書籍【これからの未来を生きる君たちへ】読了
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◎タイトル:これからの未来を生きる君たちへ
◎著者:茂木健一郎
◎出版社:PHP研究所
所詮AIは計算機の延長線であり、対極的に人間は計算外のことを行う。こう考えればAIと人間は別モノだ。
AIに仕事を奪われることは今後も発生すると思うが、それは計算できる仕事ではないだろうか?
はなから人間は、走る速さにおいて、自動車と戦おうとは思わないはずだ。
これと同じで、計算は敵わないのだから、そこで戦う必要はないと割り切ることが大切な気がする。
突拍子もなく、まさに「計算外」なことを目指すというのも、実際は難しいかもしれない。
真面目な人ほど、計算で出てくるはずの正解を見つけようとしてしまうことだろう。
しかし正解であれば、AIが一瞬で辿り着けるのだから、そこはAIに任せた方が良いはずなのだ。
この頭の切り替えが出来るかどうかが、今後生きていく上でも結構大事なのだと思う。
本書では、随所でこれからの若者(だけではないと思うが)を激励する言葉が出てくる。
本書内で出てきた好きなフレーズの一つが「踊れ!」(Tanzen!)だ。
これはニーチェの言葉だそうだ。
「意味を問うな、踊れ。誰も見ていないと思って、人生の浜辺で踊れ!」
ということだが、これは若者だけでなく、私のような50代だからこそ意識する必要性を感じるのだ。
歳を重ねるからアレコレ考えてしまう。
それが年齢を重ね、経験を重ねたからこその行動であるが、本当にそれでいいのか?
過去の成功というバイアスに縛られて物事を見ていないだろうか?
過去の失敗という経験だけで、今の失敗を恐れていないだろうか?
ここは本当に難しい。
それでは全く何も考えずに行動して、何度も同じ失敗を繰り返していたとしたら、ただのイタイ人である。
結局、イタイ人にならないで「Tanzen!」の状態になるにはどうすればよいか。
ここでは「フロー状態を作れ」と説いている。
これはもの凄く共感できる。
ただ闇雲に踊るのではなく、フローの状態になること。
結局、脇目も振らずにある物事に対してフロー状態で没頭していたら、とんでもない成果に辿り着ける、ということなのだ。
逆に言えば、圧倒的な結果を出すためには、フロー状態が欠かせないとも言えるだろう。
思考することは必要であるが、論理的に色々考えて積み上げたものは、案外脆い。
論理的に導ける正解は、人間の数百倍数万倍の早さでAIが答えを見つけてしまう。
逆に何だか説明がつかない、フロー状態で火事場の馬鹿力を使って結果を出すことが重要なのだろう。
頭では分かっているが、なかなか実行するのは難しいだろう。
しかしここは諦めずに挑戦する必要がある。
未来で生き残りたければ、Tanzen!を実行するしかない。
本書内では、脳の働きについても、簡単に触れている。
専門的な難しい話ではなく、要は「年齢を重ねても脳は成長している」ということ。
ここで重要なのは、ただ漫然と暮らしていて、脳が成長する訳はないということだ。
頭で考えて、身体を使って試してみて、それで試行錯誤して。
この繰り返しをしていれば、年齢を重ねても、「側頭連合野」が活性化していくのだそうだ。
合わせて「人の意欲」=モチベーションは、「前頭葉」が重要なのだということ。
これは様々な観察を通じて見出したのだと思うが、やはりスタートラインは人のヤル気ということか。
気持ちがなければ成長はあり得ない。
情熱があって、意欲的であれば、前頭葉が刺激される。
意欲的であれば、当然身体を動かして行動する訳だから、側頭連合野も活性化される。
この組合せが、創造性を育むのだそうだ。
前述のフロー体験とも重なるが、我を忘れて没頭できる状態ということは、前頭葉も側頭連合野も活性している状態ということになる。
つまり、年齢による老化は、脳への影響はほとんど関係ないということなのだ。
むしろ気持ちの方が大事。
いかにフロー状態を作れるか。
そのためには、やりたくない仕事を嫌々やることではない。
自分が本当に好きなものに没頭すること。
仕事以外でも何でもいい。
そういうものを見つけることが、人生をよりよく生きるコツなのだろう。
氏曰く、「意欲のある爺は最強」ということらしい。
死ぬことに対して不安を抱えて生きるよりも、「いつ死ぬか分からない」という気持ちで、フロー状態で行動していれば、その人生は光輝くのだという。
本書では、故岡本太郎氏の秀逸な乾杯の挨拶も書かれていた。
岡本氏は、あるパーティーの乾杯の時に、皆の前に出て、
「この酒を呑んだら死ぬと思って飲めっ!乾杯っ!」と挨拶したらしい。
なかなか出てこない言葉のフレーズだ。
これこそAIが計算で導き出せるとは到底思えない。
フロー状態は、持続させる必要はない。
要所要所で瞬間的に爆発させればいい。
まさに岡本太郎氏は爆発を地で行っていたということなのだ。
本書内のエピソードの中で、以下のものもすごく気に入ったので記しておく。
演劇では、どんな人にも役があるという。
役を演じるのではなく、その人に合わせた役をやってもらうという意味。
アテ書きは、作家が出演者に合わせて台本を作成することであるが、ここでのエピソードは作家の作業の話ではないのがポイントだ。
ある日本人の子が、アメリカの小学校に転校したという。
すぐにクラスの演劇発表があり、そこで重要な役を任された。
まだ英語が喋れないにも関わらず、なぜ?と両親は思ったそうだが、物語冒頭で「この子はクラスで唯一日本語の歌を歌えます」と紹介され、ソロで歌い出したという。
つまり役がない訳じゃない。
出来ることをその場で作り上げることが大事なのだという。
この発想は非常に大切なのではないだろうか。
未来はAIに仕事を奪われるかもしれない。
だからといって、我々が何もできない訳ではない。
それこそ仲間同士で議論して、それぞれの強みを掛け合わせれば、解決策は見つけられるのではないだろうか。
寧ろ、解決策を見つけるまで徹底的に議論すればいい。
自分がフロー状態になれるTanzen!を徹底的に探求してみればいい。
そうすれば、これからの未来も生き抜いていけるはずだ。
いつか「この酒を呑んだら死ぬと思って飲めっ!」と乾杯の挨拶をしてやろうと思った。
(2023/11/29水)
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