【完璧主義に潜む6つの罠と対策法】メンタルから仕事・睡眠の悪化まで
「完璧主義」。その定義は、「完璧さを求めて執拗に努力し、自分や他人に非現実的なほど高い基準を設ける考え方」といったところ。
「完璧」というとなんだかいいアイデアのように思えるけれど、完璧を追い求めることがその人を追い込んだり、むしろ目標達成すら妨げてしまうことにつながるってのは皆さまご存じの通り。
しかし、ここ20年くらいでは、順位や成績、勝利、自分の利益の追求が重視され、SNS等で理想の生活に容易にアクセスできるようになった結果として、完璧主義者が急増しているのもまた事実。最近では「成功」とか「失敗」を測る基準が多すぎるってわけっすね。
そんなところで今回は、「完璧主義に潜む6つの罠」ってテーマで、「完璧主義になるとこんなところまで弊害が出るぞ!」って研究を6つほど紹介しておきたいと思いまーす。
1. 完璧主義になると性格はこう変化していく
完璧主義がメンタルにやばい!ってのは最もよく聞く話の一つ。完璧主義とストレス、うつ、摂食障害、自殺等との関連は多くの研究で示されていて、不安障害やPTSDの症状にまで影響する!(R)ってなことも報告されていたりします。
そんな中で2019年のメタ分析(R)では、完璧主義者の性格をより深く理解するため、77の先行研究に含まれた約25,000人分のデータを分析したんだそうな。参加者の約3分の2は女性で、年齢は15~49歳までの人が含まれたらしい。
早速その結論をざっくりまとめてみると、
1990年以降、完璧主義者が大幅に増加していた
完璧主義者は年齢を重ねるにつれて、より神経症傾向が強まり(罪悪感、嫉妬、不安などのネガティブな感情を抱きやすくなる)、誠実性が下がっていく(整理整頓、効率性、信頼性、規律を失っていく)傾向が見られた
また、男女の完璧主義者のレベルはほとんど同じだった
みたいになります。つまり、完璧主義者は時間がたつにつれてより不安定になり、勤勉さが失われ、人生がハードモードになってしまうかもってわけですね。また、現代のジェンダーロールでは男女ともに完璧を目指す傾向があって、完璧主義の増加は性格特有のプレッシャーによるものではないんだ、と。
こんな状況だと、現時点では自分に完璧主義の気質がなくても、周囲の完璧主義が知らぬ間に伝染する可能性もありますんで、
非現実的な完璧の追求よりも、努力と規律を重視し、失敗を許容し、失敗から学ぶ
っていう姿勢は常に意識しといたほうがよさそうっすねー。
2. 完璧主義は「むちゃ食い」のリスクも引き上げる?
上記に続いて、こちら(R)も完璧主義とメンタル関連のメタ分析です。こっちの研究における問題意識は、
完璧主義の人が過食症(いわゆる「むちゃ食い」)になりやすいっていうけど本当なの?
って感じでして、過食症の根本的な原因として、完璧主義のような性格特性が関係しているんじゃないの?と。神経性過食症になる人の割合は人口の中でも結構多いし、症状の消失までには8年以上かかる、うつや自殺等にも関連するってデータもあるんで、決して他人事じゃないし、重大な問題だといえるでしょうな。
これはダルハウジー大学などの研究で、
完璧主義と神経性過食症の関係について調べた過去12件の縦断的研究を分析
参加者の多くは女性(86.8%)で、平均年齢は19歳だった
みたいになってまして、結果は以下の通りです。
ベースラインの神経性過食症レベルを調整した後でも、完璧主義の傾向が強い人は、過食症になる確率が高かった
時間がたつにつれて、完璧主義者が過食症になるリスクは高くなっていった
ということで、完璧主義はやはり摂食障害とも関連がありそうって感じ。
まあ完璧主義者がプレッシャーとか自己批判から一時的な逃避を目的として暴飲暴食のような過食症的な行動に及ぶってのは想像に難くないですよねぇ。
3. 完璧主義がアルコールの問題も誘発する?
3つ目の飲食関連の研究(R)で、まずは結論から言ってしまうと、
一部の完璧主義に限り、アルコール関連の問題を引き起こすかも?
のようになります。人間の性格はほとんど変わらない!ってのが通説ですが、アルコールを飲んだ場合には話は別。お酒を飲むと同じ日でも別人のような性格になる場合があるってのは経験的にもよくわかるでしょう。
今回の研究では、
対象はハリファックス、モントリオールの18~25歳の成人263人
全員には、21日間にわたって1日1回、完璧主義、感情状態、飲酒動機、アルコールによる問題に関する質問票に回答してもらった
ってな調査を実施したらしい。アルコールの問題ってのには、「責任を放棄する」「けんかをする」「愚かなリスクを冒す」「人間関係を傷つける」といったポイントが含まれたそう。さらに、完璧主義の中でもどんな側面が関係しているのか?ってことまでチェックしたみたい。
で、その結論はこんな感じです。
自分の不完全な行動を見られることを強く気にする人は、ネガティブな気分が引き金となってアルコール問題を体験しやすかった
だったそう。つまり、「人前で失敗するのが怖い」「人前で馬鹿をするのは重大な問題だ」ってな文章に同意する人は、
恥、悲しみ、怒りといったネガティブな感情を感じやすい
そして、それらの感情を強く嫌い、早く対処しなければと思ったり、社会的な拒絶を最小限に抑えようと思ったりする
結果、アルコール問題が発生!
っていうメカニズムで、完璧主義が間接的にアルコール問題を予測することになっていたみたい。
もっとも、この研究を解釈するにはいくつか注意が必要で、
「常に完璧でありたい」といった完璧主義的認知はアルコール問題との間に関連がなかった
また、問題を抱えやすい完璧主義者であっても、必ずしも大量のアルコールを飲むというわけでもなかった
といったことも確認されたそう。
要するに、「自分ならもっとできるはず!」っていう前向きなタイプの完璧主義者よりも、「失敗してはいけない!」っていうマイナスをひどく嫌うタイプの完璧主義者に限って、(少量の飲酒であっても)ブラックアウト、欠勤、喧嘩といった問題を起こしやすいんだ、と。
これらの問題は、一夜で人生に大きくマイナスの影響を与える可能性すらありますんで、心当たりがある場合には、早めに対処しておきたいところですね。
4. 完璧主義は睡眠の質まで下げるらしいぞ!
不安や心配が睡眠の質を低下させる!って話は昔からあるわけですが、2019年の研究(R)では、「完璧主義に由来する不安が睡眠に悪影響を及ぼすんじゃないの?」ってことを調べてくれております。
これがどんな研究かといいますと、
対象は平均年齢15.0歳の中国の若者1,664人
全員の完璧主義、睡眠の質、反復的なネガティブ思考との関連について統計的に分析する
みたいになってて、「反復的なネガティブ思考」としては「心配(未来志向の不安)」と「反芻(過去志向の不安)」が利用されたらしい。でもってその結果は、
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