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【小説】嘘と無垢 (一木 けい)
「逃げなきゃ。この女のそばにいるのは危険すぎる」
新人作家、汐田聖が目にした不倫妻の独白ブログ。
ありきたりな内容だったが、そこに登場する「不倫相手の母親」に感情をかき乱される。
美しく、それでいて親しみやすさもある完璧な女性。
彼女こそ、聖が長年存在を無視され、苦しめられてきた実の母親だった。
ある時は遠い異国で、ある時は港の街で。
名前も姿さえも偽りながら、無邪気に他人を次々と不幸に陥れる。
果たして彼女の目的は、そして、聖は理解不能の母にどう向き合うのか...というお話し。
サイコパス女の残酷物語かと思っていたら悪の権化に人生翻弄された被害者の会だった。
そんな被害者の会的連作短編集。
時系列がバラバラで全ての話を読み終わると関係性が見えてくる...のだが、正直分かりにくい。
名前が変わっていたり、偽名を名乗っていたり、姿形が変わったり、ほんのりとした緩い繋がりだったりと私的にはイメージし難い印象を受けた。
それでいて全てを読み終わると真相が明らかに...はならない。
ミステリー的な謎解き要素やギミックは皆無。
あくまで読者は探究者というより観察者としての視点でみる作品なんだなと得心がいった。
呼吸をする様に嘘をつく女。
英梨子という女がいる歪な日常。
日常という定義とはいかに?
英梨子という毒牙に侵食される地獄。
特徴的なのは英梨子の生涯や背景が、ほぼ言及がなく描かれていない事だ。
それはきっと、同情的な生い立ちを描き見せる事で赦されてしまうからなんだと思う。
あくまで英梨子は赦されない存在でなければならないのだろうなとふと思った。
嘘は雪玉のようなもので、長いあいだ転がせば転がすほど大きくなる。
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