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日々を編む

地元から今住んでいる街までは移動で半日くらいかかってしまう
新幹線に乗り東京へ出てそこから飛行機に乗る
目まぐるしく景色が変わり、気温も変わる
実家から出た時は肌寒く新幹線を待つ駅で半袖なのは私だけだった
東北はもうすっかり秋めいて今日は朝から雨が降っていたため肌寒く、駅に行く前に立ち寄ったStarbucksで飲み物をホットにするかアイスにするか迷った
少しムシムシするなあと思ってアイスコーヒーにした

わざわざ帰ってきた地元を1週間程度で去るのは名残惜しく、帰りたくないと喚き散らしてしまいたい衝動にかられながらも
なんでもないふうを装って新幹線に乗った
そうでもしないと泣いてしまいそうだったから

稲刈り前の稲穂が実った田んぼの景色を何度も通り過ぎて、ビルがひしめき合う東京につく
1週間ぶりの東京
ホームに降り立つと信じられないくらいの暑さと湿度に気圧された
いそいそと人がすれ違う駅の構内で暑さもあいまってクラクラしてしまう
こんなにたくさん人がいるのにみんな何処を目指して何を考えているのか全然分からなくて不思議だ
虚ろな目でスマホを眺めている人達
この人達は本当に私と同じ意識があって魂のある人間なのか、分からなくなる

観光客のように外の景色や電車の中の広告をキョロキョロと眺めながら空港へ向かう
何も考えず、スマホも眺めず、ただぼーっとそれらを眺めている時間が私は結構好きだったりする

空港に近づくにつれて大きなキャリーバッグを引いた人が多くなって、今から空を飛んでどこかへ向かう人達がたくさんいるんだなあと思って心強くなる、私は飛行機がちょっと怖い

人生2度目の羽田空港からのチェックイン
前回よりも人が沢山いて少し焦る
自分の記憶の中の景色と照らし合わせながらなんとか保安検査場を通り抜けあとは飛行機に乗るだけ
お土産を抱えた人達がひしめき合う空港内
みんな誰かを思ってそのお土産を選んでいるんだなあと思うと私の心まであたたかくなる
遠く離れた場所でそこにいない人を思いながら選ぶ、何が好きかなあと考える
愛おしい時間、尊い時間だなあと思う

飛行機に乗るのは毎回緊張してしまうけど
案内してくれるCAさんたちが笑顔だから
その笑顔にほっとして安心する
誰かの笑顔がこんなにも身に染みて安心出来るのは初めてだ

雲の輪郭が曖昧でふわふわと猫の毛のように靡いているようにみえた
夢のような時間ももう終わってしまう
私の居場所はどこにあるんだろうかと
揺蕩う雲を眺めながら考える
ずっと雲の上で過ごせたらいいのに
そしたらいつまでもこの綺麗な景色をみていられる
地上には思い出が多すぎるから、叶うなら凪いだ空の上で漂っていたい

私の長い旅も、今日という一日も、もう終わる
見慣れた空港に降り立つと蒸し暑くて、地元から遠く離れてしまったことを改めて実感して涙が出そうになった
自分が選んだ場所なのに今はものすごく後悔している
いつかの私が選びとった今なのだから後悔する感情にも向き合おうと思う
飛行機から降りたのにまだ乗っている時のような浮遊感が抜けなくてふわふわする
帰ってきた現実を受け止めたくないのかもしれない
明日の朝起きたらまた厭世的な私になっていて現実に打ちひしがれるのだろう
日々を編んでいく、淡々と、その糸を選んだのは私なのだ

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