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【読書】アッコちゃんは女子を優しく温かく包む

自己啓発書やビジネス書がけっこう好きで、思い立ってはパラパラとページをめくっているのだが、たまにその刺激が強すぎてドン底までへこむ。
「体調が悪い時にインフルエンザの注射を受けたらインフルエンザになった」というイメージだろうか。
時として薬は体に毒となる。

『3時のアッコちゃん』が文庫化していたのでいそいそと買い求め、帰りの電車内と風呂場と(風呂読書推奨派である)寝る直前とでイッキ読みした。

寝ること食べることしゃべること……。真剣に働いている人ほど、この三つを大切にするというのに……。(『3時のアッコちゃん』P89)

この言葉がアッコさんの行動理念の全て。
自己を啓発したり、ビジネススキルをアップさせるより大切なこと……だと思う。

***

「砂東さんはデスクでよくカップラーメンを食べています」

と、結婚式のスピーチで上司が言った。
会場失笑である。

カップ麺じゃないもん、コンビニで売ってるあっためるタイプの野菜が比較的たくさん入ってるラーメンだもん……!! と叫ぼうかと思った。ウェディングドレス姿で。

職場の近くに手頃な値段の店がない。社食はお偉方たちに遭遇する率が高くて嫌だ。お弁当? 夕飯ですら四苦八苦作っているというのに?

従って、ランチは十中八九コンビニ飯を食らっている。一週間に一回くらいはいいもんを食べてみるが、寒かったり暑かったりすると外へ出る気にならない。

アッコさんに叱られる、と思う。
アッコさんにとってランチはアクティビティだからだ。

以下、『ランチのアッコちゃん』で披露される、アッコさんのランチスケジュールである(ネタバレ注意)。

月曜日は昼だけ開いているカレー屋でカレーを食べ、火曜はジョギングがてら屋台のスムージーとラップサンドを食べる。水曜は古本屋で好きな児童書を物色してから天丼を食べ、木曜は屋上で社長と意見を交わし合いながら寿司を食べる。金曜は月曜と同じカレー屋で店番をする。

なんて充実した五時間!!(昼休み一時間×5日)

ネットサーフィンしながらカップ麺食べててホントすいません、と心でペコペコしてみる。

ただ、ランチのアッコちゃんを読んだときには、「アッコさんすげえなぁ、ここまでランチに力をそそぐなんて」くらいにしか思わなかったのだ。作者泣かせすぎる感想である。

そこへきて『3時のアッコちゃん』だ。

会社の命令で、無駄に時間のかかる通勤経路を使わされている女性に、アッコさんは言う。

一週間やそこらで人生は変わらない。朝食をちゃんととったからってそんなもの自己満足で、誰かかに評価されるわけでもない。(中略)一番大切なのは本人の元気になろうとする意志だもの(P105)
明日からは、上手い乗り換え方法を見つけて、五分でも多くあなただけの時間を作るのよ。それを楽しんで。(P107)

アッコさんは、食べ物や、食べる時間を通じて、生きる力を得ている。その知恵を、自分の回りにいる辛そうな人に分け与えている。

ランチ。
夜食。
会議のときに出すお茶。
通勤中に食べる朝食。

どれも適当にしようと思えば、限りなく適当になってしまうものだからこそ、自分を可愛がる意味でも、手間をかけることが大切なのだろう。

***

帯に「働く女子のビタミン小説」と書いてあったが、この小説はどちらかというと、炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素に近い。
自己啓発書やビジネス書が、ドーピングや気付け薬だとしたら、読めば確実に体の土台となる食物のような本か。

代謝の落ちたアラサーにとって、もっとも吸収しやすいと思うのだが、どうだろう。

(写真は、3時のアッコちゃんに登場するサンドイッチが食べたくて作ったが圧倒的コレジャナイ感のするサンドイッチ。厚切りパンを使用し失敗)

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砂東真実
サポートをご検討いただきありがとうございます! 主に息子のミルク代になります……笑。