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人事評価の「聞いてないよ!」を減らすために何をする?

「こんな評価、聞いてない!」
「上司は何を見ているんだ?」

人事として全社の評価を取りまとめていると、評価シーズンになるたびにこうした声を耳にすることは少なくありません。

上司と部下がお互い納得感のある評価結果を実現するために、人事は事前に現場に対して何を伝えるべきなのでしょうか?


大前提として、「どうやるか?」ではなく「何を必ずやるか?」をそろえる


評価は、単なる業務の一部ではなく、組織の成長やメンバーのキャリア形成に直結する重要な取り組みです。

だからこそ、人事として評価者全員に伝えたいのは、「どうやるか?」(How)という手法の議論よりも前に、「何を必ずやるか?」(What)という共通認識を持つことの重要性です。

評価の納得感を高めるために、「伝え方を工夫する」「フィードバックの頻度を増やす」といったテクニック論がよく議論されます。もちろん、それらも大切です。しかし、多くのケースを見ていると、そもそもの「やるべきこと」が十分に実行されていないことが、評価への不満や組織の成長を妨げる原因になっています。

例えば、定期的な面談や進捗の共有が後回しになってしまうことはありませんか?

評価者も日々の業務に追われている中で、つい優先順位を下げてしまいがちです。その気持ちはよく理解できます。正直なところ、私自身も「今は忙しいから後でやろう」と思ってしまうことがあります。

しかし、こうした「やるべきこと」が抜け落ちてしまうと、評価の仕組みそのものが機能しなくなります。評価は単なる業務の一環ではなく、メンバーの成長を支える仕組みです。

まずは「何を必ずやるか?」をそろえ、確実に実行できるように人事として向き合うことが大事だと考えます。


ポイント① 人事評価はなるべく早く、小まめに行う


以前、勤務していた企業では、期末にまとめて評価結果を出すことが多くありました。

まだメンバーだった時代には、評価結果を戻されるたびに「早く言ってほしい!」と感じることがしばしば。

逆に自分が評価者になったときは、思いがけないメンバーからの反応を受け、「ああ、もっと早くフィードバックをしておけばよかった…」と後悔した経験があります。

これは私だけでなく、多くの現場で見られる問題だと思います。特に上司や部下が新しくなった際には、早期にお互いの評価基準を共有し、評価の精度を高めることが重要だと考えます。

個人的なおすすめは、最初の四半期が終わるタイミングで必ずテスト的な評価を行うことです。可能であれば、評価プロセスの中にも盛り込んでおくと良いと思います。

早めにフィードバックを提供しておくと、「ここは改善が必要だ」というポイントを早期に見つけることができ、改善のチャンスが生まれます。

ポイント② 評価はどこまで具体的に記録できるか勝負


評価を行う際、重要なのは「事実」と「解釈」をしっかり分けて記録することです。そして、その「事実」をお互いがしっかり認識していることが大事です。

自分のことは棚に上げて、よくあるケースとしては、記録が無くて、それっぽい言葉でまとめてもらうこと。私も過去、メイン評価者を担当した時、期末に評価を振り返ると何から手をつければよいのか分からず、時間がかかりました…。あとから考えれば、メンバーの皆さんにとても申し訳ないことをしたなと反省しています。

ですので、理想としては、メイン評価者は、期末にゼロから評価を考えるのではなく、途中で積み重ねた事実と解釈を元に評価をまとめていくべきであること。さらには、1on1などを通して、段階的にお互いの認識を作っておくことが大事です。

この記録と合意プロセスがあるのとないのとでは、評価の根拠に対する納得感が異なります。また、たとえあまり良くない評価をつけざるを得ないときでも、「しっかり自分のことを見てくれるんだ」という信頼関係にもつながります。


ポイント③ 評価エラーが起こらないように、その啓蒙も大事


最後に人事が現場に伝えるべきことは、「評価エラー」の存在です。

評価を行う際、無意識のうちに偏った評価をしてしまうことがあり、その結果、正当な評価ができなくなることがあります。例えば、寛大化傾向や中心化傾向、ハロー効果といった評価エラーが典型的な例です。

たとえば、寛大化傾向とは、評価者が過度に優しい評価をしてしまうこと、中心傾向は極端な評価を避け、無難な評価をしてしまうことです。

私も初めてメイン評価者を担当したとき、メンバーから恨まれたくないと思い、少し甘く評価してしまうことがありました。結果、当時の上司に「メンバーのことを本気で考えている?」とフィードバックを受け、嫌われる覚悟でしっかりと評価を行うように心がけています。

評価エラーが起こると、その評価結果が正当であると感じられなくなり、被評価者のモチベーションにも影響を与える可能性があります。上振れ評価も、下振れ評価も同じで、ここは自分にバイアスがかかっていないかを常に問いながら取り組むことが大切だと感じています。

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