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"便利"がお母さんの時間を奪う【男性必読】

中学生の頃、国語で「矛盾」という漢文を学んだだろうか?

バトル漫画ばかり読んでいた私は、

「最強の盾と最強のほこが、ぶつかる!?スゲー戦いになるゾ!!」

と興奮した(←こんな男が国語教師になるとは)。



今回紹介する本も「矛盾」に満ちている。

『お母さんは忙しくなるばかり 家事労働とテクノロジーの社会史』だ。


『お母さんは忙しくなるばかり 家事労働とテクノロジーの社会史』
ルース・シュウォーツ コーワン (著)
高橋 雄造 (翻訳)
法政大学出版局


この本を一言で説明すると、

について書かれたものだ。

著者は3人の子を持つ”お母さん”である。
が、ただの”お母さん”ではない。
大学の教授で、専門は科学技術の社会史。
米国技術史学会の会長を務めた経験を持つスペシャリストだ。


著者のルース・シュウォーツ・コーワン
(表紙見返し)


【補足】
最初に、私の立ち位置を述べておく。

◆2児の
◆夫婦共働き(どちらもフルタイム


1.昔と今の比較



まず、1795年にある女性が書いた日記を紹介しよう。
1795年といえば、工業化される前の話だ。

女の仕事は終わらない。日暮れまで力が持つならば女は幸せだ

『お母さんは忙しくなるばかり』p41



1800年代になり、工業化が進みテクノロジーが発展した。
たとえば、既製の服の登場によって「裁縫によって服を作る」という作業はなくなった。

では、1795年から約100年経過した、1888年に女性が書いた手紙を見てみたい。

来る日も来る日も働きづめで、自分一人になれる時間は一分もない

同書p42

100年たっても、過酷であることは変わっていない。


1900年代、2000年代になってテクノロジーはさらに発展した。
ロボット掃除機、食洗機、乾燥機能つき洗濯機など、家電はさらに発達した。

では、そんな2024年現在の”お母さん”であるアロハ@在宅ワークを極める看護師さんのポストを見てみよう。

【補足】
ポスト内容はアロハさんの人生の充実ぶりを表したもの、とのことです!
アロハさんは、仕事と家事育児の両立のため40代で管理職を辞め法人を設立した大変前向きな方です。

つまり、1795年も1888年も2024年も”お母さん”が忙しいという状況は変わっていない。



2.楽になるどころか多忙化している



1910年に撮影された次の写真をご覧いただきたい。


『お母さんは忙しくなるばかり』に掲載されている写真
(ページ数の記載なし)


”お母さん”が、洗濯板とタライで服を洗っている。



一方、下の写真は我が家の洗濯機。


洗濯から乾燥まで一気にこなす。

「洗濯板+タライ」より「洗濯機」の方が圧倒的に便利そうに思える。
やはり「テクノロジーが”お母さん”を楽にした」と言えるのではないか。





しかし、著者は、全否定・・・する。

家事テクノロジーの進歩が家事を楽にしたとか(中略)、既婚婦人が職につきすいような影響をもたらしたとか、そんなことはないとわかった。

『お母さんは忙しくなるばかり』
日本版へのまえがき


そして、いかに”お母さん”が忙しくなっていったかの証拠を丁寧に挙げていく。
大学教授らしい論理的な説明を読むと「テクノロジーがお母さんを忙しくさせた」という話に納得してしまう。


3.本当に本当に”お母さん”は忙しくなるばかりか?



この本の原著『More Work For Mother』は1985年に刊行された。
約40年前の本なのだ。

そこで一つの疑問が生じるかもしれない。

2024年の今なら、テクノロジーが”お母さん”を楽にしたのでは?




