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ボードゲームは学びになるか(4)

前回、前々回と学びについて、論理的思考と経験則のスキーマについて考えてきました。今回はボードゲームにありうる学びの種類とその深さはどのくらいのものかについて考察してみたいと思います。

ゲームの難易度とはなんだろう

ボードゲームには難しいゲーム、簡単なゲームなどさまざまです。その難しさはどこからくるのでしょうか。ボードゲームの難易度を考える時にキーとなるのが基本能力とルド・ストラクチャーです。

まず基本能力について説明します。すごろくを例に考えてみましょう。すごろくを遊ぶのに最低限必要な能力とはなんでしょうか?サイコロを振ってその数だけ進むだけなのだから何の能力も必要ないだろうと感じる人もいるかもしれません。大人ならたしかにそうかもしれません。しかしすごろくを遊んだことのない3歳児にルールを説明して遊ばせようとすると、すごろくを遊ぶために以下のような基本能力が足りていない事に気づかされます。

  1. サイコロの目を数字に変換する

  2. 数字の分だけ自分のコマを進める

もっと年齢が低いと、サイコロを机からはみ出さずに投げる力加減、自分のコマをとってマス目にきちんと置く能力などなど、実に様々な基本能力が必要であることがわかります。もちろん上記の1、2の能力は、始めは親がサイコロの目を読み取ってあげて親がコマを進めてあげるなどすることで子供はそれを見ながら覚えることもできます。ボードゲームにおける教育者と学びの関係はのちほどお話するとして、ボードゲームの難易度を決める要素としてそのゲームに必要となる基本能力というものがあるということを押さえておきたいとおもいます。

ボードゲームの基本能力

さて、ボードゲームをプレイするための基本能力にはどのようなものがあるのでしょうか。実はそのような能力をまとめている人も論文も見たことはありません(もし知っている人がいたら教えてください)。

もし、あるゲームに必要な基本能力を駆使することがそのゲームの勝利につながり、かつプレイヤーが勝利を目指してゲームをプレイし続けたならばその基本能力は向上します。その意味では学びにつながると言えます。ただし前回のスキーマの話と関連しますが、その学びがそのゲーム内だけにつかえる能力にとどまるか、もっと一般的に使える学びにできるかは、すでにその人が習得している知識や技能と結び付けられるかによります。

例えばゲーム内に1,3,5の数字が書かれた3種類のカードが存在し、それらの数字を足し算をすることがゲームの勝利に近づくゲームがあったとします。そのゲームを何度もプレイすることで「1,3,5の数字の足し算」だげがたくみになるか、数字全般の足し算の能力が向上するかは、本人または教育者が「この考え方はこちらでも使える」と気づく(知識や技能を結び付ける)ことができるかどうかによって決まります。

ゲームの学びを一般化(応用)する

すでに習得している知識や技術と結び付けて、ゲームの中の学びを一般化する(他の場面でも応用できる学びにする)のに有効なのが教授者の誘導です。教授者といっても学校の先生のように「教えるぞ」と意気込む必要はありません。例えば数字を出して引き算するようなゲームがあれば「このゲームのこの部分さ、お買い物でお金を払う時に似てるね」と一言いうだけで知識がつながることもあります。

もちろん言われなくても本人がそれに気づいてスキーマを一般化できる子もいますが、教授者が一緒にゲームをプレイしてゲームの中の学びを一般化できるヒントをたくさん与えることができれば、よりボードゲームの学びを生活に応用することができるでしょう。ゲームによって、そのゲームで身につく基本能力が一般化しやすいものと、一般化しにくいものとがあるのでボードゲームで何かを学ばせたいと考える人がいたなら、そのゲームによってどのような能力が育まれうるか、その能力をどうやって一般化するかを考えるのがよいかもしれません。

さて、そのゲームをプレイするのに必要な基本能力を備えていてルール通りにプレイできたとしても、プレイしてみると簡単と感じるゲームと難しいと感じるゲームとがあります。ゲームの難しさとは何でしょうか。

今回はこの辺にして、ゲームの難易度についてはルド・ストラクチャーと絡めて次回お話したいと思います。

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