日本的経営における「三種の神器」とは何か?
「終身雇用」「年功制」「企業別組合」の3つを指します。
米経営学者、ジェームズ・C.アベグレン氏が提唱しましたが、具体的にそれぞれどういうものでしょうか?
戦後日本の企業経営を支えた「三種の神器」はどう生まれた?
この3つが注目されたのは、戦後の高度経済成長期からバブル期までの目覚ましい日本企業の発展があったからです。
戦後日本は焼け野原の中で終戦を迎えました。激しいインフレ、全ての物資が不足する中で、諸外国が欲しいと思う物はなかなか作れませんでした。そこで政府は「国内で生産できるものは国内で」「国内で生産できないものは輸入で」という方針を取りました。
次々と新しい工場を建て、生産力を急増させ、経済を活性化させていきました。同時に、企業経営においても状況に適した合理的な人材活用システムが必要となり、生み出したのがこの3つでした。具体的に見てみましょう。
まず、戦後日本では事業成長に必要な人材を確保し、活用することが不可欠です。そのため、長期雇用を前提として新卒社員を採用して定年まで雇用することに決めました。これが「終身雇用」です。
定年まで人材を雇用すると決めれば、今後はどう人材を評価して育成していくかを検討する必要が出てきます。そこで最もシンプルな入社年次を基本として役職・報酬等を決めていく方式を取りました。これが「年功序列」です。
ただ、人材を長い間雇用し続けると、当然ながら労使問題がたびたび発生します。企業も従業員も個別に調整を進めると、お互いが疲弊するばかりです。この調整を担ってくれるのが「企業別組合」なのです。
このように日本的経営における「三種の神器」は、戦後日本が再び立ち上がるためには、非常に合理的な要素でした。 結果、優秀な人材が揃い、長期にわたって安定して働き、一致団結して企業の成長を支えることができたのです。
バブル崩壊、グローバル競争激化、少子高齢化、市場の縮小――現在、日本的経営の変革が迫られている
「三種の神器」は当初、日本の経済成長に大いに貢献しました。しかし、現在では状況が変わり、これらの要素が以前と同様に機能しにくい状況にあります。
バブル経済の崩壊とともに、日本も世界のグローバル競争にさらされました。特に、かつて優れていた大量生産の優位性は、新興国の成長によって次第に奪われるようになりました。
さらに、国内でも少子高齢化や市場の縮小により、人材コストが経営にとって重い負担となっています。
こうした状況を受けて、近年では「三種の神器」が以前ほど重要視されなくなっています。もちろん、今も一部の領域では有効であることはありますが、変革が必要な側面も多く存在します。
昨今では急速なテクノロジーの進化によって、企業経営そのものも変わろうとしています。こうした変化の中で、日本的経営をどのように進化させていくべきなのか。この問題は我々一人ひとりが改めて向き合うべきテーマでしょう。
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