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選評*寒き夜や柩に紙の六文銭

寒き夜や柩に紙の六文銭 岡田 耕

(前略)同時作の「寒き夜や柩に紙の六文銭」は通夜の景と思われるが、死者があの世へ渡る三途の川の渡し賃に紙の六文銭を持たせたと言う。
今でもそんな風習が残っているのかと驚かされたが、仕来りとは言え作者も半信半疑で、まして紙の六文銭ではたちまちバレて、よりひどい目に合うのではと、密かに思う薄ら寒い気持ちを淡々と季語の「寒き夜」に託した句も心に残る。
こういう句を読むとつくづくと俳句とは自分史を刻み残すことだと思う。

俳句雑誌『風友』令和六年五月号「―風紋集・緑風集選評ー風の宿」磯村光生

(岡田 耕)

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