追憶。人生最大の爆笑をさらったハロウィン
1997年10月。私たちは数ヶ月前から心を決めていた。
ハロウィン仮装大会で優勝を勝ち取ることを。
ミナミのアメ村にあった某有名DJ主催の伝説の英会話教室。
私は2年ほどそこに通い、英語とエンターテインメントの大切さを学んだ。
授業より大切な一大イベント。
ハロウィン仮装大会は、淀川河川敷で行われるのだ。
毎年工夫を凝らしたコスチュームで彩られる河川敷。
当然、川の上を通る電車からは誰でも閲覧可能状態だ。
週末ごとに作りこみ、大会当日朝7時までかかってようやく完成した仮装は、見た目それなりの完成度だったので、私たちは自信を深め、小道具の小型カセットデッキ、シャネルズの「ランナウェイ」が繰り返し録音されたカセットテープを装てんし、顔を黒塗りして河川敷をゆっくりと歩き出した。
と言っても私は両肩を固定されているため、ぎこちない。
我々が丹精込めて作った衣装は、
物まね四天王ビジーフォーの十八番、人形ダンスだ。
(YouTube Takashi Shirabayashiさんの動画をお借りしました)
カセットテープ再生、音声最大。音が割れているのは、ご愛敬。
「🎵ランナウェ〜イ、(ランナウェイ)
とってもす〜きさ〜(ランナウェ、エ〜イ)🎶」
音楽に反応した仮装参加者たちが一斉にこちらを振り向く。
一瞬唖然とし、数秒後、河川敷は拍手喝采と大爆笑に包まれた。
やった。とうとう。
私たちの努力は報われたのだ。
夜なべして衣装作った甲斐があった。
続く運動会。みんな仮装のまま、パン食い競争などで全力疾走。
両肩を固定されている私は、横向きにしか走れない。
その滑稽さが、また爆笑を呼ぶ。
次々に「写真撮ってください!」とアイドル並みの人気にご満悦だった。
「お前ら、おもろすぎるわ!」という捨て台詞も最大の賞賛だ。
みんなの盛り上がりを見て、我々は、優勝を確信した。
もらった。優勝はいただきだ。
しかし、見えないところに落とし穴はある。
我々は、衣装製作の段階で重大なことを見落としていた。
それは、審査員だ。
絶対盛り上げる!を至上命題に突き進んでいたのだが、
審査員は、英会話の先生たち。外国人である。
そう、
彼らは、ビジーフォーのモノマネを知らなかったのだ。
なぜ我々がこの仮装をしているのか?
なぜみんなが異常に盛り上がってるのか、わからないのだ。
そして結果発表。
優勝は、一人でびっくりドンキーのような廃墟を河川敷に作り上げた男子に与えられた。我々の落胆がどれほどのものだったか、ここに書くまでもないだろう。
見た目にわかりやすく落ち込んでいると、ギャラリーから大きなブーイングがあがった。その声に推されて、我々は、当初設定されてなかった、審査員特別賞を獲得した。優勝賞品は、記念写真のテレフォンカード↓↓
(まんなかで背中に棒が突き刺さっているのが私。両横は人形。)
努力は、報われる。
どこかで、頑張った過程を見てくれている。
河川敷に響いた万雷の拍手を生涯忘れることはないだろう。