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歳時記を旅する16〔水馬〕前*水馬一歩一歩に水つかむ

土生 重次
(平成九年作、『刻』)

 日本に現存する最古の生物学書、貝原益軒『大和本草』(一七〇九年)にアメンボは、「水黽」の項に「本草ニ出タリ有毒ト云リ水馬トモ云水上ニウカヒ游フ身長ク〇四足アリ足ナカシ後足最長シ畿内ニテ〇ウリト云筑紫ニテアメタカト云其臭糖ノ如シ鷄犬食ヘハ死ス」と記されている。

ここではアメンボは水馬と言われていたことがわかる。

アメンボの名の由来は、臭いが「糖の如シ」で、また体が細く棒のようなので飴棒といわれたことによるという。

水をつかむ足は、それぞれ役割があり、中足でボートのオールのように使って推進して、後足で舵のように使って獲物に近づき、前足で獲物を抑えて食べる。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』「風の軌跡―重次俳句の系譜」令和三年七月号)

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