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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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2023年9月の記事一覧

不良ラップを創出した男。SCHOOLLY D①

約40年前、1枚の12インチ・シングルが街角リリースされた。シルバーに黒文字で描かれた手書きのグラフィティー(というには可愛すぎるが)。シンプルなTR -909のビートと荒いスクラッチ、「そこの彼女、街角の怪しいものには手を出さないで僕のメルセデスに乗りなさい」とラップされる不良のための楽曲だった。 ラッパーの名前は、スクーリーD(本名はジェシー・B・ウィーバー・Jr.)。西フィラデルフィア出身。 フィリーの地元紙(?)〈City Life〉によれば、彼が少年だったとき、

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「頭のなかだけで、壁をリリカルに表現しようとした」ーーJ.COLUMBUS & MASS-HOLEが語る共作アルバム『ON THE GROOVE, IN THE CITY』(後編)

雑踏でふと耳にした「独白」が、ビートを得て姿を成し、響きだけを残して消えていく……。『ON THE GROOVE, IN THE CITY』は、そんな心象風景が鮮明に浮かぶ作品です。 J.COLUMBUSは「この音楽が流れている街には行きたくない」ともいいます。 6月に東京・小岩BushBashで行われたRIVERSIDE READING CLUBのイベントにライブ出演をしたJ.COLUMBUSとMASS-HOLEに話を訊きました。 (前後編の後編。前編はこちらから)

「衝動的なものをエディットしている」ーーJ.COLUMBUS & MASS-HOLEが語る共作アルバム『ON THE GROOVE, IN THE CITY』(前編)

WDsounds主宰で、PayBackBoysのフロントマンのLil Mercyが、旧知の仲であるMASS-HOLEとラッパーJ.COLUMBUSとして共作したアルバム『ON THE GROOVE, IN THE CITY』をリリースしました。 6月に東京・小岩BushBashで行われた読書家集団・REVERSIDE READING CLUB(RRC)のイベントにライブで出演したJ.COLUMBUSとMASS-HOLEに話を訊きました。 「最近のJ.COLUMBUSは、こ

Coop MC「Home of the Killers」全曲解説

テキサスのラッパー、Coop MCにメールインタビューしました。WebメディアのFNMNLに掲載されています。 Coop MCはテキサス出身のベテランで、「GANGSTA LUV」誌にも作品が掲載されるなど日本のG好きの間では人気の高いアーティストです。ソウルフルでメロウな甘茶サウンドと適度な脱力感のあるラップが持ち味で、1995年のアルバム「Home of the Killers」などの名盤を残しています。近年はリイシューを精力的に行っているほか、先日には新たなシングル「

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宇多田ヒカル『First Love』(1999)

アルバム情報アーティスト: 宇多田ヒカル リリース日: 1999/3/10 レーベル: East World(日本) 「50年の邦楽ベスト100」における順位は17位でした。 メンバーの感想The End End  ローエンドの設計がモダンすぎる。ただ太いんじゃなく、倍音で大きいように聴かせるベースだ。いまでこそこういう音像のポップスは日本にもいくらでもあるけど、16歳がいきなりこれを持って出てきたら、これまでの全部が突然古臭くなってしまうくらいの衝撃があっただろうな。小

2023年上半期に聴いてた旧譜

上半期に聴いてた旧譜作品を整理しようと少しずつまとめていたんだけど、日常の雑事に追われて(という言い訳)全然できずにはや3ヶ月・・・・・ 少し時間ができたので雑だけどざっくり記録してリリース。コメントはあったりなかったりで統一感は一切無し! ほら、仕事でも完成度を求めていつまでもアウトプットしないより、8割くらいの出来でさっさと提出したほうが望ましいでしょ??そもそも基本的に自分用の記録なので、体裁やクオリティはそこそこでいいのです。 というわけで、上半期によく聴いてた

藤井風の圧倒的スケールに見るJ-POP未来志向

現代のJ-POP界には優れたアーティストがたくさんいます。しかし、その中でも藤井風は、圧倒的なスケールを持って存在しています。 彼の音楽については、多くの分析がなされていますが、ここでは、彼の持つスケールの大きさが、今後のJ-POPの未来にどのような可能性を広げていくのかということについて、書いてみたいと思います。 また、彼の歌声の持つ魅力や独特のタンギングから声格(せいかくー声の持つ性格)を類推し、歌手藤井風の魅力を分析したいと思います。 この記事は評論家として書き込んでい

