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【詩のようなもの】二人連れお断り

客人は 不幸という名の二人連れ
ひとりよりふたりのほうが楽しいと
その言葉が宿主を凍らせる

ひとりなら ひとりだけなら
手厚く歓迎し 時が過ぎたら
土産を持たせて 帰らせただろう

今度訪ねて来る時は
かならず ひとりにしてくれと
かすかに 眉をつりあげ 頭を下げる

定員一名 一泊のみ
日の出とともに、お見送り
二人連れの不幸は 困惑顔で
コートの裾を翻し 辞していく

したり顔の 宿主は
二人連れにも 自分にも
降りかかるようにと
勢いよく 塩をまく
はらはらと 雪のように踊る塩

宿の戸は 閉じられた
静寂の時だけが知る
宿の厳粛な規則



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山河恩子(onshi)
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