冬に出会った君へ
時刻は午後七時をとうに過ぎていた
ようやく仕事を終わらせ
寂れた商店街の中を歩く
屋根があるとは言えど
真冬の風が私の頬をさす
マフラーに顔を埋めながら
明かりの灯る場所へと駆け寄った
そこに君は立っていて
目があって、はっとした
はじまりは、そんな冬のある日
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コンビニの温かい飲み物で
冷えた手を温めたあの日
もう随分昔からある
古い喫茶店の窓から
降る雪を眺めたあの日
ひとつひとつ
忘れたくない冬の記憶
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近頃は
桜の開花が
テレビで告げられるようになった
いつのまにか
季節はめぐり、春
まだ少し風は
ひんやりしているけれど
季節は
確実にすすんでいる
私たちも
前にすすめているのだろうか
なんてことを考えながら
素知らぬ顔して君の隣を歩いた
とある春の日の夜