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日曜日の朝に温めてくれた。あなたが好き。
毎週、日曜日の朝に訪ねてくれる人がいた。小学生の私はその人と、その人が持ってくるものが楽しみだった。
その人は、父の兄夫婦。私にとっての伯父、伯母だ。
二人は、私と同居する祖母の顔を見に、毎週来るのだった。伯父は必ず、ほかほか温かい袋に入ったものを持ってくる。それは、作り立てのゆし豆腐。ビニル袋を通じて伝わる温かさは数秒と持っていられないくらい位の時もあった。それほどに、出来て間もないゆし豆腐だったんだと今になっても思う。
ゆし豆腐が、沖縄独特の食べものであるということを、小学生の頃に知った。そして、沖縄の豆腐は「島豆腐」と言って、これも県外とは違う作り方・味・食感を持っているということもその頃に知った。豆腐は全国共通の食べ物なので、てっきり一緒なんだと思っていた。
調べてみると、木綿豆腐よりも、大豆の味が強く、ほのかな塩味がするのが特徴だそうだ。
豆腐の元である大豆を加熱せずに豆乳を絞り出すので、大豆のうま味や栄養価が残りやすい。そして海水由来のにがりを加えることで、舌に優しく感じられる塩味がある。今でも沖縄県内で愛されている食べものだ。
琉球料理にも欠かせない食材の一つでもある。
ゆし豆腐を買ってきた後、母親と話していたのが「今日は醤油味にする?味噌味にする?」ということ。
買ってきたゆし豆腐は、中身をこぼさないように袋を開け、小鍋に出す。
そして火にかけ、好みの味付けにする。我が家は、その時の気分で、醤油味が味噌味にしていた。
でも、私は断然、醤油味の方が好き。
ゆし豆腐の元々の旨味を邪魔しないように感じるからだ。
母は味噌味の方が好きだそうだ。
話は戻るが、日曜日の朝に、そうして伯父・伯母が買ってきたゆし豆腐を、おばあちゃんの台所で温め、器に入れて、4人で一緒に食べるひとときが好きだった。大きめのスプーンで汁ごとすくって口に入れると、豆腐の味がじゅわーと口の中に広がる。そして喉、胃袋がポカポカする。
食べながらそばにいる大人たちの会話を聞いていた。
おばあちゃん達は、会話の4分の3くらいは独特な方言で話す。だから、話の内容がわからないことが多くあった。それでも、大人3人のなかに仲間に入れてもらえるような気がして嬉しかった。
ゆし豆腐がくれるぬちぐすい
大豆の栄養と、海水由来のにがりとで作られるゆし豆腐。汁ごと食べるので、豆腐の栄養を余すことなく恵んでくれる。たんぱく質と海水由来のマグネシウム、カルシウムなどミネラルも含まれていて栄養満点。
たんぱく質はご存知の通り、私たちの体、血、内臓を作る欠かせない栄養素。マグネシウムは体の中のエネルギーを生み出すサイクルに必要な栄養素だ。
私は日曜日の朝に、ゆし豆腐を食べたくなることがある。伯父と伯母がくれた愛情たっぷりの温かいあの袋の感触が恋しい。あの温かさは愛情だったんだな、と大人になってから気づく。
日曜日の温かいゆし豆腐。私はあなたが好きです。
ゆし豆腐は加熱殺菌されていないので、近隣にしか出荷されない。県外に住んでいると手に入りにくいので、沖縄を訪れたときはぜひ味わって欲しい。
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