【小説】ひとつではない世界で(後)
「みんな捨てて、逃げっちまえばいいんだよ。そこから」
「逃げる?」
「そう、逃げるんだ。自分を守るために。大体、アンタ、今勤めている美容室って、どうやって入ったんだい?」
「専門学校の募集案内を見てよ。」
「それまでに、その店は知ってた?」
「知らないわ。」
「ほら見た事か。じゃあ、元々その店には縁がなかったんだよ。別に何でもよかったんだ。」
「何でもよくはないわ。だって、私の夢を叶えるために…」
「そんなの、どこの店でもよかったんだろう?その店じゃなくても。」
「確かに、そ