勉強も仕事も、最短ルートで成果を出すための「マップ」の作り方
20年以上「学習塾」の業界にいて、気づいたことがあります。
それは「難関大学に合格するコツは、仕事にも使えるのではないか?」ということです。
この気づきは、私の人生を大きく変えました。
私はもともと、手取り17万円ほどの、ふつうの塾の先生でした。教える仕事は好きでしたが、ずっとこのまま働くのも不安。かといって、大きな夢や野望も特にありませんでした。
しかしその後、起業して学習塾や社会人向けの英語コーチングサービスを立ちあげ、関東・関西に複数展開するグループにまで成長させることができました。
それは、難関大学に合格した生徒が実践していた「あるコツ」を仕事にも活用したからです。
そのコツとは、目標を実現するための「マップ」を描くこと。
マップを描くことさえできれば、成果が出ない勉強をしたり、ムダな業務をしたりして後悔することは劇的に減ります。
だれでも楽に成果を出しやすくなる。
マップを描くために、特別なスキルは必要ありません。紙とペンを用意して、2時間ほど机に向かってマップを描く。そうすれば人生は大きく変わるんです。
今回はそんなとっておきの「マップの描き方」を紹介します。キャリアや仕事に悩んでいる人は、だまされたと思ってぜひ一度試してみてください。
みんなすでに「マップ」を描いている
勉強や仕事で「マップを描く」というと、イメージが湧きにくいかもしれません。
だけど日々の生活のなかで、みなさんはすでに「マップ」を描いています。
たとえば「通勤」。家からオフィスまで、どのルートで行けばいちばん早く着くかを考えることは、実はまさに「マップを描くこと」そのものなんです。
マップを描く手順をざっくり分けると、以下の4ステップになります。
現在地を知る
目標を決める
課題を分解する
いちばん楽な方法を選ぶ
現在地を知って(=家)、目標を決め(=オフィス)、課題を分解する(=徒歩だと1時間もかかるから、乗り物を使う必要がある)。グーグルマップで調べると、いろんなルートを出してくれますよね。自転車なのかバスなのか、電車なのか。
そのなかで、いちばん楽な方法を選ぶ(=山手線の電車に乗ろう!)。
図にまとめるとこんなイメージです。
こうやって通勤のマップを描くことは、みなさん無意識にやっているんです。これと同じ手順を踏めば、勉強や仕事のマップも完成します。
「通勤と仕事は、さすがに別物では…?」と思う方もいるかもしれません。
オフィスまでのマップは簡単に描けるのに、勉強や仕事のマップを描こうとした瞬間、何から手をつけていいのかわからなくる。
その原因は単なる「難しいという思いこみ」だと、私は思っています。
「家からオフィスまでのマップを描くこと」と「勉強や仕事で成果を出すためのマップを描くこと」は、実はとても似ているんです。
マップをどれだけクオリティ高く描けるかどうかで、勉強や仕事の効率は大きく変わります。
ではそれぞれのステップについて、細かく解説していきます。
1.現在地を知る
勉強でも仕事でも、まずは「現在地」を知ることが大切です。そうしないと目標に対して「どんな勉強をすべきか」「どんなスキルを身につけるべきか」が分かりません。
通勤のルートを調べるときも、まずは「自分の家はどこか」を把握しないといけませんよね。
勉強や仕事のマップを描くにあたって、現在地を知るとは「いまの自分の実力を知る」ということ。
「勉強」で現在地を知る方法のひとつに「模試を受ける」があります。たとえば数学の模試を受けて、結果を分析することで「自分は微分と積分が苦手なんだな」といった実力が、ある程度わかります。
図にすると、ひとまず「現在地」だけが描かれている状態です。
「仕事」の現在地を知るとは「自分は何が得意で、どんなことが苦手なのか?」を把握すること。「営業は苦手だけど、資料をまとめると褒められることが多いな」みたいな感じです。
2.目標を決める
現在地を把握したあとは、目標を決めます。
「目標を決めるなんて、これまでもやってきたよ」と思う方もいるかもしれません。
しかし私からすると、多くの人の目標は「ボンヤリしすぎ」だと思います。
たとえば私は英語コーチングサービスを始めるとき、目標を決めるために「いい英語教育とは?」を私なりに定義しました。そこで「英語力を無駄なく最短で身につけられるもの」と決めて、マップを描いていったんです。
それまで塾講師をやっていて、勉強を教えることは得意でした。だから「現在地」にはそれを記入しました。図にまとめると、ひとまず「目標」と「現在地」だけがわかっている状態です。
目標がボンヤリしているとは、このときの目標が「いい英語教育を提供する」ぐらいで止まっている人が多いことを指しています。
もちろん目標に正解はありません。「いい英語教育とは?」の定義は、別に「TOEICのスコアを全員700点以上にする」とか何でもいいんです。
大切なのは「目標を明確に定義すること」。
そうしないと、途中で「あっちのやり方もいいな」「こっちのやり方もいいんじゃないか」とフラフラして、結局どこにもたどり着けなくなってしまいます。
3.課題を分解する
マップを描くプロセスは、ここがいちばん大切です。
「現在地を知る」と「目標を決める」は、けっこうできている人が多いんです。だけど「課題を分解する」になった途端、マップが雑になってしまう人がすごく多い。
すると現在地から目標までのルートが一本道にならず、途中で途切れてしまうんです。
私はこれを「ミッシングリンクがある状態」と呼んでいます。
ミッシングリンクとは、論理のつながりが飛んでしまっている箇所のこと。たとえば「年収1,000万円を稼ぐために、東大へ行く」というマップだと、ミッシングリンクがあるのでダメです。東大へ行けば、自然と1,000万稼げるわけではないからです。
