アルツハイマー病の「3つの脅威」1.脳の炎症を予防する
炎症は、異物や死んでしまった自分の細胞を排除して生体の恒常性を維持しようという反応と考えられます。
例えば細菌やウイルスなどの病原体が体の中に侵入しようとした時に、さまざまな細胞などの生体内成分がその排除に働いた結果が炎症性反応です。
侵入する病原体へ体が反応する方法の一部に、アミロイドβの産生があります。
アミロイドβは、アルツハイマー病を特徴づける脳の班(プラーク)をまさに形成する物質なのです。
アミロイドβは、病原体と戦う強い力をもっていますが、最終的に過剰になり、アミロイドβ自身が保護するために集められた、シナプスと脳細胞を殺していきます。
だからこそ、認知機能の低下を防ぐには、慢性炎症を減らさなくてはならないのです。
実は、炎症は、病原体の侵入がなくても起こります。
ある種の食べ物を摂っても起こるのです!!
では、どんな食べ物が炎症を起こすのかみてみましょう。
●トランス脂肪酸
健康に悪影響を及ぼす「悪玉ブースター」として知られるトランス脂肪酸。
細胞がダメージを受けると、過剰な炎症を引き起こし、動脈硬化や認知症、アレルギー、アトピーなどの疾患を悪化させる可能性があります。
マーガリンやファットスプレッド、ショートニング、加工されたパンやお菓子、インスタントラーメンなどに潜んでいます。
●グルテン
グルテンは接着剤のように機能するタンパク質ですが、私たちの体はこれを処理するのが難しい場合があります。
摂取すると免疫反応が引き起こされ、炎症を起こすことがあります。
特に、胃腸がダメージを受け、腸漏れ症候群(リーキーガット)が起こる可能性があります。
小麦、ライ麦、大麦、グラハム粉、スペルト小麦、ビール、ケチャップ、練り製品、パン粉、天ぷらなどに含まれていることが多いため、これらの食品を制限しましょう。
●糖質
もともと1万年前の人類が摂っていた糖質は、1年間でわずか小さじ22杯(小さじ1杯は約3g)だったそうです。
それがなんと、今では1年間で約63キロ、小さじ約21万杯にも上ります(1日約172g)。
現代人は常に糖質があり余った状態にあるともいえるのです。
それらの糖質がタンパク質とくっついて熱が加えられると、AGE(終末糖化産物)という破壊的な物質に変化してしまうことが知られています。
これが、「糖化」と呼ばれる現象で、あらゆる病気の原因となる「慢性炎症」を引き起こします。
人類は進化とともに糖質の摂取量も驚くほど増えています。
しかし、その進化の過程で処理できるようになった糖質の量はあまり進化していないのです。ほんのわずか、1日15gしか処理できないのです。
だから、体は無理やり糖質を処理するという非常に強いストレス下に常にあります。
体を保つために、常に血中と組織内の糖濃度を下げようとしています。
その一つが、余分な糖分を脂肪として蓄えることなのです。
しかし、それが脳にダメージを与える要因となるアディポカインを産生するのです。
アディポカインは、脂肪組織から分泌されるホルモンであり、エネルギー代謝や炎症反応などに関与しています。
一部の研究では、アディポカインの血中濃度がアルツハイマー病と関連していると報告されています。
特に、アディポネクチンというアディポカインは、認知機能に関連した神経保護作用を持っているとされています。
アディポネクチンが脳内のシナプス機能や神経細胞の健全性をサポートする可能性があると考えられています。
アミロイドβの蓄積は、数年から数十年にわたって進行すると先にお伝えしています。
少しでも蓄積を減らすために、トランス脂肪酸、グルテン、糖質の過剰摂取は避けるべきです。
炎症を起こしやすい食事をしているグループの食事を調べたところ、穀類・菓子類・肉類などを多く摂り、魚介類・種実類・野菜・果物・豆類・調味香辛料などの摂取が少ないことがすでにわかっています。
また、海外では野菜・果物・種実類・魚介類を多く食べる人は慢性炎症を抑えやすいことが報告されています。
ローマは1日にして成らずと言われるように、健康な生活を築くことも、一朝一夕では実現しません。
アルツハイマー病の予防も一緒です。日々の工夫と継続的な取り組みが不可欠です。
まずは、食事の見直しからはじめてみましょう。
3つの脅威の「栄養不足」と「毒素」については、また次回で詳しくみていきたいと思います。