書籍【なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか】読了
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◎タイトル:なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学
◎著者:古屋星斗
◎出版社:日本経済新聞出版
年配の人からすれば、若者とは常に「よく分からない存在」なのだと思う。これはいつの時代も変わらない。
私自身は現在50代であるが、30年以上前に会社に入った時は、不思議な存在と思われていた。
こちらはこちらで、年配の方々を理解できなかったし、その当時は理解しようともしていなかったと思う。
全く別物であるし「俺はオレ」と勝手に思い込んでいた。
この感覚は今の若者も実は変わってないのではないだろうか。
そもそも理解し合えないし、理解しようともしない。
これでも若者はいつか大人になるのである。
私自身が立派な大人になっているのかは甚だ疑問ではあるが、20代の若者だった時よりは少しは成長できたのではないかと思うのだ。
正直言えば、私自身だってこの程度なのだ。
若者を育てようと思うことこそが、おこがましいと言えるのではないかと思う。
我々のような50代が、今の若者を否定することは、それこそ無意味だ。
若者こそイノベーションを起こす存在であることは間違いない。
そこを否定していたら、企業は衰退してしまう。
これだけ変化の激しい時代に、年配者ばかりで古い考えの人しかいない企業は絶対に生き残れないということだ。
どうやって若者をうまく活用していくかが、企業の生き残り戦略にとって、非常に大事なのだと思う。
そもそも、私が若い頃だって「お前を育てよう」と考えて、企業は育てていたのだろうか。
私自身を思い返してみても、育成という仕組みが出来上がっていたのかは甚だ疑問である。
もし当時の育成方針通りに私が成長していたならば、もっと何者かになっていそうなものであるが、所詮この程度である。
私が成長できなかったのは私自身の問題として、同年代でも会社の育成方針通りに育った人なんて見回してもみても誰1人としていない。
育成方針通りに育ってないから、会社が停滞して、日本全体も停滞したのか?
とてもそうは思えない。
結局企業が成長していくためには、年配者が考える育成方針では駄目なのではないだろうか。
人事に身を置く者としては、自己否定に他ならないのだが、どうもそう思えてしまう。
そもそも「育成」という考え方が、間違っているのではないか。
もし社会がほとんど変化しない時代ならば、何代も続く職人家系のように、技を習得することで自身が成長していけたのかもしれない。
この方式であれば、数多の技を習得することが成長に繋がる訳なので、育成の方針は分かりやすい。
しかし、産業革命以降は一世代の間に社会の仕組みが大きく変化するようになってしまった。
特にこれからの時代は、益々変化の激しさが加速していく。
そんな中で、我々は激しい変化に対応すべく、自己成長を余儀なくされているのである。
古い人間が若者を、昔の価値観で育成しようとしても、この時点で相当に無理がある。
社会が大きく変化していくのであるから、若手に限らず、我々自身が成長していく必要があるということなのだ。
昔は年配になれば企業人として完成して、それ以上の成長を臨む必要がなかったのかもしれない。
しかし、それこそが今の時代に大きく変化したポイントだと思う。
若者だけではなく、中年層も50代だって60代だって、成長し続けることが必須なのだ。
「完成」というものは、もはやあり得ない。
年配者こそ、気持ちをどうやって入れ替えていくかが非常に重要なのだと感じる。
若者はそういう年配者の働きを見ていると思う。
私自身が会社に入った頃には「絶対にこんな先輩みたいにはなりたくない」と思ったことがある。
今50代になって、私自身は今でも意識しているが、周囲を見回してみるとどうなのか。
正直言って、会社の戦力になっていない人も多いと思う。
(もちろん私が戦力となっているかは別で考えるとして)
この変化についていけない人がいることも理解できる。
30年以上働いて、正直疲れが出ていることも気持ちはわかる。
しかし、やっぱり若者はそういう年配者の仕事のやり方を見ていると思う。
今は面と向かって否定することはないかもしれないが、心の奥底ではどう思っているのか。
ここにいたら自分が駄目になると思ってしまえば、見切りをつけてすぐに辞めてしまうのだろう。
それでは一体どうやって若者を育てるのかという話になるが、私自身が本書を読んで「育てる必要があるのか?」とすら思ってしまった。
原因は職場のユルさでも何でもなく、我々先輩社員が成長を目指してプロ意識を持って切磋琢磨していないことが原因なのではないだろうか。
先輩社員がバリバリと仕事して、自己研鑽して成長していれば、会社も健全に成長するはずである。
そんな会社に所属していれば、若者がキャリアに対して不安を持つことはないのではないだろうか。
すでに終身雇用が崩壊し、転職も当たり前の時代になっている。
これだけ少子化の時代に、若者というだけで相当な付加価値がある。
そんな若者を自社に繋ぎ留めておくなど、不可能ではないだろうか。
最近、若手社員の育成について悩んでいるマネージャーが多いと聞く。
私自身も若手社員に対するキャリア支援や教育研修などに関わっているが、なかなか上手くいかないことも多い。
それは「育成」という目的自体が不明確だからだとも感じている。
どう育てば正解なのか?
会社の理念や方針に沿った人材にすることなのだろうか。
それとも市場や顧客のニーズに応えられる人材にすることなのだろうか。
当社も含めて多くの会社ではその目的が明確ではなく、あやふやなままに育成を行っているように見えてしまう。
結局自分のことを思い返しても、最も成長を実感したのは実際の仕事を通じてであった。
結局、若者が効率よく学べるのは、仕事の現場からしか無いのではないだろうか。
自分の役割や責任を認識し、自分の能力や限界を試し、自分の成果や失敗を反省する。
その中で先輩社員のアドバイスが活きることもあるだろう。
自分自身で内省して気が付くこともあるだろう。
そのためには、先輩社員がサボっていたり、活躍していない人では駄目ということだ。
先輩自身が切磋琢磨して成長を目指しているからこそ、若者も意識が変わる訳だ。
これについても、自分自身を思い返して心当たりがある。
そういう意味で、良き仕事と良き先輩に巡り合えるかは非常に大きなことだと思う。
そういう環境を作っていくことこそが、我々人事の仕事なのだと感じる。
そして、40代50代のマネージャークラスは、率先して自分自身を変えていく必要がある。
とっくにそういう時代に突入したということだ。
年配者こそ、自分自身の成長を意識し、一生懸命働き、輝いている姿を見せることで、若手社員に影響を与えることができるのだと思う。
結局「背中を見せて育つのを待つ」みたいな感じになってしまったが、昔ながらの意味で使っているのでは決してない。
若手社員と対話し、理解し、お互いを尊重することで、信頼関係を築くこと。
若手社員に仕事の機会や挑戦を与え、フィードバックを行い、キャリアの選択肢や可能性を示すこと。
マネージャーの役割が確実に「支援型」になっていると思う。
結局はマネージャーの役割が大きく増えている訳であるが、ここは自身をアップデートしていくしかない。
生き残るためには必要なことだと感じるのだ。
(2024/2/20火)
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