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『風のアンダースタディ』(鈴木美紀子氏)を読む。

『風のアンダースタディ』(鈴木美紀子氏)を読んだ。




本について

書肆侃侃房による
新鋭短歌シリーズ34である。

「アンダースタディ」は英語で代役の意。

※語義が広いため、詳細をご覧になりたい方はwikipediaのリンクをご覧ください。



五首選

こぼれゆく日々にひかりをあてたくてこの身くぐらす白いワンピース

16ページ

服を着ると、内側は暗くなる。

しかしこの短歌では、「白いワンピース」なので、白い光で体を包むイメージだろうか。

「これはあなたの物語です」と帯にある本は今でも読みかけのまま

32ページ

「読みかけ」という途中さが、人生が途中であることを暗喩していて上手い。

鉤括弧が目を引く。

かさぶたの色の葉っぱが剝がされてひりりとひかる秋の空あり

71ページ

秋の空の独特の雰囲気が、工夫のある喩で綺麗に表現されている一首。

「かさぶた色の葉っぱ」という発見が活きている。

伝書鳩の味がしたんだほろほろときみを想って食む鳩サブレー

106ページ

鳩サブレーの鳩の形という視覚と、ほろほろとしたサブレーの食感という触覚と味覚を存分に活用した一首。

感覚的な良さだけではなく、題材の素朴さと上手な喩も見どころ。

さくらにも運命はありあんぱんのへそにすわってしっとりと咲く

128ページ

さくらあんぱんも、さくらの運命としては珍しいかもしれない。

へそにすわるという言い回しの面白さがある。

ひらがなでしっとり詠まれている点が、内容に合っている。


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