これに対し、力強く「ノー」と言いたい。



テクノロジーが解決できない”名もなき家事”が存在するからだ。


以下は、1985年に刊行された本書が現代でも通じることを証明するための私見・・である。



4.”名もなき家事”


名もなき家事とは、

細かすぎて名前をつけることはできないが、実行しないと円滑な日常生活が送れなくなるもの。育児を含む。
誰かがやらなければいけない。

というものである。


例を挙げよう。

◆なくなった調味料を補充する
→買い物リストに次のストックを追加する
→買って来たものをしまう

◆幼稚園の保護者会の案内を受け取る
→読む
→予定を確認する
→出欠について書き込む
→子どもに持たせる

◆子どもの予防接種について「いつまでに」「何を」打たなければならないか把握する
→どこの病院で打つか決める
→問診票を書く
→嫌がる子どもを説得する

といったものだ。(これでも全体の0.5%くらい)


名もなき家事の一部をまとめた「くう🍀自由な5児母」さんの下記ポストは「約3.7万いいね」されている。

名もなき家事に追われる”お母さん”が多いからここまで反響が大きかったと言えるのではないか。




私、炎上覚悟で言います。





”お父さん”は家事スキルが低い人が多く、名もなき家事をこなせない。



無論、私も家事スキルが低い。
以下は、私が遂行できない名もなき家事の例だ。

◆服の補修ができない(ボタンすらつけられない)
◆娘の髪をかわいく・・・・結べない
◆子供の弁当を食べやすく・・・・・作れない
(食べやすく作らないと、子どもは食べない)


私が作ったミニおにぎり。
今ではもう少し上手に作れるが・・・・・・


私は結婚前、妻に、

「一人暮らしの経験は5年以上あるから家事はできるよ」

と言っていた。
漫画『ドラゴンボール』の天下一武道会で、孫悟空一行いっこうに勝利宣言する雑魚キャラのごとき”身の程知らず”であった。



このような”名もなき家事”は、現代のテクノロジーでもなくすことは難しい。






そもそも、”お父さん”は名もなき家事に気づけない。


※Xの投稿。
ご本人から、引用の許可を得ています。


「トイレットペーパーを替えない・芯を捨てない」”お父さん”に不満を抱く”お母さん”は多い(個人の感覚です)。

”お父さん”が気づけないので、”お母さん”がやる。

「〇〇をしてほしい」と”お母さん”が伝えても、名もなき家事は無数にあるので終わりがない。


もちろん、家族・夫婦のあり方は様々だ。
”お父さん”が意欲的に家事をする家庭もある。

noteの企画「#このレシピが好き」で2年連続受賞されたinfocusさんもその一人。
5人のお子さんを育てながら、高い料理スキルで弁当作りも行なっていらっしゃる。

⬇️infocusさんのポスト



だが「多くの”お父さん”は家事スキルが劣る」「”お母さん”が多く家事をこなす家庭の方が多い」というのが現実ではないだろうか。


(私見は以上で終わり)


5.お母さんが楽になる日は来るのか?



知り合い(2児の母)が、

「最近、筋トレしてるんだ~」

と私に言った。

「いつ筋トレしてるの?」と尋ねると、

「(公園で)ブランコを押してから返ってくるまでに1秒くらい時間がある。その間にスクワットしてるよ」


と言っていた。

「”お母さん”は1秒も惜しんでいないんだな」と本気で驚いた。



話を、書籍の『お母さんは忙しくなるばかり』に戻そう。

テクノロジーが発展しても”お母さん”は忙しいままだという現実。


だが、希望はある。


その希望は、終章に書いてあった。

私は重病で六ヶ月近くも寝込み、私がやっていた家事のいくらかを夫がやらなければならなくなった。
(中略)
彼が我が家の洗濯人になった。

『お母さんは忙しくなるばかり』p237


”お父さん”が洗濯をやらざるを得ない状況になったのだ。
しかし、この”お父さん”も家事スキルは低い。

洗濯物のルールを私は彼に何度も何度も辛抱強く教えた

同書p237


それでも、”お父さん”はルールを守れない。
繰り返し注意された”お父さん”は、

鋭い口調で(相当にひどい言い方であったのだが)、

同書p237


著者に反論し・・・・・・。その反論が、”お母さん”の労働を減らすための”気づき”につながる。


詳細は書籍本文に譲るが、夫婦で話し合うことが大切なのだと思った。



6.まとめ


「忙」という漢字の成り立ちは「(落ち着いた)心をくす」である。



”お母さん”が落ち着いた心を取り戻せるよう、この本の「終章」に書かれていることを実践したい。



――了――


⬆️2024年に発売された新装版です。

※本記事での引用はすべて旧版のものです。

※高価な本です。まずは図書館で手に取ってみることをオススメします。
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