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宮本武蔵はこう戦った

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#WEB小説

武蔵の微笑み(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵の微笑み(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵は思い悩んでいたのだった。

小次郎に勝てるという自信がなかった。

今まで数々の試合をこなしたが、全て勝つことが出来た。

己の思うままに体を動かせば、難なく相手を倒すことが出来た。

そこには、剣法も理合いも必要としない。

己に宿る野生のままに向かえば、容易に相手を倒すことが出来た。

体の奥から沸き起こる炎で相手を包み込んでしまえばそれでよかった。

戦う前に勝負は、すでに決まっている

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たそがれ(『天国へ届け、この歌を』より)

たそがれ(『天国へ届け、この歌を』より)

帰りの地下鉄は、混み合う。

特に淀屋橋から梅田方面に行こうとすると、京阪の乗り換え等で降りる人より、乗り込む人の方が圧倒的に多い。

充分に混んでいるところに、無理やり入り込まなくてはいけない。

たまに、座れそうな席がある車両が来るが、それは、中津行きか新大阪行きである。降りる駅はその先である。乗り換えが面倒なのでそれには乗らない。

いつも、先頭から2両目の2番目の出入り口に乗るようにしてい

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天の啓示(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

天の啓示(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵は、小舟に乗り込むと、真ん中の粗末な敷物が敷かれた席に腰を据えた。

そして、船頭を見やり、目で出すように促した。

船頭はそれには返答せず、おもむろに立ち上がり、櫂(かい:舟をこぐ道具)を手繰り寄せた。

船頭は片腕がなかった。

右手の肘の二寸ほど先がなかった。

粗末な身なり船頭なのだが、明らかに、それは切り合いで、切り落とされた跡と見受けられる。

かつては、足軽として、戦に出ていたの

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己を信じろ!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

己を信じろ!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

佐々木小次郎は、武蔵が自分の間合いに入る紙一重の時に、頭上に振りかぶっている備前長光を振り下ろした。

一拍子といえども、ほんの僅かながら時間がかかる。

しかし、武蔵は燕よりも遅い。

突進してきている武蔵ほどの速さであれば、切先が武蔵の頭上に達する時には間合いを一寸五分ほど超えており、充分に斬ることが出来る。

小次郎は充分に確信を持って斬り下ろした。

切先は見事に、下げている武蔵の頭上を捉

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武蔵が斬られた!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵が斬られた!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

全力で砂の上を走る。

見る間に小次郎に迫る。

小次郎の顔が眼前に立ちはだかる。

どうした!

小次郎は、微動だにしない。

小次郎の太刀は大上段、頭上のまま。

動かない。

燕返しの前触れである横に払う太刀の動きがない。

なぜだ?

相手の間合いに入る寸前。そこで躊躇は出来ぬ。

勢いのまま、前に出る。

目の前が小次郎の顔で一杯になった。

ハッ!

頭上に、稲妻。

斬られる!

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異形のサムライ(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

異形のサムライ(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

父、無二斎より、小倉藩の権力争いのごたごたを収める意味も含めて、「佐々木小次郎」なる剣術師範と試合をしてくれと懇願された時も、さほど気にも留めていなかった。

政治ににかかわる垢じみた剣術家など、いつものように一蹴してやればよいと思っていた。

しかし、見てしまった。

佐々木小次郎の使う剣を。

その存在自体を見てしまった。

それは、今までに見たことのない存在。

自分の範疇の中に入らない存在

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海を見つめる武蔵(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

海を見つめる武蔵(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵は海を見ている。

日の出から随分時間が経った。陽が昇って頭上近くになろうとしているのに、その間じっと海面を見つめている。

光が交差して、宝石のように輝いて武蔵の顔に反射している。

それでも武蔵の表情は変わらない。目を見開いたまま海面を見つめている。

視線の先は、様々な曲面を描いて、絶えず揺れ動いている海面に向けられている。桟橋に腰をおろしたまま、用意されている小舟に乗ろうとしないのだ。

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勝負あり!(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より

勝負あり!(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より

 一刀両断、斬り下ろす。

むぅ、手応えがない。

突進してきた武蔵が急に身体をのけ反らせ、砂の中に沈み込むようにしてかわした。

一太刀で仕留めることが出来なかった。

しかし、小次郎には、まだ心に余裕があった。

武蔵は、小次郎の間合いに踏み込んで入っているが、彼が打ち込むことが出来る間合いには入っていないからだ。

愛刀長光は三尺三寸、武蔵の木刀はせいぜい二尺五寸もあるまい。

一足分の距離

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