「絶対別れないなんて保証はない、だけどもし別れた時、その人にとって忘れられない女になっているよう努力してるんだ」 女友達に、こう話したことがある。 午前中、自分に用事がなくとも、彼氏が早く起きなきゃいけない時は、それより早く起きて朝食を作った。 勉強や仕事が辛い時は傍らで励まし、人間関係で悩んでいる時はゆっくり話を聞いて、いつだって味方でいた。 どんな時だってスキンシップは忘れないし、愛を伝えることも欠かさない。 ***** だが人の心は変えられない。 ずっと繋ぎ
タイトルは、 とある曲の歌詞 きっとこのふたつの一日は、 心臓の鼓動が聞こえそうなくらい ドキドキして、幸せだったあの日 心臓が張り裂けそうなくらい かなしくて、辛かったあの日 幸せと悲しみが 一つのフレーズに同居している なんだか、 この歌詞が頭から離れない 自分のことのように 遠い日の記憶が鮮明に蘇る ***** 初めて手を繋いだ日は 部活の帰り道 あたりはもう真っ暗 場所はテニスコートの横だった 自転車をひく私 両手が塞がってしまい 彼は手
「君は強いから、俺がいなくても一人で生きていける。」 そう別れを告げられたことがある。 16歳の、春だった。 「けれど、あの子は俺がいなくちゃダメなんだ。」 16歳の少女に、一人で生きていけるなんて、あんまりだ。 けれど私は妙に納得して、さようならを言った。 ***** 「ほんとにしっかりしているね。」 どれだけ年齢が上がっても、言われることは同じだった。 常に、中身と年齢が釣り合わない。 だから、お別れのセリフも大体似ている。 「君とは結婚したいけど、他の
「すごく懐かしい」 あなたがそう呟いた いくつもの季節を この街で過ごしてきたのだから たくさんの思い出があるにちがいない 何も言わずとも伝わる 今私の隣にいる人の心の中は きっととてもセンチメンタル 私のいない春は どんな春だったのだろう 聞いてはいけない気がして 「すごく、いい街だよね」 そう答えるのが精一杯 私との春は たった一度かもしれない けれど もしあなたが何年かあとに 平成が終わる頃のことを振り返ったとしたら この桜並木は 他の誰かとの思い
「俺たち、もう10年だぜ?」 そういって、はじめての彼氏が笑った。 気づいたら一緒にいて、気づいたら側にいなくて、気づいたら大人になっていた。 時は経ち、気づいたら母が私を産んだ歳になっていた。 10年前のあの時と同じ季節に、引き寄せられるように再会した。彼と会うと、青春真っ只中の当時に感じていたむず痒くて苦しい、純粋な乙女心が鮮明に蘇ってしまう。 側にいたのはほんの一瞬だったのに、離れていたこの10年間、彼は私の頭の片隅にずっと居座っていた。 ***** 私は高
時刻は午後七時をとうに過ぎていた ようやく仕事を終わらせ 寂れた商店街の中を歩く 屋根があるとは言えど 真冬の風が私の頬をさす マフラーに顔を埋めながら 明かりの灯る場所へと駆け寄った そこに君は立っていて 目があって、はっとした はじまりは、そんな冬のある日 ***** コンビニの温かい飲み物で 冷えた手を温めたあの日 もう随分昔からある 古い喫茶店の窓から 降る雪を眺めたあの日 ひとつひとつ 忘れたくない冬の記憶 ***** 近頃は 桜の開花
日が暮れていくのを 横目に見ながらふと考える 私が好きなのは たとえば、 豪華客船のクルージングに 招待してくれる人じゃなくて 公園のボートを一緒に漕いでくれる人だし 海外の美術館に 連れてってくれる人ではなくて 地元の海に沈む 美しい夕日を一緒に見てくれる人だし 廻らない寿司を ご馳走してくれる人じゃなくて 100円寿司を一貫ずつ 分け合って楽しんでくれる人だし 108本の薔薇の花束で プロポーズしてくれる人じゃなくて 毎年記念日に1輪の花をくれるような