建築ビジュアルCG AI 活用法㉑~トライアル 一覧~
こんにちは。STUDIO55技術統括の入江です。
AI の登場により、ビジュアル制作にこれまでにないスピード感が求められる時代となりました。画像修正やレタッチ、動画制作・編集に至るまで、AI 機能によって誰もが手軽にビジュアルを扱えるようになり、いつの間にかそれが世間の常識となりつつあります。
SNS の普及により、ビジュアルが言葉を超えたコミュニケーションツールとなり、現代のビジュアルコンテンツには会話レベルのスピード感が求められています。その中で、AIを活用した手法が大きな注目を集めています。
本記事では『建築ビジュアルCG AI活用法』と題し、2024年に note で公開した研鑽を一覧としてまとめます。
生成AIのカテゴリ分け
第1回目となる「建築ビジュアル CG AI活用法」において、建築ビジュアルに活用できる「生成AIのカテゴリ」を挙げました。
先の内容に、⑤ テキストから画像生成 を加えた 5項目 に該当するテスト内容を、現段階の一覧としてまとめます。
① Sketch to Render
🔸スケッチや画像からイメージ生成
活用の筆頭として挙がるのが、アーティストが大まかなアイデアをスケッチする「コンセプト アート オーバーレイ」としての活用です。レンダリング代替としてAI生成でコンセプトを洗練させ、デザイン検討を高速化させます。
( テスト例 1 )
CGモデルの構成から、最終イメージを想定
( テスト例 2 )
CGモデルの構成から、最終イメージを想定
( テスト例 3 )
スケッチからコンセプトイメージを生成
🔸インテリア デザイン生成
空間レイアウトやスタイル反映など、空間デザイン分野において AI の実用的活用が進んでいます。海外では DIY が主流である背景から、インテリア関連業界では、家具の配置シミュレーションや販売に直結する実用的なサービスが数多く展開されています。
いわゆる AIによる「バーチャルステージング」は、消費者ニーズに応じた空間デザインの提案を可能にする、家具販売における新たなビジネスチャンスの創出が期待されるとして、日本でも大きな注目を集めています。
( テスト例 1 )
部屋にインテリアレイアウトをデザイン生成 (リビング)
( テスト例 2 )
部屋にインテリアイメージをデザイン生成 (寝室)
② AI Retouching
🔸インテリア変更(部分生成)
従来、家具などビジュアルの部分的なイメージを変更するには、3D アセットのモデリングやレイアウトの再構築が必要で、多くの手間がかかっていました。しかし、AI を活用することで、短時間でイメージを変更し、提案を視覚化することが可能になります。
特に家具販売などの営業シーンでは、その場でイメージを確認できる柔軟性が求められ、会話の中で迅速に対応するフットワークの軽さが重要です。このような需要に対して、AI は効果的な手法として活用が進んでいます。
( テスト例 1 )
センターテーブルの変更
( テスト例 2 )
観葉植物の変更
( テスト例 3 )
ラグマットの変更
🔸点景生成
ビジュアル制作において、点景(人物や小物など)の配置作業には、従来 Photoshop など画像編集ソフトを使用した手作業が必要でした。しかし、AI 機能を活用することで、背景に馴染ませる作業も必要なく点景を生成・配置できるようになります。
この技術により、クリエイティブなプロセスにより多くの時間を割けるようになるだけでなく、制作全体のスピードアップが期待されます。
( テスト例 1 )
空間に点景(人物)を生成
空間に点景(犬)を生成
🔸ファサード部分生成
ビジュアル制作において、店舗イメージや業態イメージの生成に AI を活用することで、新たな可能性が広がります。特に、マンション基壇部の商業店舗など、まだ具体的なテナントが決まっていない段階でも、AI を用いることで仮想的な店舗イメージを迅速かつ柔軟に作成できます。
この技術は、プロジェクト初期のプレゼンテーションや、関係者間のイメージ共有において大きな効果を発揮し、ビジュアル制作の効率化と説得力の向上に寄与します。
( テスト例 1 )
建築ファサードにショップを生成
🔸クォリティ強化
「Enhance(エンハンス)」によるクオリティの増幅は、ジェネレーティブAI の初期から注目されてきた活用法です。
従来、Photoshop 等のポストプロダクションで、エンハンス は画質クォリティを上げる レタッチ テクニック の1つとして知られますが、AIによる "エンハンス" は、それとは全く異なる次元の技術であり、人物などのクオリティを魔法のように飛躍的に高める驚異的な進化をもたらしました。
( テスト例 1 )
人物モデルのクォリティアップ
( テスト例 2 )
人物モデルを別人に変更して、さらにポージングをコントロール
( テスト例 3 )
既存ソフト(Lumion) のキャラクター強化
🔸季節の変更
