しみです。実際に、この生徒は、偏差値を30以上もあげて、中学受験に成功しました。
中学受験を契機として、一生使える読解力、論述力を身に付けてくれることが、講師をしていて、一番の醍醐味と言えるかもしれません。
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