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エンゲージメントスコアが低い...それって困っているのは人事だけでは?

人的資本の情報開示が進む中で、人事も全社のエンゲージメントスコアを気にするようになりました。

「○○部門のスコアが低いぞ」「どうしてなんだ!?」と焦って、スコアを下げた犯人探しを始めることも。

でも、現場の社員にとっては迷惑な話かもしれません。

なぜなら、現場の人間にとっては、スコアの高低よりも、もっと他に解決してほしい問題があるからです。



エンゲージメントスコアが低いと何が問題?問題設定を見誤る人事


昨今、エンゲージメント向上は多くの企業が目指す目標の一つになりました。人的資本の情報開示が義務付けられたこともあって、そのスコアを公開する企業も増えています。

この流れに伴って、人事はエンゲージメントスコアに一喜一憂することになります。

「○○部門のスコアが他の部門より低いぞ」「このスコアの低さは何が原因なんだ!?」「研修を実施したのに、前月とスコアが変わらないぞ」

このように、人事は日々エンゲージメントスコアを上げることばかりに明け暮れます。

しかし、ふと立ち止まって考えてみてください。

スコアの低さが問題なのでしょうか。そもそも、エンゲージメントスコアの低さに、現場は頭を悩ませているのでしょうか。

それよりも、現場ではもっと深刻な問題が起きているかもしれません。


エンゲージメントスコアの低さの原因は、構造的に引き起こされている!?


人事は問題の捉え方に注意を払うべきです。

エンゲージメントスコアが低いことは、人事にとって頭を抱えるほどの難題です。しかし、現場にはそのスコアの高低以上に深刻な問題が潜んでいます。例えば、仕事が忙しすぎて手が回らない、上司とのコミュニケーションがうまくいかない、キャリアアップの機会が見えないなどです。

これらの要因が複合的に絡み合い、スコアに反映されている可能性があります。「問題は構造的に起きている」ということを捉える必要性があるということです。

にもかかわらず、表面的な問題だけを捉えて解決しようとしても、状況は改善されません。

「いやいや、我が社はエンゲージメント向上研修を行ったことで、スコアが上がったんだ。効果はあったぞ」と言うかもしれません。確かに、研修によって認知や意識が変わることもあります。

しかし、その裏に「人事がエンゲージメントスコアを上げろ!とうるさく言うから、スコアを高めにつけておこう」と、本音で語らなくなっている可能性もあるのではないでしょうか。

現場の問題を浮き彫りにするはずの仕掛けのはずが、いつの間にか、人事のアリバイづくりのための道具になっていることもしばしばあるのです。

こうした事態を避けるために、人事がなすべきことは一つです。

エンゲージメントスコアに影響を与える要因を考え、トップダウンで施策を打ち出すのではなく、まずは現場に足を運び、従業員の声に耳を傾けることです。一人ひとりの悩みや不安を丁寧に聞き取り、何が従業員のやりがいにつながっているのか、一方で、何が不満に感じさせているのかを深く理解することが大切です。


大切なのは、今、何が問題になっているのかを見極めること


ただし、現場に足を運ぶ際には注意が必要です。それは「現場との接し方において、その自律性を失わせないようにする」ということです。

人事が現場に入り込むと、想像を超えるさまざまな問題に直面します。例えば、「AさんとBさんの関係が良くないが、どうしたらよいか」「休みがちな社員がいる。どうにかしてほしい」「Cさんがなかなか成長しない。人事として何をしてくれるのか」などです。このように、人間関係、メンタルヘルス、人材育成など、多岐にわたる問題に向き合うことになり、その多さに圧倒されるかもしれません。

ただ、人事の仕事に就く人は、「人の役に立ちたい!」という想いを少なからず持っています。そのため、現場に寄り添い、頑張って解決しようと身を粉にして向き合ってしまうのです。結果として、現場の自律性を育むどころか、奪ってしまうという事態が起こります。人事頼みの現場になってしまうと、本末転倒です。

ここで危険なのは、社外からの囁きです。頭を抱えているときに、ふと、こんな連絡が届きます。

「少しでも現場の大変さを解決するために、〇〇というシステムを導入してみませんか?」「組織として対応しきれないでしょう。HRBP機能を一緒に作りませんか。そのために研修を…」

人組織に関わる問題は、複雑で、さまざまな解釈ができるものばかりです。そのため、何かの問題を解決しようとすると、その周辺の問題も多数噴出し、思考を奪われてしまいます。結果、本来解決すべき問題への意識がそがれ、目につく問題ばかりを解決しようと躍起になってしまうことも。こうならないためにも、問題を見失わないことが大切です。

さて、ここまでエンゲージメント向上に関する問題を扱いましたが、一歩深めていくと、複雑で構造的な側面が見えてきたと思います。人事はこうした特性を有する問題を扱っていることを肝に銘じ、表層的な数字に踊らされることなく、深層的な問題に向き合うことが大切です。そのためにも、現場の声に耳を傾け、距離感を大切にしながら、課題解決にあたることが重要です。


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