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【#32】生活科という授業

平成。

それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。

主人公・半蔵はんぞうは、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?

この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。

←前の話  第1話  目次


1994年(平成6年)10月3日【月】
半蔵はんぞう  8歳 小学校(2年生)

 

「オッくんは、バッティングセンターかぁ!」

 

今日は、待ちに待った“おまつり”の日である。

優菜ちゃんが夏休みの時に言っていた“アレ”とは、生活科の授業の“おまつり”のことだった。


【※】
 1992年度から始まった小学校1・2年生の教科。それまで実施されていた1・2年生の「社会」と「理科」は廃止された。


 教師たち自身が受けたことのない教科であるため、始まった当初現場は混乱していた(何を、どのように教えればいいのか、わかりにくい)。
 
 生活科では、自然や人との関わり方を学んだりする。

 代表的な授業のひとつが”おまつり”だ。
 身近な物を使って遊んだり、店を開いて人と関わったりするのである。

 参考までに、下記に教科書を載せておく。 

 

『せいかつ[下] みんな ともだち』光村図書
平成26年2月21日検定済
著作者:森隆夫 嶋野道弘(ほか11名)


おまつりの様子はこちらのブログをご参考ください。



各自が作った“お店”を、この日だけ使える手作りのお金を払って楽しむのだ。

体育館には、ところせましとお店が広がっている。

 

「半蔵くん、遊んでいってよ!」

「うん!」


 

お店は、午前の部と午後の部で分かれる。

僕のお店は午後の部なので、午前中は遊びまわれるのだ。

 

「ストラーイク!」

 

むむ。

オッくんが投げる球(新聞紙で作られている)は、まっすぐではなく、ふわりと飛んでくる。

 打つのは難しく、バットにかすりもしない。


(やはり、イチローのようにはいかないな・・・・・・)

 

【※】
 日米で数々の大記録を残したイチローがブレイクしたのが1994年。
 当時20歳のイチローは130試合制でシーズン210本安打を放ち、日本新記録を達成した。

 

バッティングを後にした僕は、イイケンのところに向かう。

イイケンのお店は、「さかなつり」だった。


(↓おまつりの様子は、こちらのブログをご参考ください)


 

「魚の裏に点数が書いてあるからな。それを足し算していって」

 

イイケンがお客さんに説明している。

店の看板には、「つり 3分 200円」と書いてある。

 

【※】
 お金を払う、という設定は教育上重要である。
 お金の支払いや所持金の残額計算は、算数で学んだ知識を使う絶好の機会になるからだ。

 また、『残金を考慮しつつ、遊びたいものを遊ぶ』という思考の場にのもなる。

 

イイケンには悪いが、僕はスルーした。

お金を使うお店は、もう決めてある。

 

今日のおまつりは、体育館を貸し切って2年生全体でおこなわれている。

ふと顔を見上げると、今日も天井にボールがはさまっていた。

 


(いったい、誰がはさんだんだろうなぁ)

 

あのボールは、永遠に落ちてこないのだろうか?

まぁいい。

となりのクラスのお店も覗くとしよう。

 

 

(あっ、ゴメスじゃん)


保育園から一緒のゴメスは別のクラスになってしまったが、ちょくちょく遊んでいる。

どんなお店を用意したのだろう?

 

『おばけやしき 500円』

(↓イメージ画像)

 

 段ボールで作られたお化け屋敷はおもしろそうだが、500円は高い・・・・・・。

 

「誰も来ないゾ」

「き、きっとこれから行列ができるさ」

同情スルなら、金をクレ


【※】
 1994年にヒットしたドラマ『家なき子』のセリフ。

 『家なき子』は、恵まれない家庭環境の少女が様々な困難に立ち向かいながら生きていく物語。

 暴力的なシーンもあり評価は賛否両論あったが、不運な少女が必死で社会を生き抜こうとする姿に、多くの視聴者が惹きつけられた。
  最終回は視聴率37%を記録。

 

『家なき子』/日テレオンデマンド
出典:hulu

 

 逃げるようにゴメスのところを立ち去ると、やたら人が集まっている場所を見つけた。
 僕も気になり、近づいてみる。

 

「あっ!いらっしゃいませぇ!」

 

優菜ちゃんだ。

看板には、“ぬいぐるみショップ”ときれいな文字で書いてある。

 

「もう売り切れちゃったの?」

 

実は、優菜ちゃんに「ぬいぐるみ、買いに来てね」と言われていた。
しかし、ダンボールで作られたお店には、何も残っていない。

しまった、最初に来るべきだった。

優菜ちゃんには、ストⅡの映画のときお世話になったから、お礼に買ってあげたかったのに・・・・・・。

 

「大丈夫だよ。他の人に買われないように、とってあるの。半蔵くんようの、特別なぬいぐるみだよ」

 

優菜ちゃんは、そう言って、お店の裏側に回った。

 

なに!?

僕用の特別なぬいぐるみ??

 

魔法陣グルグルのニケとか?



衛藤 ヒロユキ『魔法陣グルグル』
1巻/表紙


 

 

「はい、どうぞ」

 

僕の前にあらわれたのは・・・・・・

 

 


 

 

黄色い三角形に目がついた謎の物体だった。

 



 「かわいいでしょ?ドンタコスのぬいぐるみだよ」
「そ、そうだね」



出典:湖池屋公式サイト

 

 

「♪ドンタコスったらドンタコスっ」

 【※】
 湖池屋から発売されたお菓子。
 独特の言い回しのcmは、一度聴くと頭にこびりつく。



優菜ちゃんは、腕をフリフリしながら歌っていた・・・・・・。

 

 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 さぁ、もうすぐ午前の部は終わりだ。
 午後から、僕の出番である。

 僕が用意したのは・・・・・・


 


(つづく)


次の話→

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