No.435 嬉しいような、悲しいような…。
地方新聞社の文化教室「古典講座」の講師を始めて、早くも8年が経とうとしています。
「初心者向けの肩肘張らぬ古典の学び直し」
「素顔が見えて、体温を感じる古典のお話」
という文言に、向上心・向学心のある善男善女が集い、楽しい時間が流れていきます。
初回からずっと出席している私と同年齢の女性が、ある日のアンケートに
「自分が学び続けている姿を、子どもや孫たちに見ておいてもらいたいと思って…。」
と講座に参加する理由を書いてくれました。「幾つになっても学び続けるお婆ちゃん」像は、子にも孫にも鮮やかな印象を残していることでしょう。有言実行のその姿に感動させられているのは御家族だけではありません。
「老後をどう生きるか?」「何を残せるのか?」は、昭和20年代に産声を上げた私たちには大きな課題です。この女性のように、「自分が生前贈与できるものとして、その生き方で示したい」とする心意気と実践に、大いに学びたいと思います。
さて、過日の講座で「老いるショック」な事ばかりが幅を利かせる中にあって、むしろ「老人になってよかったことは何ですか?」と質問したら、
①自由な時間が過ごせる。潤沢に時間がある。毎日サンデーでもある。
②仕事上の責任や家庭の悩みが少なくなり、肩の荷が軽くなった。
③念願の余暇や趣味に勤しむことが出来るようになった。
④年金を受け取れるようになったことが有り難い。
⑤「歳のせい」にして言い訳できるようになった。
⑥医療費の負担が軽減されるようになった。
⑦高齢者対象の様々なサービスの恩恵に与れるようになった。
等々、まんざらでもない意見が続出しました。なってみなければ分からないこともありそうです。
ところで、内閣府が高齢者に対して「生きがいを感じる時」の調査をしています。一部抄出になりますが、男性と女性の感じ方が対照的で興味が持たれたので紹介します。「あなたにとって、生き甲斐を感じる時は?」
A.孫など家族と団らんの時
男性 37,5% 女性 49,0%
B.仕事に打ち込んでいる時
男性 41,5% 女性 24,3%
C.趣味やスポーツに集中している時
男性 35,3% 女性 32,1%
D.友人知人と食事、雑談している時
男性 20,3% 女性 34,8%
E.夫婦団らんの時
男性 30,7% 女性 22,3%
男性は「夫婦団らんの時」を生きがいに考える人が3割を越えます。一方、
女性は「友人知人と食事や雑談」を生きがいとする人々が3割5分近くいます。これは、想像できたこととは言え、かなり顕著な結果(違い)のようです。男性が家庭におりがちなのに対して、女性は積極的に外出する姿が浮かびます。
我が講座も例外ではなく、7割が女性です。そして、講座の後の食事やお茶を楽しみにしておられるグループもあり、講師に声を掛けないのが、長続きの秘訣のようです。それはそれで、嬉しいような悲しいような…です。