【目印を見つけるノート】1727. 汚れた水が、きれいになるのを見た
ちょっと前のことなのですが、
10月10 日、久々に『社会科見学』に行ったことを投稿しますね。
伺ったのは東京都下水道局『森ヶ崎水再生センター』(大田区)です。9月に呑川(のみかわ、暗渠部と上流端を除く)を東京湾まで歩いたときに、こちらの施設を見つけたのです。思い立ったが吉日で、すぐに見学申し込みをしました。
川に沿って歩いていると、
いろいろなことを思います。
崖線などの地理地形、古くは縄文から近世・近代・現代にいたる歴史、川にまつわる小説など文化の背景、川の利用や信仰など流域の人々の暮らし、自分のノスタルジーなどなど。もちろん目の前に広がる、心癒される風景はいちばん好きです。
その中で、見えない部分がとても多いことに気がつきます。
もっともダイレクトな、暗渠(あんきょ)は見えません。地上が緑道になっているところも多いので想像することはできますが、現在の中の様子は分かりません。きのうも書きましたね。
暗渠ツアーなどもあるようです。
そしてもうひとつ、川と密接な関わりがあるはずの水道は蛇口と排水溝の入口しか見えません。水の道はマンホールと、時々見かける水道管工事ぐらいでしか伺いしれません。
生活と切っても切り離せないものをもう少し知りたいと思いました。
◼️水再生センター
現在、東京23区には13の水再生センターがあります。区部を10のエリアに分けて、それぞれの地域の下水を水再生センターで浄化しています。今回伺った森ヶ崎水再生センターは東西二つの施設があり、世田谷区の大部分と目黒・品川・大田区の全域、渋谷区・杉並区の一部の下水、加えて野川エリアの下水の受け入れをしています。
処理能力は1日あたり1,540,000立方メートル。ちょっと見当がつかない数字ですが、25mプールで約4,000個ぶんが1日あたりの処理量だそうです。それもなかなか想像が😅
◼️多摩川や隅田川にも再生した水が流れる
見学の前に座学がありました。
センターの方が始めに、川に興味があるといった私に問題をひとつ。
「多摩川に流れている水には下水を浄化処理した水(処理水)も含まれますが、どれぐらいの割合だと思いますか」
うーん🤔
「10%ぐらいですか?」
「いいえ、50%です」
びっくりしました。
川の水は湧水と雨水(とどのつまりは雨水)で、ところによって下水が流れ込んでいるぐらいの認識しかなかったのです。とんでもないですね、すいません。
「隅田川や荒川になるとおよそ60%程度になりますね」
はっ、そういえば👀‼️去年浅草橋近辺で見たかもしれない。えーと、これだ。見ていたのに気づかなかったんだ。
座学が終わると実際の施設見学になります。
私は水再生センターの西にいて、そちらの方を見学します。座学の話をおさらいしながら、広い広い施設を進みます。
下水道は家庭や事業所などから流され、下水管に行きます。下り傾斜をつけて流していますが、どこまでも下り一辺倒ではありません。水浄化センターに送るまでには揚水する必要があります。そのためポンプ所が設けられており、水を汲み上げるのです。ポンプ所には沈砂池が併設されていてゴミなどをここで沈めて除きます。
◼️水を再生する
水はまた下って、水再生センターにたどりつきます。水が始めに出くわすのは大きな沈砂池。ここで大きなゴミが取り除かれます。
巨大池を想像していましたが、実際に見てみると、ガラス越しとはいえ見事に水気を感じません。完全に蓋がしてあります。機械が並ぶ工場みたい。これは、臭いがあるからです。
「あなたのうちの台所からだと、3時間ぐらいあれば来るかもしれません」と施設のかた。そうか、歩くよりちょっと早いぐらいかしらと思いつつ歩きます。
そこからポンプで揚水するのはポンプ所と同じ理屈ですが、こちらのポンプは規模が大きいものです。
水はそこから第一沈殿池に進みます。流れはゆっくりになり、さらに汚れを沈殿させていきます。ここはだだ広いです。水は変わらず蓋がしてありますけれど、一帯がグラウンドぐらい広い……と思ったら、グラウンドと公園になっています。上部空間になるのですが、本当に広くて撮りきれません。
水再生の「本丸」が次に待っています。
「反応槽」です。
水は何で浄化していると思いますか?
微生物に分解させるのです。ただ、微生物を入れて放っておくわけではありません。汚れを分解する微生物は空気がないといけませんので、今度はポンプで空気を絶えず送るのです。
実はポンプって、すごく活躍してるんだ🤔
すごいぞポンプ👍️
ここで微生物は汚れを分解するだけでなく、自分のからだに汚れをくっつけてくれるのですね。大半の汚れはここできれいになります。第一沈殿池と反応槽を通ると水は第二沈殿池にたどり着きます。
ここは外。
「生まれ変わってお天道様の光に当たるってえのはいい気分さなあ」と水が言っているかはわかりませんが、ここでは反応層でできた泥を沈殿させます。泥、といいましたが内容はよく仕事をしてくれた微生物の塊です。また空気をあげれば働いてくれます。ですのでこの池に沈殿した泥は戻して、余剰になった分と反応槽で生じた汚れを合わせて処理施設に行きます。
水はもう、臭いもほとんど感じないぐらいきれいです。
それでも、念には念をということで最後に塩素接触層でさらにきれいになって、海に放出されます。このセンターに来た水の出口です。他のセンターならば川だったりもするでしょう。
そして、海に還った水は生き物を育み、太陽に照らされて蒸発し、雲になって、雨になって、また私たちと出会うのです。うふふ😊
おっと、まだ書かなければいけないことが。
◼️工夫が随所に
こちらの水再生センターでは、海に処理した水を流すときの落差を利用して、水力発電機を5基設置し小電力発電を行っています。年間80万kw(一般家庭の約220世帯分)の発電が可能だそうです。それだけでなく、東施設には蓋面の上部に太陽光パネルを設置しています。こちらは年間約115万kw(一般家庭の約320世帯分)の発電が可能だそうです。
また、浄化する過程で泥(汚泥)が出ると書きましたが、そちらもガスを発生させて発電に利用したり、焼却灰をコンクリートの材料にして活用しています。以前はレンガにも加工していたそうです。技術を使ってできる限り無駄が出ないようにしているのですね。
いたる所に環境に配慮した工夫がされていることに本当に驚きました。それぞれ、水道の仕組みもそうですし、インフラの維持も、電力も、微生物も、科学技術もひっくるめて、いろいろな知恵の集合体ですし、1日24時間365日運用し続けるのですから、もう頭が下がるばかりです。
そして、
私が興味を持って調べている川と同様、これも武蔵野の風景だと思いました。伺った森ヶ崎水再生センターの担当地域もドンピシャでしたが、多摩川や野川と同様、上下水の道も川の現在形なのだろうと感じました。
東京都下水道局のご担当者さま、この度はお時間をいただき貴重な経験をさせていただきました。
心よりお礼申し上げます。
これで今年の『夕暮れ野川は武蔵野の果て?』シリーズは千秋楽です。
来年もてくてく探訪したいと思います。
それでは、お読みくださってありがとうございます。
尾方佐羽
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