夜の向こうへ歩き続ける
年の瀬を迎えて、忘年会シーズンになった。
ほろ酔い気分で最寄駅に着き、夜風を浴びながら15分くらいかけて、自宅まで歩いて帰ることが多くなっている。
僕は歩きながら、色んなことをぐるぐると考える。
飲み会のために途中で切り上げてしまった仕事のこと、最近会えていない友だちのこと、今度の自分の年収のこと。
酔っているからちゃんと整理された思考はできなくて、それが理由かわからないけれど、いつも少しだけネガティブな気持ちになってしまう。
今が不幸せな訳ではない。
むしろ、幸せに生きていると思う。
家族も友だちもみんな元気で、趣味も楽しんでいて、仕事も楽しいし、私生活とのバランスもちゃんと取れている。
それなのに、夜ひとりで歩いていると、少しだけ物足りなさがまとわりついてくる。
自分が歩いているこの道は、正しい道なのだろうか。
昨日も忘年会で、同じ道を帰った。
例によって同じようなことを考えていると、ふと昔の方が物足りなくて寂しい気持ちが強かったことを思い出した。
特に印象的なのは、高校1年生の頃だ。
夕飯や風呂を終えて自室に入って1人で過ごす時間は、猛烈に寂しかった。
勉強をする気にはなれなくて、ラジオやCDをずっと聞いていた。
ただ、好きなラジオや音楽を聴いていても、何かが満たされる訳ではなかった。
それでもどうしたら良いのかがわからなくて、聴き続けていた。
真夜中、自分の部屋の小さなベランダに出て、よく空を見上げた。
星が見えるわけではないけれど、雲が流れていくのをじっと見つめていた。
そして毎回、アジカンのソルファというアルバムに入っている「夜の向こう」という曲が聴きたくなって、iPodを起動させてイヤフォンをしながら曲を聴いた。
この日々も、いつかに繋がるのだろうか。
明日はもう少しだけ良いことがあるだろうか。
布団の中に入ってからもそんなことをたくさん考えて、でもロックスターがこういう歌詞を書いてくれるなら大丈夫か、と自分を納得させて眠りについた。
10代のときに抱えていた、そんな不安な感触を思い出すと、よく自分はここまでやってこれたな、なんて思う。
太陽みたいな未来と言える自信はないし、間違えたり悔しかったりすることもたくさんあったけれど、泣きたくなるほど嬉しいことも、素晴らしいこともたくさんあった。
それは、あの時の高校1年生の僕が、投げ出さずに歩いてくれたお陰だからだろう。
長い坂道を歩き終えて家が見えてきた頃には、そんな風に思えていた。
15年前の自分に励まされたように、これからの自分を励ませるのは、今の自分しかいないんだと思う。
この夜の向こうには、きっと素晴らしい日々がある。
そこに向かうためには、今この瞬間を、僕が歩き続けるしかない。
夜の向こう / ASIAN KUNG-FU GENERATION
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