良識をみじん切りに
「まず良識をみじん切りにします」という、二度見してしまいそうなタイトルの本と出会った。
図書館にて、司書の本日のおすすめと書かれたポップとともに、目立つところに置いてあり、手にとってみた。
ページをめくってみると、最初に「この本の美味しい召し上がり方」が書かれている。
良識をみじん切りにしたら、炒めて、フランベして…
え?どういうこと? と気になり、読んでみた。
五つのお話からなる短編集。
浅倉秋成さんの小説は初めてで、どんなテンションで読んだら良いのかわからなかったので、まずは真面目に読み始めた。
ふたつ目のお話を読み始めて、だんだん作者さんとのチューニングの合わせ方がわかってくるというか、読み方がつかめてきた。
そうすると、ある時を境に急に面白くなってきて、どこまで暴走するんだろうと話に夢中になった。
どのお話も、誰かに話したくなる破天荒なストーリーだと思った。
私は夫に話して、聞いてもらって満足した。
いつも小説を読むときは、この話は何を伝えたいんだろうと考えながら読んでいる。
「行列のできるクロワッサン」というお話は、真の幸せはどこにあるのかを考えさせられるように感じた。
みんなが欲しがって当たり前と思われているものがあり、みんながそれを得るために努力しているから、同じように追い求めてしまう。
苦しくても、みんなも同じ境遇にいることがわかると安心する。
でも、みんなが欲しがっているものが、本当に自分の欲しているものと同じだとは限らない。
まわりに左右されずに、自分の中の揺るがない幸せを見つけられるかが大事だと思った。
執着しすぎていると気がついた時、パッと手を放してみると、意外にあっさりと抜け出せるかもしれない。
*
最後のお話も、なかなか行き過ぎていたけれど面白かった。
新しい気付きを得たところ。
この本を読んで、現実にありそうでないような、不思議な領域に連れて行ってもらった感覚を得た。
良識をみじん切りにして料理して出来上がるもの(この本を読んで受け取るもの、感想)は、人それぞれ全然違うんだろうなと思った。