「東大へ行く」から「1,000万稼ぐ」の間には、たとえばこういったルートが考えられます。
東大へ行く
→給料の高い会社に就職する
→成果を出してマネージャーになる
→大きなプロジェクトに取り組んで成功する
→出世して給料が上がる
→1,000万稼ぐ
現在地を「勉強が得意」にして、こちらも図にまとめてみました。
ちなみにですが、こちらも先ほどの「目標」と同じく、全員にとって共通の正解があるわけではありません。ルートも人それぞれです。
大切なのは、課題を分解した結果「現在地から目標までのルートに、ミッシングリンクがないこと」です。
現代文の点数が爆上がりした教え子
塾の先生をやっていたころ、ミッシングリンクのないマップを描いたことで、現代文の点数が一気に上がった教え子のお話をします。
その子は第一志望の大学に落ちて、浪人していました。
苦手科目は「現代文」。現役のときに受けたセンター試験では、100点中50点ぐらいしかありませんでした。ここを克服できれば、偏差値を大きく上げることができる。
私たちは、まず「大学入試の現代文」を分解しました。すると現代文に出てくる文章のジャンルは「人文系」が多いと気づきました。文化や思想のお話です。逆に金融や医療、時事問題などはあまり出てきません。
よく出てくるジャンルの「背景知識」と「単語」を知っておくと、文章は一気に読みやすくなります。
現代文が苦手な子の多くは「論理がわかりません」と言います。だけど入試で採用されるような文章に、論理自体が難しい文章なんて出てきません。
ちゃんとプロの書き手や先生が書いた、わかりやすい論理の文章が選ばれています。にもかかわらず読めないのは「背景や言葉の知識が足りないから」なんです。
知識をつけるだけで、現代文の偏差値が20もアップ
たとえば、文化論というジャンルのひとつに「自然と人間の関係性」にまつわる議論があります。
その知識を頭に入れたうえで文化論の現代文を読むと、一気にスラスラと読めるようになります。「いま著者が話しているのは、西洋のことだな」とか「この著者は、これまでの一般的な考え方とは逆のことを言おうとしているな」というポジションを整理しながら読めるからです。
また「単語」を知るだけでも、文章は格段に読みやすくなります。
現代文の入試には「なんとなく聞いたことはあるけど、意味を正確には知らない単語」がたくさん出てきます。それによって、論理はすごくシンプルなのに急に読みにくくなったように感じるのです。
たとえば入試には「人間には自由意志があるので、あらゆる行為に責任を持つべきだ」という文章が出てきたりします。これって論理的には「今日は雨が降っているので、傘をもって外に出るべきだ」と同じぐらいシンプルなんです。
だけど「自由意志」という単語の理解がボンヤリしているせいで、文章全体の理解がボンヤリとしてしまう。
そこで私は、現代文に出てくる文化や思想の代表的な「背景知識」と「単語」を伝えました。模試や小テストの振り返りをするとき、単に答えを言うだけでなく「この文章は、こういう背景知識をもとに書かれているんだよ」「この単語は、こういう意味なんだよ」と解説したんです。
その結果、現代文が苦手だった彼は、現役のとき5割しかとれなかったセンターで8割もとれるようになりました。そして偏差値を20以上も上げることに成功したんです。
もし「偏差値を上げたいから、現代文をがんばる」ぐらいミッシングリンクだらけのマップだったら、彼は何冊も問題集を解かないといけなかったり、他の教科を勉強する時間がなくなったりしたはず。
現代文が苦手
→よく出るジャンルの背景知識と単語をおさえる
→文章が読みやすくなる
→現代文の点数が上がる
→偏差値が劇的に上がる
ここまで課題を分解してミッシングリンクをなくしたからこそ、彼は偏差値を20もアップさせることができました。
4.いちばん楽な方法を選ぶ
これがマップを描くための最後のステップです。課題を分解したら、それをクリアする方法を考えます。
すると、いくつかの方法が候補として出てくるでしょう。そのなかから「いちばん楽な方法」を選んで実行していきます。
「楽な方法」とは「手持ちの武器を使えるもの」です。
たとえば、うちは集客のためにオウンドメディア『スタディーハッカー』を運営しています。私たちが「勉強のノウハウ」と「東大生・京大がたくさんいる」という武器を持っていて、いちばん効率的に目標を達成できそうだなと判断したからでした。
私たちの目標は「無駄なく最短で身につけられる英語教育を浸透させること」。
そのためには東京だけでなく、日本各地の主要都市にまでスタジオを展開する必要がある。1店舗だけでなくいろんな店舗で同時に集客していくなら、チラシではなくインターネットを使った方法にしなければいけない。
そう考えたとき、当時の私たちが持っていた武器と照らしあわせると「勉強のノウハウや自己啓発などの記事を、東大生や京大生に書いてもらうオウンドメディアを作ろう。そうすれば、日本各地の学習意欲の高い社会人に見てもらえるのでは?」という仮説に至ったのです。
ここまでのマップを図にまとめてみました。
「東大生・京大生がいる」「勉強のノウハウがある」の武器を活用した、いちばん楽な方法として「勉強法や自己啓発を発信するオウンドメディアをやる」を選ぶまでです。
いまスタディーハッカーは、月間400万PVを超える大型のメディアとして集客に貢献してくれています。
これがもし、手持ちの武器を使わず「広告をたくさん出して集客しよう」といった方法を選んでいたら、もっとお金や時間がかかってしまっていたと思います。
「行動」に落とし込めているか?
