桜の様な死に方を

貴方は理想の死に方を考えたことはあるだろうか。

私はとにかく美しく死にたい。
私のプライドでもあるし、成りたい姿でもある。
そして、迷惑をかけたくないというのもある。

学校から早退する帰り道、死に方を考えたことがある。

春の終わりかけの昼間。
いつも登下校に使うバスはいつだって桜並木を通る。

その日はもう既に桜が散り始めていた。
なんとなく最寄りのバス停に着く前に降りて、舞う桜の中を歩いてみた。

桜は、勿論咲いているときは美しい。
淡紅色に染まったちいさな花びらたちが、ひとつひとつ、誇らしく楽しそうに春風に吹かれている姿。

だが、桜は、散っているときも美しい。
淡紅色に慣れたちいさな花びらが、ひとつ、終わりなんて気にせずに春風に誘われて舞う姿。

私はこうありたいと確信した。
生き様も、死に様も、誰かが見蕩れる程に美しくありたいんだよ。

どんな服を着て、
どんな場所で、
どんな言葉を遺して、
どんな死に方で、
どれ程美しく成れるだろうか。

せめて死んだ姿くらい、美しくありたいなぁってさ。

闇に堕ちた儚く、痛々しい純白はパールホワイトのワンピースを纏う。
桜色のチークとリップが漂う。
朦朧の靄がかかって顔なんか見せないんだ。
人間のかたちをしているのに人形のようなあたたかさ。
酸素不足の蝋燭の火が消え去るように、いつの間にか灰になって星になる。

美しい余り、誰も傷つけない死に方を。
それが桜なのだ。

いつか、桜の様に死んでやる。

死に方に酖た真昼の極致こそ散り際までも美しい桜


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