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【#79】共闘せよ!

平成。

それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。

主人公・半蔵はんぞうは、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?

この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。

←前の話  第1話  目次


1999年(平成11年)6月7日【月】 
半蔵はんぞう 中学校1年生 13歳



「この建物に、いったい何があるのだ?」


僕の出席番号は、男子の7番。

リリーは、女子の7番。

 

4月、担任の先生に、

「お前ら、ペアだからな。服部、いろいろと日本のことを教えてやれよ」

と言われた。


 

実に面倒だ。

だが、どうせ1年間付き合うなら、楽しくやった方がいい。

そこで、僕はリリーと親睦を深めるため、ゲーセンに誘ったのだ。

 

「この建物には、すてきな機械がいっぱいあるんだ」

「よくわからんが、一緒に行く必要があるのか?」

 

無論、テスト期間中にゲーセンに行ったことが露見すれば怒られてしまう。

だが、一人より二人の方が、怒られるときの圧力も分散される。

リリーを誘った理由は、親睦を深めるためだけではない。

 


|クレイジータクシーをプレイしている人がいるじゃん!」

「なかなか軽快な音楽だな」


 


ダンスダンスレボリューションもあるな!」
「あの人は、機械の上で何をやっているんだ?」


【※】
 1998年9月から稼働した、コナミの音楽ゲーム。
 
 初めて目にしたこのゲームは抜群のインパクトがあった。

 筐体きょうたいが大きいためかなり人目を引くうえに、ステージが床から一段高くなっておりますます目立つ。
 そのため、人前で踊るには勇気が必要だった。

  『BUTTERFLY』は大人気であったが、小学生だった僕たちは英字で書かれた曲バナーなど誰も読めなかった。だから「アイヤイヤの曲」と呼んでいた。 


しかし、お目当てはこれらのゲームではない。


 

 

「あったあった」

 


『メタルスラッグX』
(SNK/1999年3月19日)

 
「なんだこれは」

「これは軍人が主人公のゲームだ。これなら、リリーも興味持てるかなって」


「この男が持っているハンドガンは、M1911か?」

「いや、そこまでは知らんけど・・・・・・」




質問をしたということは、興味を持ったのかもしれない。

僕は2プレイヤー側の椅子にリリーを座らせ、自分も1プレイヤー側に腰を下ろす。

 

「距離が近いぞ。不快だ」

「しょうがねーだろ。さっ、始めるぞ」

 

100円玉を2枚投入し、スタートボタンを押す。

  

『MISSION START!』

 

出典:youtube(下記リンク)
【Steam】メタルスラッグX 2人プレイ(Online - Coop) ノーミスALL【Metal Slug X】
配信者:うえおみあさん



「バカ!前に出すぎだ!」

「問題ない」

 

案の定、リリーが操作する女性キャラは敵に突っ込んでいく。

 

『ヘヴィィ・マスィンガン!!』


リリーのキャラが、武器アイテム『ヘビーマシンガン』を取得した。

攻撃範囲が広がったキャラクターは、止まることなく前進する。

 

「なかなか爽快なゲームではないか」

「気に入ったか?よし、そっちの『ヘビーマシンガン』は、僕にちょうだ・・・・・・」

 

『ヘヴィィ・マスィンガン!!』

 

「バカ!アイテムを独り占めするなよっ!」

 

当たり前のように僕を無視して、リリーは全力疾走で突き進む。

リリーのキャラがやられないよう、敵の戦車が出てくる場面では手榴弾を連投して切り抜ける。

 

『エネミィイ・チェイサァア!!』
『ラケッ・ランチャー!!』

 

リリーには、『人にアイテムを譲る』という発想がないらしい。

次々と武器を入れ替え、猛然と敵を蹴散らしていく。

 

「わかった。アイテムは全部やるよ、だが、少し先に出てくる味方の戦車は、僕にくれよ」!

「黙れ。私の方がうまく乗れる」

「おい!待てって!!」


出典:youtube(下記リンク)
【Steam】メタルスラッグX 2人プレイ(Online - Coop) ノーミスALL【Metal Slug X】
配信者:うえおみあさん

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

1面をクリアすることすらできなかった。

序盤、リリーが突っ込んでもやられなかったのは、ビギナーズラックだったのだ。

ボスになると、単なるゴリ押しは通じない。

 

「あのような重戦車に、歩兵2人が突っ込むのが悪いのだ。作戦から見直す必要がある」

「そういうゲームじゃないから・・・・・・」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

そのあとも少し遊び、僕たちはゲーセンを出た。

 

「楽しかったか?」

「よくわからない。ただ・・・・・・」

 

リリーは、僕から視線を外し、地面を見つめた。

 

「私が探しているものは、ここにもなかった」


普段は表情の変化を見せないリリー。
だが、このときの顔は――


(つづく)

 次の話→

 

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見出し画像は『ベルセルク』(5巻/三浦建太郎)です。

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