ここまでわかったら、一度ざっくりとマップを作ってみましょう。で、それを見ながら「本当に描ききれているのか?」をチェックしていきます。
具体的に見るポイントはこの2つ。
①目標から現在地までに、ミッシングリンクはないか?
②最終的な「行動」にまで落とし込めているか?
すべての要素が論理的につながっていれば、それはミッシングリンクのない、いいマップです。
もうひとつの「行動に落とし込む」とは、どういうことか。
たとえば先ほどのオウンドメディア「スタディーハッカー」の場合は、最終的に「週20本の記事を出すこと」という行動にまで落としこみました。
メディアそのものの目標は「サービスの集客につながるよう、たくさんのPVを稼ぐメディアにすること」でした。しかし「PVが伸びること」は「行動」ではありませんよね。
私たちが直接的にコントロールできるのは「行動」だけです。マップを「行動」にまで落とし込むことで、目標を達成する確率を上げることができます。
仮に「1記事のPV」が低くても、毎週20本も出しつづけていけば、メディア全体のPVは増えていきます。また「反響がある記事」「ない記事」のデータもたくさん溜まってくるので、少しずつ精度を上げていくことができる。
結果的に記事のクオリティは少しずつ上がり、メディアのPVも増えてきました。
だからこそ、スタディーハッカーは成長することができたのです。
「週20本の記事を出す」の行動にまで落とし込んだ完成版のマップはこちら。
マップは途中で変わることもある
マップを描いて実行しはじめたら、定期的に「点検」してください。マップは途中で変わることもあります。
私の場合は、いつも右耳の後ろあたりに「マップ」が映し出されているイメージです。新しい意思決定をして状況が変わるたびに「本当にこのルートでいいのかな?」と検討しています。
その結果、そもそも「登る山」自体を変えたほうがいい場合もあります。
たとえば、先ほどのオウンドメディア「スタディーハッカー」は、もともと「予備校の生徒を集客するため」に立ちあげました。でも、しばらく運営してみると「予備校の生徒の集客は、インターネットとの相性が悪い」と分かってきたんです。
予備校の集客でいちばん大切なのは「家から通える範囲にあること」でした。どれだけネットで情報を発信して知ってもらっても、遠ければ来てもらえないのです。
そこで思いきって方向性を変えて「社会人向けのメディア」にすることにしました。もうすぐ社会人向けのサービスをリリースする予定だったので、そっちの集客につなげることにしたんです。
「学生の集客」から「社会人の集客」へと、登る山そのものを変えたんですよね。
もっとたくさんの人に、楽に成果を出してほしい
私は「がんばること」が苦手です。
だからこそ「どうすれば楽に成果を出すことができるのか?」を考えつづけてきました。英語コーチングのサービスをつくるとき、目標を「無駄なく最短で身につけられる英語教育を浸透させる」としたのは、私と同じようにがんばることが苦手な人でも、英語力が伸びるようにしたい思いがあったからです。
そのため、私たちの英語コーチングサービスの特徴も「専属のコンサルタントと一緒に、最初にしっかりとマップを作ること」となっています。まずは丁寧に英語力を診断して、現在地を知る。受講者さんの目標をヒアリングしたうえで、その人にカスタマイズしたトレーニングメニューを作ります。
その結果、独学に比べて「最大3.8倍」の成果が出るようになりました。
そしてこのマップの考え方を「仕事」にも転用することで、事業を成長させることができました。
「マップ」の描き方を知ることで、もっと多くの人に楽に成果を出してほしい。
そんな思いから、今回このnoteをまとめてみました。ひとりでも多くの方の参考になるとうれしいです。
今後も、日々の仕事で気づいた「楽に成果を出せるノウハウや考え方」を、Twitterやnoteにてどんどん発信していこうと思います。
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