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『Respond to Respond』” レスポンドレーベル・ディスクガイド” 

1981年に英国のロックバンド、ザ・ジャムのポール・ウエラーによって、第二のモータウンを立ち上げるべき設立されたインディペンデント・レーベル”RESPOND”レスポンド。「Keeps or Burning」を合言葉に約5年間にわたり若き才能を音楽シーンへと導いたが、結果、大きな成功を手にすることなくレーベルとしての活動は終わる。 地元グループがいきなり表舞台にあがったかのようなビジュアルその垢抜けなさ。レスポンド歌姫トレイシー・ヤングはチャーミングで魅力的であるが、スター性が

モダンなトラップとルイジアナのヒップホップ

ルイジアナのヒップホップのモダンなトラップに繋がる部分について書きました。記事で触れた曲を中心に収録したプレイリストも制作したので、あわせて是非。 モダンなトラップのルーツ候補モダンなトラップのルーツといえば、メンフィスのラップグループのThree 6 Mafiaであるというのが一般的である。手数の多い808を用いたビートには確かに共通するものがあるし、ラップ面でもLord Infamousを筆頭とした三連フロウの使用にMigos的なスタイルの原型を発見できる。2010年以

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「地球儀」に見る米津玄師の献身と自信

運命的な宮﨑駿との巡り合い宮﨑駿10年ぶりとなる新作「君たちはどう生きるか」の封切りから約1ヶ月後のインタビューで今の心情をこう表現した米津玄師。 あまりに重いプレッシャーからの開放感と同時に、”光栄の最上級”の仕事が”終わってしまった”一抹の寂しさを感じているのかもしれない。 子供の頃から大きな影響を受け、心の師匠、父と仰ぐ巨匠との邂逅は、「Lemon」の大ヒットで”自分がやってきたことはここで終わりなんだとエンドロールが流れ始めた感じ”がしていたと言う米津を”まだまだ

Foolsdayboy「Foolish Step」全曲解説とバイレファンキ導入の経緯

新潟のラッパーのFoolsdayboyがリリースしたミックステープ「Foolish Step」のプレスリリース文章を担当しました。各種配信サイトで聴ける・ダウンロードできます。 新潟を拠点に活動するラッパーのFoolsdayboyは9月8日(金)、新作ミックステープ「Foolish Step」をリリースする。 Foolsdayboyは活動を始めた2020年に1stアルバム「Awesome Fools」をリリースし、その後も2021年に発表した2枚のコラボEPや2022年の

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日本の弾き語りブルースバラエティCountry Blues Heaven Vol.6

2023.07.22. Country Blues Heaven Vol.6 横浜Thumbs Up 気がつけば、あちこちでブルース・イベントが開催される昨今だが、意外にギター1本で勝負する人たちばかり出演する企画は少ない。 そのレアな企画の代表「Country Blues Heaven」は、東京・練馬のバー「江古田倶楽部」により2009年に第1回が開かれ、以後、2011年、2014年、2016年。そして2017年の豊橋大会を含めると、今回が6回目となる。 残念ながら「江

Interview Jeanette Wong (SFJAZZ):ジャズの博物館ではなく日常に取り入れられる音楽の提供のために(7,500字)

サンフランシスコにはSFジャズという団体がいて、彼らが運営するSF ジャズ・センターは西海岸ジャズの拠点になっている。 彼らはSFジャズ・コレクティヴというグループを運営していて、その活動はアメリカのジャズシーンにおいて重要な意味を持っている。SFジャズ・コレクティヴが特別なグループであることは以下の別記事で解説しているので是非読んでほしい。。 ここではそのSFジャズ・コレクティブを運営しているSFジャズについて深堀するために、Associate Director、Art

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Charデビュー45周年企画として開催された、伝説のバンドPINK CLOUDトリビュート公演。ゲストにミッキー吉野を迎えたステージを通じて感じた、Charが音楽に込めた特別な想い

 デビュー以来約半世紀にわたり、独自の存在感を放ち続けるChar。ギタリストとして、様々な楽器を駆使するマルチプレーヤーとして、その評価は他の追随を許さない。  2016年、ギターマガジン誌による、プロギタリストを中心とした音楽関係者へのアンケート投票「ニッポンの偉大なギタリスト100」にて1位に選ばれたことはその証左でもある。  また、シンガーソングライター、作曲家・プロデューサーとしての幅広い活動。そして、二度にわたるレーベル設立など新たな音楽ビジネススキーム構築を目