日本の建築ビジュアライズにおいて、季節変更の要望は実制作でほとんど見られないものの、CG ワークフローにおいて AI を活用した時短技術は非常に効果的です。季節感のある表現を短時間で実現するその能力は、従来の手法では考えられない効率性をもたらす画期的な手法と言えます。
( テスト例 1 )
冬景色を生成
( テスト例 2 )
冬景色を生成
( テスト例 3 )
春の景色 から季節を変更
🔸時間変更
夕景や夜景の制作は、実案件でもよく求められる要素です。従来の CG ライティング設定を調整する作業に比べ、AI を活用した時間帯変更のプロセスは、格段に効率的で実用的な手法の一つとして注目されています。この技術により、制作時間の短縮と作業の簡略化が可能になり、より柔軟な対応が実現します。
( テスト例 1 )
昼景を夕景に変更
( テスト例 2 )
別背景にアレンジして夕景を生成
( テスト例 3 )
昼景を夜景に変換する技術は、非常に高度で難易度の高い分野の一つです。このプロセスでは、景観の一貫性を保つことが大きな課題となります。現在も、知人の海外アーティストをはじめ、世界各地で多くのクリエイターがこの挑戦に取り組み、さまざまな試みが進行中です。
③ AI 3D Modeling
AIを活用した 3Dモデル生成 の技術は、現在も着実に進化を遂げています。建築ビジュアルの実用レベルに到達するには、まだ時間が必要と感じられる部分もありますが、最近では 新たなAI技術を搭載した 3Dモデル生成AI が登場するなど、3Dモデル生成の技術の進展にも目覚ましいものがあります。この点については、改めて詳しくご紹介します。
🔸3DGS生成モデルによるUE5使用
昨年(2024年)の段階では、AI 3Dモデル生成 に先駆けて、注目すべき革命的技術「Gaussian Splatting(ガウス スプラッティング)」を取り上げました。この技術の進展は、3Dモデルの未来を大きく切り開く可能性を秘めています。
( テスト例 1 )
自動販売機とリサイクルボックスの 3DGSデータ を UE5シーンにアセット配置
🔸3DGS生成モデルによるAE動画編集
( テスト例 1 )
3DGS データを AfterEffects の動画素材として使用
④ Image to Video
🔸画像から映像生成
いわゆる「アニメーション アシスタンス」として 静的フレームに基づいてアニメーションを創造し、プロトタイプ作成ワークフローをAIで高速化します。
( テスト例 1 )
1枚の 2D画像から3D動画を生成
( テスト例 2 )
複数枚の静止画像から 複数の動画カットを 1本の動画としてノード生成
🔸ナレーションから動画生成
簡易的なナレーション動画を作成する際、使用する映像や画像の版権を気にすることなく、AI が生成した素材を選択するだけで、一本の動画を完成させることが可能です。このプロセスにより、制作の手間が大幅に削減され、誰でも手軽に動画を作成できる環境が整います。
( テスト例 1 )
ナレーションから動画を自動生成
⑤ Text to Image
🔸テキストから画像生成
当初は「生成AIのカテゴリ」に含まれるとは考えていませんでしたが、Flux.1 や ImageFX などのブレイクスルーにより、イメージテキストからリファレンス画像を活用する可能性が大いに期待できるようになりました。
( テスト例 1 )
テキスト から リファレンス イメージ生成
🔸テキストから360°画像生成
AI生成による360度パノラマ画像を活用し、環境デザイン向けのパノラマHDRIをCGソフトへシームレスにインポートする手法が実現しました。この技術により、日本的な景観を取り入れた実制作での借景として効果的に活用でき、ライティングへの実装も可能となります。
( テスト例 1 )
ComfyUI Flux を使用したパノラマ生成
3dsMax + V-Ray (Finite Dome light)
( テスト例 2 )
Skybox AI を使った 360°画像生成
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昨年の内容をいったん総括的にまとめましたが、気になる内容は、これまでリリースした記事内容からご覧いただければと思います。
この他、掲載こそ省いていますが、近年、多くの制作ソフトウェアに AI 機能が続々と組み込まれており、特に Adobe をはじめとする主要ツールでは、先行していた AI プラットフォームにおける技術がツールとして実装される傾向が見受けられます。
実務において AI 機能を活用することで、効率的なワークフローの構築が求められます。現代のスピード感に対応するため、AI の活用はもはや不可欠であり、それを使いこなすクリエイターのスキル向上とともに、制作フロー全体の進化が重要な課題となっています。
この1年でさらなる進化や新機能の追加がどこまで進むのか、大いに期待が高まります。