句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(8・最終回)
*これまでの記事
・句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(1)【スキ御礼】
・句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(2)
・句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(3)【スキ御礼】
・句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(4)【スキ御礼】
・句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(5)【スキ御礼】
・句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(6)【スキ御礼】
・句集鑑賞 磯村光生『千枚田』(7)
一方で、人間と人間の関係では、僅か二句であるが自然詠とは対照的に屹然とした姿勢が際立っている。
己が決む己が定年とろろ汁「春の雲」
声にせぬ一語を抱き枯野道「ダムに沈む村」
この句集は、縦軸に花を中心とする自然詠と、横軸に千枚田やダムに沈む村などの人間の営みに関する社会詠を編みこんだ織物のように、豊かな色合いと自然な風合いを味わえる作品に仕上がった。
(完)
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』平成二十二年十一月号「磯村光生句集『千枚田』鑑賞」)